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銀の弾と赤い血液より、銀の食器と赤いトマトスープを ②

ひいろのとり様から感想をいただきました。ありがとうございました。

 レストランにつながっている棺の部屋に戻るのは簡単。なぜならこの階層の人間はほぼ私のキャリアになっており、警備をおろそかにする事ができるから。

 後は化け物にさえ気をつければいい。


 「日本人のDクラス職員さんは私の荷物を持って先に棺に入ってください。私が鍵を閉めます」

 「ね、ねこちゃんはど、どうする、んだい?」

 「私は後で行きます。早くして」

 ガチャリ

 「お譲ちゃん、あんたは……」

 「説明は後です。次はあなたですよ。早く入って」

 ガチャリ


 「お、おい兄ちゃん、これは、夢か?」

 「わか、分かんねえよ」


 私が(切腹して)戻ると、彼らは案の定動揺していた。

 これから私は支配人モード。

 私のレストランに入った時点で彼らはお客様。今から動揺する感情が入るスキもないほど、彼らをもてなす。


 「ようこそ、ねこのSCPレストランへ。長旅で披露が溜まっているようですね。さあ、まずはこちらへ」

 「お、おう、わかった」

 

 私が案内したのは浴場。先程即席で作ったもの。ここは私の領域なので新しい部屋をを作るのは造作もないことだ。

 彼らにシャワーの使用方法や着替えなどの説明をした後、私は厨房へ向かった。


 「ユイレさん、食材の準備はできていますか?」

 「うん、できてるよ!」


 私がこのレストランに戻る前から、ユイレちゃんには色々準備をしてもらっていた。

 私は普段この体を使っての料理をしない。基本的には脳を使って食材の調理過程をすっ飛ばして、一瞬で料理を完成させている。

 先程もやったレストランの改変に近い。

 この体を使って料理をする時は、私が本気になった時。

 本気で料理をするのは基本的にユイレちゃんへの料理を振る舞う時のみである。が、今回は特別。


 「さあて……はじめましょうか。ユイレさんは飲み物の用意をお願いします」

 「分かった!」


 彼らは何日もマトモな食事をしていないだろう。なのでいきなり重い料理を出すのは胃を壊す原因になる。

 なので今回の料理のお題は「おふくろの味を思い出すぜ系のやさしい料理」。

 と言う訳で卵雑炊でも作ってみようと思いました。

 日本人ではない方のDクラス職員さんの好みにも合うよう頭の中を探りながら料理に取り掛かっていきます。


 Dクラス


 「兄ちゃん、この状況、どう思うよ」


 既に湯船につかったD-14134は、リラックスした声で言った。


 「分かんねえ」


 石鹸を洗い流しながら素っ気ない回答をする。

 こんな状況で何を言えばいいと言うのか。分かるわけがない。あのまま化け物や看守の目を盗んで棺の鍵を閉める毎日が続くと思っていたのに、突然あのねこが現れた。


 「しっかし……風呂に入るのはいつぶりだ。なあ、兄ちゃん。まあ俺の場合はDクラスになる前からまともに入ってねえがな」


 ケラケラと、D-14134が笑う。

 はあ、とため息をつき、俺も湯船に浸かった。

 思わず「うあ〜」と声が出る。


 「兄ちゃん、ここには酒とかあんのかね?」

 「酒は断ったんじゃないのか?」

 「はっはっは!あんな監獄に酒なんかねえから当たり前だろう?」


 それからしばらく、俺らは会話を続けた。

 思えば、D-14134とゆっくり会話をする事なんてほぼなかった。


 「そろそろ出るか、兄ちゃん」

 「ああ」


 いつの間にか棚に置いてあったペットボトル水を飲み、用意されていた服に着替え、脱衣室を出る。


 不意に、よだれが出た。

 料理の匂いがした。それも形容しがたいほどの旨さであろう料理の。

 それはD-14134も同じようで、その匂いで目を丸くしていた。


 「い、行こうぜ、兄ちゃん」

 「ああ……」


 返事をする前に、すでに足が動いていた。


 ねこ


 「長い間食事をしていないと見受けましたので、お腹に優しい卵雑炊を御用意しました」


 私の説明を二人は聞いていない。

 目の前にある料理に目が釘付けだった。


 「い、いただきます」

 「イタダキマス。これでいいのか?」

 「はい。ごゆっくりどうぞ」


 踵を返すと、早速背後から食事する音が聞こえた。音が聞こえる程にはキレイとは言えない食べ方をしているのだろうが、それも仕方の無い事である。


 「ねこちゃん」

 「なんですか?ユイレさん」


 ユイレちゃんが不安そうな顔で話しかけてくる。


 「このレストラン、まだ戻らないの?」

 「安心してください。ユイレさんが眠くなるまでには帰らせます」


 食後


 「食後のミルクティーをどうぞ」

 「ありがとう」


 彼らの顔色はだいぶ良くなってきていた。

 後は睡眠さえ取れば万全な状態になるだろう。

 仮眠所は既に作ってある。そこは時間を拡張させてあり、中の一時間が外の10分になっているので、ゆっくり睡眠が取れるだろう。


 「う――」


 目眩がした。無理なレストランの改造をし過ぎたか。


 「ねこちゃん、大丈夫?」

 「ユイレさん……ちおびた……取ってきてもらえませんか?」

 「う、うん」


 ぐいっ、と一気に飲み干す。

 このレストラン経営で大変なのは他でもない、このレストラン実体の維持と改造だ。

 私が限界になる前に、早めにあの監獄との決着をつけねば。


 「Dクラス職員さん、時間があまりないです。早めに睡眠を取ることをおすすめします」

 「それよりねこちゃんの体調が優れないみたいだが……」

 「だから時間がないんです。早く仮眠室へ。そこでの時間は拡張されているので、ゆっくり睡眠が取れると思います。ではこちらへ」

 「わ、分かった」


 100分後


 「おはようございます。よく眠れたみたいですね。お出かけの準備の方は大丈夫ですか?」

 「ああ、もうできてるよ。ありがとうな、ねこちゃん」

 「私も行きますよ」

 「お嬢ちゃん……気持ちは嬉しいが、さっきより顔色が悪くなってる。その状態だととても」

 「さっきも言ったでしょう。時間がないんです。私が協力すれば、早めにケリがつきます」


 気圧すような言い方にDクラス職員さんは戸惑っているようだが、今は本当に時間がない。


 「さ、行きますよ」

 「わ、分かった」

 「やばくなったら言えよ、お嬢ちゃん」


 ユイレちゃんにも勿論心配されたが、適当な言い訳をつけた。

 自分の限界は自分がよくわかってる。


 「では、行ってきます」

 「頑張ってね、ねこちゃん、Dクラス職員さん」


 ねこ


 「で、監獄に戻ってきた訳だが、まずはどうするんだい?お嬢ちゃん」

 「もう既にここの人間は全て私のキャリアです。そこから引き出した情報によると……この監獄のような施設は他にも複数あるようです」

 「なんだって!?」

 「それ以外の情報はあまり引き出せませんでした。この施設の目的も」


 私が言うと、日系のかたは顎に手をあてて言った。


 「……この施設の最高管理者は、ここではないまた別のどこかにいるのか」

 「おそらくは。ここの全ての人間の頭のを覗いてすら、この施設の目的すら分からないのであれば、それを突き止めるのはかなり難しそうです」


 それに疑問を持ったのか、米系のかたが口を開く。


 「でもお嬢ちゃん、ここの奴らが別の施設とかと連絡をとったりしたとかの情報はないのかい?」

 「あります。そこに一つ、有益な情報がありました」

 「それは?」

 「この組織が外部と連絡する方法です」

 「どうやって……?」


 GPSもつながらない異空間に存在するであろうこの施設が外部と連絡を取る方法。それは。


 「なんてことはありません。この施設が存在するであろう異空間には出口、と言うか穴が存在します。そこと外界がつながっていて、そこから出入りができます」

 「なるほど……それは素晴らしい情報だ。すごいなお嬢ちゃん」

 「それなら、次はその場所だな。どこにあるんだ?」

 「地下1階です」


 地下一階に侵入する方法は二つある。一つ目はここの管理者としてセキュリティを抜ける。二つ目は、侵入する。

もちろん私たちは後者で突破する。この建造物内の全ての人間が私のキャリアとなった今、セキュリティなど無意味。

 これらのむねを彼らに説明した。


 「それでも問題はあります。地下一階には、クラゲの怪物とは別種の生物がいるという情報がありました。そこで私は一つ作戦を立てました」


 その作戦とはいたって単純なもの。

 私が怪物の気を引き付けている間に彼らが侵入する。


 「だが……その後ねこちゃんはどうするつもりなんだい?」

 「私は最悪死んでも何とかなります。もし私が死んでしまったのなら、あなた方は早く施設から出て、できれば財団に報告をお願いします。それで少なくともこの施設は無力化ができるでしょう」

 「今この状況でそれ以上の作戦が思いつくわけでもない以上、お嬢ちゃんの作戦に多用るのも悪い話じゃあないと俺は思うが」


 日系職員さんは少し考え込んだ後、「わかった」と頷いた。


 ねこ


 現在、地下一階へ行くことのできるエレベーターの前の、通路の角に隠れている

 理由は言うまでもないだろう。この先のエレベーターの前に、化け物がいるのだから(正確には気配がする。ので見た訳ではない)。

 

 「今から私が奴を引き付けます。そしたら私が合図を出すのでエレベーターに入ってください。そこからの支持も私が出します。それでは行ってきます」

 「ああ」


 まずは気配を消して天井に引っ付く。そこから化け物の背後に――


 「え?」


 思わず、口から声が漏れてしまった。

 それを「まずい」とすら思えなかった。

 その理由は単純。ありえないものを見たから。


 「173……?」


 特徴的な寸胴短足な造形。見た者の目を一瞬釘付けにする顔にあるペイント。些細な造形の違いと戦闘用装備をしているが、その化け物は確かに、かの有名な「SCP-173 彫刻オリジナル」だった。

 私は半ば反射的にDクラスさん達の脳に信号を発した。『目を瞑れ』と。

 173は対象が自分を見た後に目を離すもしくは瞬きをすると高速で後ろに回り込み、対象の首を折るまたは絞めて殺す。なので最初から視認しなければ大丈夫。

 なるほど、だから脳から得た情報にこの化け物の姿がどうなっているかの情報がなかったのか。


 でも私は見てしまった。この謎の化け物が本当に173と同じ能力を持っていた場合、私は戦わねばならない。この173は戦闘の装備をしている。牢屋に逃げ込んだとしても、鉄格子を破壊して追ってくるだろう。

 なぜ、私がこの彫刻を173だとほぼ確信しているのか。その理由は、知っているから。戦闘用の装備をした173を、量産されていた173を。

 改変される前の世界で(・・・・・・・・・・)、見た。


 『お、おい。大丈夫かねこちゃん』

 『……はい。大丈夫です。少し時間がかかりそうです。そのまま目を瞑って待っていて下さい』


 そうだ。今は彼らを地下一階に行かせるのが先だ。今は戦わねば。



今回使用したscp及びtaleです。


http://scp-jp.wikidot.com/scp-213-jp


http://scp-jp.wikidot.com/scp-1983


http://scp-jp.wikidot.com/silver-bullet


http://scp-jp.wikidot.com/scp-5000


http://scp-jp.wikidot.com/scp-173


最後まで読んで下さり、ありがとうございました。それからも精進して参りますのでよろしくお願いします。ねこはいました。

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[一言] 使用SCPの5000でなんとなく予想ついちゃうww
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