第94話 逆さまモノクロ世界
「相部屋同士でパートナー・・・ってことは、俺とアンの二人ってことだよな?」
「それがどうかした? もしかして、私とペアを組むのが嫌なの?」
「いや、そういう訳じゃないんだけど!」
窓から侵入する月明かりを遮るように引かれたカーテンが、二人がいる部屋を暗闇に染める。それに抵抗するかのように上から白い光となって照らす蛍光灯。結果として、403号室に自然界の暗闇は取り除かれてはいる。だが一方で、チームワークを乱すような暗雲は立ち込めてはいるが。
「とりあえず、今の現状を把握しましょう」
彼女はそう言うと、テーブルの上に白い紙を広げた。それには、それぞれの名前も含まれた、今回のグループ分けの詳細が縦にズラリと書かれている。手書きで書いたのだろう。文字列がわずかに右肩上がりで傾いている。そのことを無意識の内に言及しようとした、自分の口を右手でシルは覆い隠した。
「これが、今回のグループ分けよ。私たちを除いてだけど、とりあえず名前でも目を通してみて。もし、知っている名前があったら教えて」
よく見ると、各々の学生の名前の横にわずかな余白が取られていた。最上部に目をやると、どうやらそこは能力の欄として設けられているようだ。だが、ほとんどの学生の能力は埋まっていない。文字が書き込まれている学生は4名しかおらず、その全員の学生の名前は、シルにとっても見覚えがある学生だけだ。
「この能力の欄のことなんだけど」
「あぁ、これね。私たちって一応は何かに秀でているってことで、この場所に招かれている訳じゃん。つまりそれは裏返せば、私たちの想像を超える力を有している人が、クラスにいるかもしれないってこと。そう言った人は、備考として分けてるの。作戦を立てる時も、そのほうが分かりやすでしょう?」
「確かに・・・。賢いな、アンは」
とは言っても、能力が分かっているのが4名と言うのはどこか心許ない。
「でも、能力が分かっているのが・・・この4名だけなのか?」
「それ以外に誰か分かっている人いる?」
「いや、いないけど・・・」
能力の欄に記載がある4名の学生。シル、アン、マシュ、そしてカーラ。どれも、今朝の悪魔との戦いで、能力を解放して戦った学生だ。シルは彼らの戦いを、自分の目で見て、能力の効力もすでに把握済みだと認識しており、こう言った記載は特に不要だと思っていた。だが、それはアンにとっては必要みたいだ。真剣に自分の顎を手で触りながら、作戦を練っている。
「いいわ! 一旦、他のグループからは頭を離しましょう!」
アンの透き通る声とともに、パァンという手を叩く渇いた音が部屋に響き渡った。
「シル、あなたの能力と、基本的な戦闘スタイルを教えてもらえないかな?」
グイッっと顔をシルに近づけて、アンの瞳に映るシルの姿が先ほどよりも大きくなる。甘いピンク色の吐息がシルの顔を微かに撫で、その色が頬にも移ったのだろうか。瞳に映る逆さまのモノクロの世界では、それを確認することはできない。だが、上限を忘れて上がる体温だけが、それを知らせてくれるようであった。




