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pc壊れたので投稿ペースが落ちます

 ――――この島で初めての朝を迎えた。ゆっくりと空へと上がる白い日差しで目を覚ます。環境は劣悪だけど睡眠時間に関しては東京にいたときより健康的かもしれない。


「うにゃあああ……悪魔に朝日が五臓六腑っす」


 バキボキと首やら背中を鳴らしながらノーチェは体を伸ばす。背中を反らし両腕を空に突き上げるその仕種は胸やら腋やらがあまりに無防備で、見てると寿命が縮みそうになる。慌てて顔を背けたけど、椰子の実の胚乳みたいに白い髪が艶やかな褐色の肩を撫でている光景が頭から離れそうにない。嫌な感覚だ。


「ほら、見惚れてないで朝の椰子の実収穫っすよ。それともまだ星でもみたい気分なんすか?」


「次言ってみろ。あんたは後悔することになる」


「私が可愛いからってセクハラはダメっすよやんちゃボーイ。お姉さんの好感度をあげたいなら齷齪働くっすよ」


(彼女はなんでこんなに親しげなんだ? 昨日だって歌を……いや、思い出すのはやめておこう。表情に出る)


 彼女の悪戯っぽい笑顔に送り出され、俺はまた椰子の実採取に勤しんだ。昨日の格闘を経て慣れてきたかもしれない。同じ時間をかけて十個ほど取ることができた。


 ガツガツと堅い外皮を突き切って、二人でいくつか飲み干す。俺にはどうも舌が合わないけれど、彼女はがっつくように喉に通していた。


「好きなのか? 椰子の実」


「船に乗ってると酒しか飲まないから新鮮っすね。それに食事に関して言えば野菜とか果物なんて滅多に無かったから正直嬉しいっす」


 そう言ってもしゃもしゃと白い花を頬張り始める。俺も花を食べれるだけ胃に詰めたけど、彼女もマンドラゴラには手をつけようとはしなかった。ひもじいけど、食べ物として舌が認識できないのだ。


「なぁ、今干潮だろ」


「そうっすね。漂着した海藻でも干して食べたいんすか?」


 俺は海岸に視線を向ける。砂浜が昨日の何倍にも広がり、岩場の方も水が引いて溜まり場が出来ていた。


「貝は食べたらダメなのか? 簡単に取れるし量も確保できると思うが」


 俺の発言にノーチェはぶるぶると首を横に振った。顔を蒼白させて、最大限の拒絶反応を見せる。


「頭大丈夫っすか? 火があるならまだしも生なんて……気が狂ってるとしかいいようがないっすよ? あんなヌメヌメしてるのを生食とか……きもすぎるっす」


 寿司を怖がる外国人みたいなリアクションをされてしまったけど、悪魔がいる世界でも貝は普通にいるらしい。正直な話、異世界らしいものをあまり見ていないから半信半疑なとこがある。


「……食べ物が尽きたときの対応策を伝えただけだ」


「悪魔の提案っすね。考えたくもないから早く水捜しの探索に行くっすよ」


「マングローブのほうだな」


(あの水が全部海水じゃないことを祈りたいが)


 草食動物みたいな食事を済ませて立ち上がる。拾った麻袋に椰子の実をいくつか詰めて、水があるかもしれないマングローブ林へと進むことにした。


 岩礁地帯と砂浜の境界線に海水が出入りする小さな小川のようなものがあった。水は海から入っているのか陸から流れているのかは分からないため、後者であることを祈りながら調べに行く。川は砂浜より奥へと入って行くと浅く広がっていて、青々としたマングローブの木々が密集する泥地になっていた。


「うーん……ちょっと危険かもしれないっすね」


「泥で足が取られるってことか?」


「それもあるっすけど、温暖で人がいなくて、隠れる場所が多い泥地ってのが雷撃鰻(トーネルアンギーユ)とかバケミミズとかが好きそうな場所なんすよね」


 うにゅうう……とあざとい声でノーチェは唸る。


「トーネルなんたら?」


(異世界とは言っていたが、モンスター的なものだろうか)


「トーネルアンギーユ。バリバリにモンスター。雷属性の魔力を大量に持ってて成魚だと雷落とすっす。稚魚でもこんな海水じゃ電気が通りやすいっすから危険かも。オオミミズは……くそでかいミミズっす。肉食の」


(こいつ、俺がこの世界について何も知らないからって嘘をついてないよな? ……その様子はないか。彼女は多分、真面目なところは真面目なタイプだ。ノーチェ以外にもファンタジーな生物がいるって事実は最悪だが)


「……どっちも会いたくないな」


(鰻は少し見てみたいがミミズに喰われるなんて死んでも死に切れない)


「迂回するか?」


「急がば回れっすね。石とかを投げて行けば警戒はできるっすけど、泥に足突っ込んでそんなことするくらいなら普通の森林地帯を進むに限るっす。それはそれとして……ちょっとその前に花摘んで来ていいすか?」


 結構な量のアマゾネスリリー? とやらを食べたはずだけどやっぱりお腹が膨れなかったか。ノーチェは恥じるように脚をもじつかせる。


(トイレか)


「食べたりなかったか。こんな状況だから忍びないのも分かるけど気にすることじゃない。なんなら一緒に行くか?」


 瞬間、浅黒い頬を赤く染めて、ギリギリと八重歯を噛み締めながら彼女は俺の胸倉を掴み上げる。華奢な腕に反して怪力だった。


「行かないっすよ! 一緒にって……どんなプレイっすかそれ! 変態野郎! 用を足してくるって言ってるの分からないんすか!?」


「分かって冗談言ってるんだ。俺もキジなりドラゴン撃ってくるから準備出来たらここ集合な」


 ノーチェが鋭く睨みつけるなか、俺は強引に手を振りほどいて茂みに逃げる。


「足元と葉っぱに毒虫がいないことを気をつけろっすよ」


 彼女は威圧的な低い口調でぼそりと呟いた。夜道には気をつけろよ的な事かと思ったけど、彼女なりの注意だと考えることにした。

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