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第二話。2-4

「なるほど、そう言うシステムなのか。じゃあ取り敢えず3個、もらえるかな?」


 

 私は長皿では頼まず、個数を指定した。ビールのあてと味見である。私は今一人だし、最初はそれくらいの数で十分だろう。

 長皿注文も数を頼む団体客には良いだろうし、焼き上がりの回転速度にも限界があるので、無制限に注文されまくってオーダーが消化できなくなると言うことはなさそうだ。後で長皿注文に変更は出来るのだろうか。


「ええ、出来ますよ。数をつけていくんで、値段が長皿と同じになった時点でそっからはいくら食べても変わりませんので」


 へい、3個お待ち、と三代目が小皿に入れて出してくれた。ソース、青のり、鰹節は目の前の容器に各種、備え付けられている。爪楊枝は竹製だった。

 見た目は気を衒わない、ごく普通のまるさ。昨今流行りの【表面カリッカリ、中とろ〜り】と言うヤツに、私は以前、喉と舌を焼かれてたこ焼きを敬遠しており以来、コレがほぼ数年ぶりに口にするたこ焼きであったが、楊枝を刺した時の感触は固すぎず、中もきちんと火が通っている、私にとっては程よい焼き上がりに思えた。

 先ずはどれほど効果があるか疑問だが、息を吹きかけ若干冷却し、頬張ってみる。


 ここでたまに、たこ焼きを解体して中の様子を確認する者もいるが、私はそれを邪道と思っている。それ故に前回、硬い表面に守られた、溶岩のような、ほぼたこ焼き原液にやられたわけだが……。


「……懐かしい」


 数秒程、たこ焼きの熱と格闘し咀嚼した後、思わず口をついて出たのは、そんな言葉だった。美味いでも、不味いでもない言葉が。


「ん?お兄さん、ひょっとして関西か西の方出身かい?」


「いや、そう言うわけじゃないがね。昔、子供の頃に食べたやつと似てたから、ついね」


 それは店、と言うよりは掘建て小屋に粗末な長椅子があるだけ。テーブルも無く、大人が二、三人入れば満室になるような、そんな場所だった。


「うちのたこ焼きは関西風、らしいですよ。自分はよく知らないんですけどね」


 いよいよ調理が佳境に入ったようだ。目の前の容器からタレを一掬いし投入する。立ち上がる煙と共に香ばしいタレの匂いが、私の鼻腔を刺激する。

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