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どうせ嘘でしょう?  作者: 豆狸


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第一話 翼の生えた小さな兎

 魔術学園の裏庭には池があります。

 ほかの場所のように整地されず、魔術学園建設前の自然がそのまま残されたのが裏庭です。白い水仙が覗き込む水面を、私も覗き込んだときでした。

 だれかの叫び声が聞こえてきたのです。


「うわー、可愛いなあ。妖精かな? 翼の生えた小さな兎がいるぞ!」


 ……翼の生えた小さな兎? そんなもの、おとぎ話にだって出てきたことがありません。

 いるはずがありません。嘘に決まっています。でももし本当だったら? それはどんなに可愛いことでしょう。

 私はつい期待を胸に振り返ってしまいました。


「やあ、カタリーナ嬢。こんなところでお昼かな? 僕もご一緒していい?」


 そこにいたのは帝国からの留学生、第五皇子のイバン様でした。

 嘘つき皇子と有名な方です。

 他人を傷つけたり貶めたりする嘘はつきませんが、さっきのように聞いただけで嘘とわかるような他愛のない嘘をおつきになるのです。ええ、もちろん私は騙されてはいませんでしたわ!


「こんな人気(ひとけ)のないところで男女が一緒に食事を摂るのは好ましいこととは言えませんわ」

「いいじゃん。僕達、どちらも決まった相手がいないんだから」

「……そうですわね」


 数日前、私は婚約者だったこの王国の第一王子グレゴリオ殿下に婚約を破棄されました。

 私がグレゴリオ殿下の恋人である男爵令嬢マリグノ様を苛めたからだそうです。

 おふたりは私と殿下が婚約する前に避暑地で出会い、恋に落ちていたのだと言います。この魔術学園に入学したときに再会したおふたりにとって、私はずっと邪魔者でした。


「池の水面が冬の空を映してる。綺麗だね」

「はい。冬の空は夏よりも色が薄いですが、その分どこまでも高い気がします」


 そろそろ池の水が凍りつくころです。

 イバン様の声が聞こえて来なければ私は池に落ちて、その水の冷たさに心臓が止まっていたかもしれません。

 私と出会う前に、グレゴリオ殿下はマリグノ様と出会って恋に落ちていました。魔術学園に入学する前から私は邪魔者でした。でも……私は初めてお会いしたときから殿下に恋していたのです。

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