第35話 狙いの場所目掛けて
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二人同時に地面を蹴り、一歩足を前に進ませるたびにより一層オークの姿が視界の中で大きくなる。奴にまだ何かしらの動きの起因は見えない。だが、先ほどまで見せていた力を使い果たし、疲れ切っていた表情から比べると幾分か顔に英気が戻っているように見える。それを受けて、シルは身体を前に押し出す力をより一層強めた。
しかし、二人が並んで走っていたのはほんの僅かな時間だった。気がづけばシルの隣に人影は見えず、吐き出す荒い息も自分のものしか聞こえてこない。周りから見てみるとただ一人でオークとの距離を縮めるため走っている風に見えるだろう。
だが、マシュは走るのをやめたわけではない。それでいて、極めて足が遅いわけでもない。彼の姿はシルの少し前方にある。だが、彼の背中はもうすでに空気と同化したように、半透明と化していて容易に認知することはできなくなっていた。
マシュが持つ天賦の才がこれだ。とは言っても、走るのが早いという才能ではない。確かに、彼のそれは人より優れている点ではあるが、それ以上のものを彼の小柄な身体には宿っている。
それは、周りの環境と自分を同化させるのが尋常じゃなく早く、またその同化率も並みの人のそれとは比べ物にならないというものだ。平たく言えば影が薄く誰にも気付かれることがなくなる。
しかし、マシュの場合は影は薄いどころのレベルには収まらず、自分から放たれる全てのオーラすらも支配下に置き、空気と同化させることを可能とする。すなわち、瘴気発生の波に敏感である、闇の一族にも気づかれないほど空気と自分とを一体化させ、奴らが気付く前に攻撃を繰り出すことができるのだ。勿論、彼が言うには反動もあるらしいのだが。
ようやくシル達の行動に気づいたオークがこちらを目掛けて咄嗟に右手で力拳を作ると、それを勢いよく振り下ろしてくる。だが、やはりそれはあくまでシル個人に対して振り下ろされたもの。マシュがいる場所は攻撃の範囲外であり、高い位置から隕石を思わせる大きな拳で放たれる攻撃も、シルは冷静に90度方向転換することでかわして見せる。
ドゴォォォン!!!!!!!!
グラウンドに大きなクレーターを生じらせる攻撃が直撃する。拳自体は回避したものの、グラウンド全体を揺れ動かす衝撃の大きさにシルは足を奪われ、思わず地面に膝をつけてしまう。そして、たちまち衝撃波によって巻き上げられ、発生した砂嵐がシルを包んだ。
「マジかよ! 出鱈目な攻撃でもこれだけの威力とは。ほんと、人類とは大きく違いすぎるだろう、持って生まれてくるスペックの差っていうのがよ!!」
悪態をついた口内に、砂埃がたちまちいい穴を見つけたといった具合に忍び込んできて、反射的に唾を数度出すことでそれを吐き出す。その間にも、砂埃は止むことを知らず、覆い包んでくるそれに対し、咄嗟に手で目を覆い隠した。
鋭利な小石や粒状と化して襲いかかってくる砂が、目を隔てる障壁のごとく聳え立つ手に衝突し、通り過ぎる頃には軽い擦り傷を各所に作っていく。目を開けようとするも、度々覆い隠す手の隙間を掻い潜り、小石などが目の付近まで侵入してくるので思うように視界を確保できない。
だが、そんな中でもシルは前に進み続けるべく、止まっていた足に鞭を打ち、身体を起こして砂埃を切り裂いていく。見えないにしても、目的の敵の位置関係は頭に刻み込まれている。どの方向に移動すれば、狙いのあの場所にいけるのかもすでに頭の中でイメージはできていた。
猛威を振るう砂塵だが、それはオークにとっても同じであった。意図せず巻き起こったそれは、突如としてオークの視界を奪い、目まで砂埃が入ってくることはないとはいえ、シル達の居場所を隠されてしまい次の攻撃に戸惑いが生じる。
収まる気配の無い眼下の砂を巻き込む突風を眺め、オークが取った次の選択肢はこの一手だった。
それすなわち、待ちの一手。
この場から忘れられた、忘れるように行動を起こしていた人物が一番待ち望んでいた選択肢を取ってしまったのだ。その時、マシュは不意に笑みを溢したと後から話したいう。それは、相手が自分に取って最善手の行動を取ってくれた事に対してもだが、思考を同じくする、あいつが、あの場所にたどり着いたのを視界の角の方で確認できたから。
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