第二話。2-2
三座席中、手前二つまでは埋まっていた。どうやら、一個の団体客のようだった。背もたれの無い、丸い形のカウンター席もまばらに1/3程度に客の姿があった。そんな彼等の方から漂ってくる料理の匂いが一層、空腹な私を刺激してくる。
「いらっしゃいませ〜!お一人ですか〜?」
従業員の私物、だろうか。特に店名などは刺繍されていない、既製品によく見るチェック柄のエプロンと、頭に白頭巾をした女性が声をかけてきた。歳の頃は一瞬、老けて見えたがまあ、私と同年代、30をいくつか過ぎたくらいだろうか。
「……ん、ああ」
と、私は若干の戸惑いを覚えながら答えた。後から一人来るのだが、まあカウンター席でも充分だろう。寧ろ料理人の振るう腕前を間近で見れる分、私はカウンター側が好ましいと思っている。
私は店員さんの勧めに従い、カウンター席のほぼ中央。二人の料理人の動きを、程よい距離感で観察できる位置に腰を落ち着けた。
「……後でツレがくると思うんで」
と店員に告げ、隣席を確保する意味で、私は愛用の革鞄を置いた。
「っらっしゃい、にいさん。何しやす?」
初めて見る顔だね、そう料理人に声を掛けられた。50代前半だろうか、髪は半ばが白く、料理人らしく短く刈りそろえられていた。額にはタオルの様なものを巻いており、これまた昭和のテンプレだなと、思わず口元に笑みが浮かんだ。
「……そうだな。取り敢えずビール。あと、なんかおすすめとるかい?ビールの当てになるもの」
「おすすめ?うちは何でもオススメだよ、兄さん。あんたモツとか、いけるかい?関西じゃホルモン焼きってんだけど」
季節ものってわけじゃないが、濃い味付けのホルモンにビールっていうのがね、いいんだよ。そう料理人が今忙しなく手を動かして焼いている料理がどうやらそのホルモン焼きの様だ。
「じゃあそれをもらおうかな?」
ビールは生で?それとも瓶ビール?そう店員が確認して来たので、私は瓶ビール、ラガーある?麒麟のヤツと聞くと。
「はい、ありますよ〜。ホルモン焼き〜瓶ビール一丁〜」
伝票に書き込みながら、彼女の声が軽く店内に響く。
「にいさん、ちょっと珍しいね。大体、最初は生か、ドライってお客さん、多いんだけど」




