ねこですよろしくおねがいしま…せん(定休日)
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今回はねこちゃんとユイレちゃんの日常回でございます。
特に感動とか詩とかもないのでお気に召さない方、ご安心下さい。次回書きます。
「んんっ……」
ひとつ、おおきく伸びをする。
今日は定休日。月に一度の定休日。我ながらよく働いたと思う。
「さあて……こんな暑い日はちおびたでも……」
このレストランは空調が効いていることは効いているのだが、それを動かしているのは私である。
お客様は涼しくても、私の脳は熱くなっていく。
冷蔵庫からちおびたを取り出し、椅子に腰掛け、一気に飲む。
「ふう……」
この日だけはユイレちゃんには来ないようにとお願いしている。
つまり誰にも邪魔をされない私だけの時間。
誰も来ないということは、レストランを、私の領域を解いても良いということ。
「ああっ、良いっ……!」
思わず変な声がでてしまったが、それも当然。なぜなら、脳が束縛から一度に開放されたのだから。
美しいアンティークレストランは、一瞬にして狭い井戸へと変貌し、私の姿はもとの「ねこ」の姿へと戻った。語彙力は一応残してある。
ごいりょくのないねこはこんなかんじになりますのでよろしくおねがいします。
お客様の脳へのミーム汚染も残してある。
それは元々の能力なので、対して脳に負担はかからない。夏以外は。
こういう日は何をするのか、決まっている。
何もしない。
それが私の月末の過ごし方。
月末は何もしずに、ただ脳を休める。
「んんっ……。チョミさん、疲れました……」
「そろそろ休憩にするか」
今日は月末。月末で忙しいのは財団も例外ではない。
私はセキュリティクリアランスレベル1しか持たない末端職員。
故に、書類の整理やアノマリーの報告書の確認など、雑務が多く回ってくる。
「ユイレちゃん、セキュリティクリアランス1しか持ってないのになんでSCPの監視を任されたのか……私としては上に問いただしたいところだが」
チョミさんはついさっき自動販売機で買ってきたカフェラテをこちらに差し出しながら言う。
「ありがとうございます(一口飲む)。まあ……例外、とでも言うのでしょうかね?」
「まさにそのとおり。て言うかそれ以外ありえない。まったく、上も何を考えてるんだか……。それで、お前体に異常とかないか?」
「大丈夫ですよ。チョミさんも来てみるといいです」
「お前なあ……自分がどんなに危険な行為をしているか、自覚してくれよなぁ……。私も長いことエージェントやってるけど、何回も命の危険にさらされてるんだぞ?」
チョミさんはエージェント。私は研究職。なのになぜチョミさんに仕事を手伝って貰っているかというと、同じアノマリー担当だから。
つまり二人ともねこちゃん担当。
「さ、続き続き。お前、特別収容プロトコルの検討はついてるのか?」
「いや、それが、私なんかが書いた資料が、財団の大事な特別収容プロトコルになると考えると、あまり纏まらなくて……」
「はっ、へんな所で緊張するなあ」
研究職についたばかりの私が特別収容プロトコルを書くのも、また例外。
普通はエージェントの情報を元に、そのアノマリーの担当の研究員が書くのが本来のやり方。
それをなぜ私が全てやっているのか、その理由は単純。私が一番詳しいから。それに私は研究職。
ここまでうってつけの存在はいないからと、そんな理由で例外ばかりが積み重なっている。
ここのサイト管理者は何も言わなかったのか、いささか疑問だ。
でも、そのおかげで私はほぼ毎日ねこちゃんに会いに行けている。
今日はまあ、定休日だけども。
「ふう……」
適当なお客様の視覚を借りて、現在のおおよその時間を確認する。あたりは薄暗くなっていることから、だいたい午後の5時ぐらいだろう。
「そろそろ、起きましょうか」
ぐっ、と目を瞑り、ぐっ、と脳で念じる。
すると一瞬にして、狭い井戸が広々としたアンティークレストランへと変化した。
私の姿も「ねこ」から「総支配人ねこ」に変貌している。
「ユイレさん、開店しましたよ」
「あ、バレてた?」
さっきからずーっと井戸小屋の外に気配を感じていた。
「それで、ねこちゃん。今日はどんなSCPを紹介してくれるの?」
「せっかちですね。そんなせっかちなユイレさんには、ゾッとして身も心も静かになってしまう怖いSCPを紹介してあげましょう」
「うわあ……」
ねこの定休日でした。ありがとうございました。
最後まで読んでいただきありがとうございます。前書きでも言ったように、次回は頑張って感動系書きます。ねこはいます。