ED-7
「っ!ええ!?そんな、まさか?」
……どうやら、俺には姉だか妹だかがいるらしい、そう皮肉気味に呟いていた岩永の顔が浮かぶ。
薬師寺は驚きの表情を浮かべていた。自身が担当した事件、そこで接触していた関係者。それが事件の黒幕であったという、論理の飛躍にまだついて来れていないようだった。
「観察対象はその近くで見守るもの、だろう?色々な【実験】を行いながら……」
ある意味では、この騒動が大きく動き始める、最初の事件と言っていいそれが起こった時から、彼らのゲームは始まっていた。【後継者は誰か】と言う、二人っきりの兄妹、或いは姉弟の間で。
そして今……
「あとを頼む、とはこの事だったのか……岩永」
……結局のところ、我々は先行したベンツに追いつくとは、できなかった。
「これから、どうするんですか?潤一郎」
結局、俺達はそのままベイブリッチに向かい、そこで一服、何時ものようにタバコに火をつけた。
「分からん。この後一体どうなっていくのか。正直、見当もつかない……」
そうですか、と不安気味の視線を向ける薬師寺を眺める。そして、こう告げた。
「事件は元の木阿弥、振り出しに戻るのかも知れない。だが無力だった頃の俺たちじゃない。少なくとも、黒幕の目処は付いている。そして……」
俺は懐から小さな小箱を取り出し、彼女の元へと歩み寄る。
「何があろうと、お前は俺が守る」
そう言って俺は彼女の前に跪き、右手で小箱を差し出す。
「俺と、結婚してくれ……いや、結婚、してください」
そう言って俺は少し俯いた。照れ隠しでもあり、覚悟を決める為の祈りでもあった。
しばらく、気まずい沈黙が続いたのち、俺の手を取った彼女もまたしゃがみ込み、耳元ではっきりと
「はい」
とだけ言った。
エピローグ、了。
…………………………
「……まあ、しばらくは大人しく、観察するだけにとどめておきましょうか。その方がボクとしても楽しめそうだし」
「……宜しいのですか?お嬢様……いいえ、レディL。あいつらに好き勝手させておくのは些か……」
「何か不味いとでも?出来損ないの弟と、老いて朽ち果てていった老害が残していった遺物など、綺麗さっぱりなくなってしまった方が心地よいわ。……むしろ残党の摘発に協力しようかしら?」
「しかし、それでは余りにも……」
「無情すぎるとでも?」
「そうは言いませんが、せっかくマダムLが生み出し、育て上げていった組織です。このまま手をこまねいて、壊滅するに任せていては、今後の活動資金にも影響が出るかと……」




