第78話 再び濡れる緑色の血液
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既にアンが取れる選択肢はあまり残されていない。無駄な抵抗をして死ぬか、大人しく死ぬか、この二択。それらは、天秤の上でふらふらと、その重量を適宜に変えながら、バランスを保とうとしているように揺らめいていた。
アンは自分の左手首の一瞥の後に、この世の終わりを悟った。こんな負傷を抱えていては、この場から生きて出られる可能性は限りなく0に近い。そう考えてしまうと、気がつけば身体は情けないほど震え上がっていた。
世界を見渡す瞼すら強く閉ざしてしまい、暗闇だけが視界を覆い尽くす。そこはもはや、死者の世界と変わらない真っ暗な世界。他の人から見てみると、何て情けない姿と思われるかもしれないが、希望もない絶望的な死とは常にこういうものだ。
「それが、ヴェーダの苗字を連ねる私たちの使命なのよ!!」
誰かの叫ぶ声が、漆黒の世界に確かに、それでいて力強く反響する。こんな真っ黒な世界に、まだ脅威と立ち向かえる人がいたのか。アンは、荒れた心情の中で、微かな光が見えたのかと錯覚する。だが、そんなはずもなかった。世界は変わらず・・・闇に包まれたままだ。
カラン・・・。
開かれた視界が眩しい光によって、今一度わずかにそれを細める。光に慣れるまで、少しばかり時間を要した。その間に、世界が大きく変わることはない。漫画のように、この場を掌握できるほどの実力を持つ救世主が、現れることもなかった。
「何が——起こったの?」
光に耐性がついた視界に映し出されたのは、首を尻尾によって締められ、今にも命を落としてしまいそうな女子生徒。そして、怒りに任せた表情を浮かべる悪魔の二人。悪魔の方は言わずもがな健康そのもので、大した外傷は見られない。
だが、女子生徒はあまりにも対照的であった。徐々に呼吸が浅くなり、口元にはぶくぶくと生まれる白い気泡。僅かに漏れる声は、彼女は味わっている息苦しさを物語っている。
「はぁ。私の命は国民に捧げるって決めてたんだけどね!!!」
なんで、生きることを諦めていたアンが、このような言葉を口走ったのかは分からない。もしかしたら、死にかけの彼女の熱量に当てられたのかもしれない。だが、家庭は何にせよ、力の入らない左手にすら鞭を打ち、アンは倒れ込んでいた身体を瞬時に起き上がらせた。
左手を起点として、鋭い痛みが全身を駆け巡る。それも、そのはずだ。アンは自分の体重を掌で支えたのではなく、折れた骨を軸として負荷に耐えたのだから。だが、それも、顔を歪める程度で堪えてみせる。
「はァァァァ!!!!!!」
立ち上がると同時に、地面に転がっていた短剣を右手で拾い上げた。そして、目でどれほどの距離が、今にも締め落とされそうな女子生徒と離れているのか確認する。距離にして、数メートルと言ったところだろうか。それは、アンの脚力を持って駆け出せば、ほんの数秒で埋められる距離だ。
だが、アンはすぐに脚に走り出すよう、命令を下すことはしなかった。その代わりに、自由の聞かない左腕を肩から後方に向けて伸ばす指示を送る。そして、そのまま、体勢を維持したまま、そっと唇を動かす。放たれる言葉は、自然の理を崩す悪魔を退ける暗唱。
『世界に等しく吹く風よ。それは、万物にとって安らぎであれ。それに乗って、悪しき瘴気を運ぶことなかれ。もし、そうであるならば、我が命に従い、突風を巻き起こしたまえ!!!』
誰が為に靡く風であるか!!!
暗唱に応えて、左手から放たれる突如の突風。それは、アン程度の軽い体重であるならば、いとも容易く身体を浮遊させると共に、超速の加速を付随させる。その状態の前にかかれば、対象物との間合いは瞬時にして意味を失う。アンは、短剣の切先を尻尾に向けると、そのまま勢いのまま突進するのであった。
「とりあえず。この汚く、醜い尻尾を彼女から離してもらおうかしら!!!」
ブゥスゥゥゥゥ・・・!!!!
柔らかい肉に、包丁を突き刺したかのような感覚がアンの腕を包み込む。そして、昨日も浴びた緑色の血液が、アンの顔を再び襲いかかった。
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