第二話。2-3
どちらかと言えば、自分もキリン派でねと、料理人が言う。ちなみにタレは味噌ダレ、もやし多めがお勧め。塩ダレとかもあるけどね、ウチ自慢の味噌ダレをまず最初に食べてもらいたいんでね〜。
そう言いながら今し方まで焼いていたホルモン焼きを慣れた手つきでさらに移し、カウンター越しの店員へ。
それを確認した店員も、すぐに手に取り座敷席の客へ。はい、ホルモン焼き塩ダレおまち〜との声が聞こえて来た。
「……お任せするよ」
なかなかに気さくな料理人である。
少し、厨房を見渡してみる。正面近くの私の注文品を作り始めた彼の隣。背の高い若い男だった。彼は今、焼きそばを炒めていた。他のカウンター席に座る客の注文品だろうか、量的にはなかなかの量を捌いていた。
そしてその奥、私から1番遠い場所にいる、若干猫背の男性。背中を向けているので正確な事は言えないが、ずいぶんお年を召してらっしゃるなと。
何をしているかと言えば、どうやら現状、たこ焼きを専門的に焼いている様だった。
「あんたがここ仕切ってる大将かい?」
「……大将って柄でもねえですがまあ、自分はここの【3代目】ってとこですかいねえ。後ろのが親父で、先代様っすねえ」
どっちかって言うと、あっちが大将で……。若干前屈みになり小声で、しかしながらその親父さんにも聞こえそうな音量で3代目は言う。
その声が聞こえたのかは不明だが、その対象がこちらを振り向く。特に声をかけれるでもなく、両手に持った皿を表に出した。
長方形をした更にたこ焼きがざっと一皿あたり10個程度か。正確な数字を確認できないまま、女性店員が座敷席の一つへ運び、隣からは同じタイプの空になった皿を客の、
「おかわり」
の声と共に受け取っていた。どうやら大将はほぼ、たこ焼き専門のようだ。回収されてきた皿を手に、焼き上がったたこ焼きを再び皿に乗せ、表へ。
そして大将は再びほぼからになった鉄板にたこ焼きの液を流し込み、焼き始める。
「私もたこ焼き、もらえるかな」
ホルモン焼きの出来上がりを待つ間のつまみにと思い、声をかける。
「へい、何個にしやしょう」
ん?と一瞬、言葉に詰まった。
「ああ、うちは基本一個売りなんですよ〜税込33円」
まあ25個以上になると長皿注文のおかわり自由にした方がいいですけどねえ。と、三代目が言う。軽く火の通った数種類のモツと、余の横で蒸し焼きにされていたもやしでキャベツが合わせられていた。




