第38話 トドメの一撃!
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先程まで紫色を伴っていた視界が今では赤く染め上げられている。指を動かすだけで全身を駆け巡る激痛。頭部にも同様の痛みを感じ、顔をつい歪めてしまう。
どうやら、オークの攻撃を躱すために横に飛翔した際に、奴の拳が身体を掠め、その衝撃で遠く離れる、かつて試験室であった木材の残骸に頭を強くぶつけたようだった。
シルの落ちかけていた意識は無理やり尋常ならざる激痛が現実世界に引き戻される。自分の身体全身を視界に収めると、どうやら額の部分を切っているみたいで下を向くだけで赤い血液が滴り落ち続けた。
加えて、オークの攻撃を躱すために思いっきり踏み込んだ左足は、皮膚の内部を青色に変色させていた。吹き飛ばされる要因となった、オークの拳と掠ったのはどうやら左足のようだ。だが、それほどダメージは深くない。立ち上がり、左足に重心をかけてみても痛みは走るが、これで身体が動かせないほどのものではない。
「掠ってこれだけのダメージ・・・。絶対に直撃だけは避けないとな」
シルは剣を握る手に力を込めると、痛む足を他所に先程腱を断ち切った足とは反対の足に向かって勢いよく突進していく。アドレナリンが大量に分泌されているためか、すでに身体を巡る痛みは、走るシルの肌に纏う風とともに後方に吹き去っていた。
それを受けると、シルは水を得た魚の如く走る足に力を込め、身体を加速させていった。対してオークはというと、シルの姿を見失っているようで、あちこちに首をふって周りの状況を確認している。敵は自分の居場所を見失い、こちらは奴の居場所を把握している。まさに、千載一遇の好機。
「木偶の坊が、食らいやがれ!!!」
漆黒の一線が反対側の健を一太刀で切り離す。放出される溢れんばかりの体液に、上方から聞こえてくるけたたましい咆哮。今までオークの巨体を支えていた足に力が入らなくなり、やや前傾姿勢になりながらもオークは無様に足の機能を膝にすり替えるようにそれを地面につけた。一気に高さと機動力を大幅に失うこの一撃。これで、奴に致命傷を与える準備は全て整った。
「マシュ! いまだ、やれ!」
どこからともなく聞こえてくる足音がオークの体づてに頭部まで駆け上る。そして、最大の機会を得たりと、そこでピタリと動きを止めた。彼がいる場所は生物が外にその器官を露出させていて、それでいて一番柔らかい場所。不敵な笑みが彼の口から溢れ、両手で握る短剣にさらに力を込めた。
「ふぅー、肝を冷やしたよ。奴の攻撃は喰らうし、ここまで辿り着く時間もかなり遅かった。てっきり死んだかと思ったぞ」
「うるせぇ・・・。早く殺れよ! 次にやつが立ち上がったらもう俺では跪かせることはできないからな!」
はいはいと気の抜けた声で言うと、マシュの短剣は素早く煌めき一瞬にして貫いたのだ。奴の露出する器官で一番柔らかくかつ効果的なダメージが当てられる場所。そう、オークの禍々しい両の目を。
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