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第72話 もう、どうにも止まらない

「逃がさないわよ〜!!! あなた達の死に場所はここだって、運命で決まっているんだから!!!!」

 

 言い終わると同時に、悪魔はグラウンドを蹴る足に力を込める。異常な加速速度が悪魔の背中を強く押し、目にも止まらぬ速さでバスとの距離を埋めていく。その動きの速さは長年戦闘に身を捧げたものでしか、捉えきれぬほどの速度。戦闘経験のない新入生には、到底視認できるものではなく、例に離れずアンもその動きを識別することは出来なかった。


いや、元々バスの中ではそれどころではなかった。誰もが自分の命を最優先にした行動を起こし、統制はとうに崩壊している。そんな状況で、窓の外を見る余裕があるものは一人もいない。皆は、祈りを始めたり、一向に動き出そうとしないバスの行方を案じている。アンもそんな荒れ果てる渦の中に身を置いていた。


この全ての起因は、上級生であるハンナの戦闘不能から始まる死の連鎖。それが、生み出すものは、恐怖以外にもう一つ大きくこの盤面に影響を与えるものがある。その正体は——焦り。死の恐怖から逃げようと、生への焦りが生じる。興味深いことに、時としてそれは、死への《《カウントダウン》》とも取られることがある。


 冷静を装うバスの運転手は、いつの間にかこれに身体が取り憑かれていた。いつもなら、すんなりと入るバスの鍵が鍵穴の淵に当たってしまい、上手く入らない。


「な!! 早く入ってくださいよ!!!」


 ふとした時に、慣れ親しんだ身体の癖が出てしまう。バスを動かすときに、サイドミラー、そしてルームミラーを見て周りの安全を確認する、いつもの癖が。いつもなら、変わらぬ安全に確認作業感が否めない。だが、今回だけは違っていた。


「ひっぃ!!! もう・・・そこまで!!!!!!」


震える手は、もうどうにも止まらない。ミラーには、赤い液体を振り撒きながら段々とその姿が大きくなる悪魔が映り込んでいた。ミラーでは読み取りきれない、得体のしれないオーラが、益々運転手の焦りを膨張させる。


 震える手は——もうどうにも止まらないのだ。

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