昔仲が良かった女の子がのじゃロリ神様になって帰ってきた
(ねえ、ほんとうにいっちゃうの?)
(うん…おかあさんがひっこすからって……)
(そっか……)
(また、あいにきてくれる?)
(うん、ぜったいあいにいく。)
(やくそくだよ!かみさまにうそついたらバチがあたるからね!)
(うん!)
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「ん?このソーセージいつもと違うね、どこのやつ?」
「あ、やっぱり分かっちゃう?ふふん、今日のはイモムシのソーセージで~す!」
「ブフォ!?」
「あ!ちょっと汚いじゃん!」
「……いや、ごめんなさい。」
「全く…美味しいのに勿体ない……」
聞くんじゃ無かった……
というかイモムシのソーセージ意外と旨いな?
言われなきゃ気づかないくらいだったぞ…
あ、どーも。
長谷川 輝 (はせがわ あきら)です。
中学2年の14歳で、夏休み初日を満喫しようと思っている所です。
ちなみに今は朝食。
母とは2人暮らしで、仕事の関係上母が家に居ることはほとんどありませんが、今日は偶々休みらしいです。
そんなこんなで2人で朝食をたべていると、
【ピンポーン】
「あれ?郵便は頼んでないけど誰だろ…輝のお友達?」
「いや?そんな約束はしてないけど……」
【ピンポーン】
「はいは~い、今行きま~す。」
そう言って母が対応しに行ったが、すぐに戻ってきた。
「輝~?あなたのお知り合いさんみたいだけど~?」
あれ、やっぱり俺の友達なのか?
いやでも特に何も約束してないけどな……
そんな疑問を抱えながら玄関に向かう。
すると、玄関に小学生位の少女?幼女?が立っていた。
「久しぶりじゃな!アキラ!ヌシが全然帰って来ないからこっちから来てやったぞ!!」
「……えっと…どちら様で?」
「酷!?9年前の約束をもう忘れたのか!?」
「9年前……え?もしかして、あの時神社に居た子?」
「そうじゃよ!もう忘れとったのか!?」
「……ええぇぇぇ!!!???」
そういえば、1つ言い忘れていた……
昔、ここよりずっと田舎の所に住んでいたことがあるが、その時に神社に居た自称神様の女の子と仲が良かった。
「9年前?輝の昔からのお友達さん?」
「違うぞ!わしはアキラのお嫁さんじゃ!!」
「うぇ!??」
「なんと!輝ったらお母さんに内緒で恋人作ってたの!?」
「ちょちょちょっと待ってくれ~!!」
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「いや~まさか輝の彼女さんが神様だったなんてねぇ。」
「ふふん、どうじゃ凄いじゃろ!」
「何で真に受けてんの母さん……」
「むぅ…なんで肝心のアキラがあんまり信じてくれないんじゃ?」
「まず本当にあの時の女の子だったかどうか疑ってる。一人称「わし」になってるし、語尾が「じゃ」だし……」
「それは~…その~…あれじゃ!イメチェンじゃ!」
「お、おう。」
「それで、今日はどうしたの彼女さん?」
「そうじゃった、実は……」
「「実は?」」
「住んでた神社を離れてアキラに会いに来たんじゃが、その時に神様的な力をバシバシ使ってたら、なんかどんどん力が弱まっていってのぉ……」
「…それで?」
「近くに神社も無いから、しばらくヌシの家に住ませてくれぬか?」
「……それはつまり、居候的な?」
「……平たく言えばそうじゃ………」
えぇ…
確かにここら辺に神社とかは全然無いけど、流石にこの家に住ませるのはちょっと……
第一、母はペットとかなんとかを絶対に家に入れないようなタイプだし、居候なんて……
「別に全然良いわよ?」
「母さん!?」
「本当か!?ありがとうなのじゃ!!」
まさかのOKだった…
「ちょっと母さん、本当に大丈夫なの?」
「良いじゃない!それにいつも輝1人で淋しいでしょ?しかも輝が彼女と同棲なんて!キャー!!」
「いや、ちょっと……」
……もう一つ言い忘れてました。
母はなんていうか、少しアレな感じの人です……
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そんなこんなで今日からこの(力の使えない)神様と一緒に暮らしていく事になりました……
…大丈夫か?これ……
「これが今のアキラの部屋か!なんか面白味の無い普通の部屋じゃのぉ……」
「やかましいわ!」
「神様に向かってやかましいとは何じゃ!」
「今神様の力みたいなの全然使えねぇじゃねえか。」
「うぐぅ…そ、それを言うでない!」
なんか昔より子供っぽくなってるような……
「それで、質問と言うのは何じゃ?」
「そうだった…まず1つ目、その神様の力的な奴はあとどれ位使えそうなんだ?」
「う~む、多分あと1回何かしらの力を使えばエネルギー切れじゃと思う…そんな感じがするのじゃ……」
「次に2つ目、エネルギー切れになるとどうなるんだ?」
「それが分からんのじゃ…分かってるのはエネルギーが少なくなるとどんどんただの女の子になっている、という事ぐらいじゃ。」
「ただの女の子に?」
「そうじゃ、そもそも昔はワシの姿を見れたのはヌシだけだったんじゃが、力が弱まってくると色んな人に見えるようになってるみたいなんじゃよ…ヌシの母親にも見えてるし……」
「…そうか、それと3つ目、エネルギーの補充はできるのか?」
「それも分からんのじゃ…今まで神社から離れる事なんて無かったからのぉ、エネルギーが切れた事が無いんじゃ。」
「ふ~む……」
「まあ安心せい!たとえ神様の力的なものを失ってもワシはアキラのそばに居続けるぞ!」
「……安心、なのか?」
「たとえ火の中水の中草の中森の中でもワシはアキラに付いていくぞ!」
「どっかで聞いたことあるフレーズだな……最後にもう1つ、お前ってなんか名前みたいなのないのか?ずっと神様神様呼び続けるのもなんか嫌なんだけど。」
「嫌!?…まあ確かに名前はまだ無いのじゃが……」
「ほう、じゃあ俺がお前に名前をつけても良いか?」
「それが良いのじゃ!是非可愛い名前にしておくれ!」
「う~ん、そうだなぁ…語尾が「のじゃ」だから……」
「うんうん!」
「「のじゃ子」で。」
「のじゃ子!?なんか子どもっぽくないか…?」
「まあ実際子どもっぽいし。」
「誰が子どもじゃ誰が!これでもヌシより軽く数百年は年上なんじゃぞ!!」
「じゃあこれからよろしくな、のじゃ子。」
「嫌じゃ~!!!」
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のじゃ子が家に来てから2日目。
思いの外問題なく夏休みを過ごせている事に俺が1番驚いている。
まあ大きな問題は無いんだが……
「アキラ!なんだこの変な板は!押すと色が変わるぞ!」
「それはテレビだ、あんまり画面に触るなよ。」
「アキラアキラ!!夏なのに何でこの中はこんなに涼しいんじゃ!?」
「そっちは冷蔵庫な、開けっ放しにすると勿体ないからやめてくれよ。」
「アキラアキラアキラ~!!!」
……ちょっと知識がなさ過ぎないか?
さっき「イメチェン」とか言ってたじゃん…何でテレビとか冷蔵庫とか知らないんだ?
「何じゃこの変な色の缶は?飲めるのか?(ゴクッ)」
「あ!バカそれは__」
「………(ポワーン)」
缶ビールだ、って言おうとしたが時既に遅し。
というか1缶飲んだだけでそんなにボケーッとするか?普通。
こいつ酒に弱すぎだろ…
「う~ん…アキラ?アキラ~……」
「はいはい何ですか?」
「アキラ…待っておくれ……行かないでくれ……また独りは嫌なのじゃ……アキラ~………(ポロポロ)」
「………………」
…もう少し、優しく接してやるか……
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夏休み7日目。
今はのじゃ子と2人で買い物中です。
…いや、本当は俺が1人で買い物に行く予定だったんだよ?
そしたら母が、
「ん?買い物行くの?」
「ちょっと文房具とか本買いにね。」
「そっか、のじゃ子ちゃんと行って来たら?」
「……何でのじゃ子が……?」
「せっかくの夏休みなんだからさ、2人で夏の思い出みたいなのを作ったらいいじゃん!昼間っからデートなんて!羨まし~!!」
「デートって言っちゃってるじゃん!」
「良いから良いから!あ、それとついでに私のピノ買ってきて~。」
「……はい。」
こんな感じです。
「おお、凄いぞアキラ!あんなに大きい家があるのか!?」
「あれは家じゃなくて本屋だぞ。」
「本屋?こっちの本屋はあんなに大きいのか!」
「まあ確かにここの本屋はまあまあ大きいけどな…」
「見ろアキラ!この本は男同士で抱き合ってるぞ!これは何をしてるんじゃ?」
「うぉぉい!?なんでBLコーナーで立ち読みしてんだよお前!?」
「? ビーエルってなんじゃ?」
「と、とにかく!こっちは駄目!」
「こ、これ!引きずるでない!」
「全く…ただ買い物してただけなのに凄い疲れるな……」
「疲れた時は休むのが1番じゃぞ?」
「原因に言われてもなぁ……」
ともあれ、やっと帰り道。
ピノも買っているので早めに帰りたい。
「………あれ?」
「む?どうかしたか?」
「いや……なんか…嫌な予感がする………」
「嫌な予感?」
「……多分、気のせいなんだろうな……」
そう自分に言い聞かせながら、横断歩道で信号待ち中…
その時、遠くの方から結構なスピードで走ってくるトラックが見えた。
というかもうそっち側赤信号だぞ…そのまま行くのか?
そして、嫌な予感は的中する。
「何をしとるのじゃアキラ?もう青信号じゃぞ~。」
振り向くと、のじゃ子がすでに横断歩道を渡り始めている。
さらに横のトラックは止まりそうにない。
「おいっ!ちゃんと横見ろ!」
【ドンッ】
と言いながら、気づけば俺はのじゃ子を奥に突き飛ばしていた。
「うわっ!いきなり何するん____」
横を見ると、トラックのナンバープレートがもう目の前まで来ている。
周りの時間が遅くなっているのに気づき、そこで改めて死を確信する。
あぁ…たった14年の短い人生だったな……
そう思いながら目をつむる。
………いつまで経っても衝撃が来ない。
というかぶつかった音もしない。
(あれ?なんかおかしいな?)
おそるおそる目を開けると……
トラックが目の前で停止していた。
「うわっ!」
思わず腰が抜けたが、それでもトラックは動く気配はない。
時間全体が止まってる訳じゃないのか?
思わずハッとして、のじゃ子の方を見る。
するとそこには、トラックに手を向けて顔をしかめているのじゃ子の姿があった。
「何をしとる!早くそこからのけ!!」
そう言われ、素早くトラックの通り道から身をかわす。
それと同時に、トラックも再び動き出す。
安心する暇も無く、俺は急いでのじゃ子の元へ駆け寄る。
「のじゃ子、お前今の………」
「ふ、ふふ…神様の力……侮るで…な………」
【ドサッ】
「のじゃ子!?おい、のじゃ子!!」
何度も呼びかけるが返事がない。
「そんな……のじゃ子……最後の力を使ったから……」
そう言いながら、のじゃ子を抱きしめる。
……抱きしめた所で、あることに気づく。
「………スゥー、スゥー…………」
「……あれ?」
………普通に寝息してた。
てことはあれか?ただ眠っただけって事か?
び、びっくりした~~!!!!
今の感じ完全に死んだと思ってた~!!
何はともあれ、のじゃ子が無事でよかった……
そう思いながら、両手に本と文房具とピノ、背中にのじゃ子を乗せて家に向かう。
というか、のじゃ子はいつ起きるんだろう…
死んでないのが確認できたのは良いけど、このまま数年間寝っぱなしとかだったら嫌だぞ?
「う~ん、むにゃむにゃ……あれ、アキラ?」
「起きるの早いな!?」
爆速で起きた……
いやまあ、早く起きてくれたのはありがたいんだが…数日間は覚悟してたから…良い意味で拍子抜けだな……
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
「と、いうわけで!ワシは今日からただのめんこい女の子になったのじゃ!」
「お、おう…」
「良かったじゃない!これで人間同士になれたから正式に結婚できるわよ輝!」
「俺まだ14だよ!?」
神様からただの女の子になったらしいが、ぶっちゃけそんなに変わらないな……
元から神様っぽく無かったし。
「そんな訳で、これからは神様ではなく恋人としてよろしくな!アキラ!!」
「………よろしくお願いします…」
「よ~し!それじゃあ今日はピザパーティよ~!」
「イェーイ!ところで、ぴざってなんじゃ?」
「むふふ、ピザって言うのはね__」
……どうやら、のじゃ子との生活はまだまだ続きそうだ。
イモムシのソーセージは知りませんが、ウジ虫のソーセージは実際に合って結構美味しいらしいですよ。