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食料調達

「くっふっふ……! このときのために葉っぱと椰子の実の殻でポーチを作ったんすよ。せっせと編み込んで、ひたすら、ひたすらぁ!」


 邪悪な笑い声と岩場で屈み込んでは共に一匹、二匹と手のひらに乗る程度の蟹を掴んで椰子のポーチへ収納していく。火が着く前までは死んでも嫌だみたいな感じだったが火が着いたら別らしい。


「どんな世界でも蟹は蟹なんだな」


(雷落とす鰻がいるなら人食い蟹ぐらいいそうなもんだが)


 幸いにもモンスターらしいモンスターというのをいまだに見かけていない。


「岸辺にいるのはこういう小さいやつっすね。けど沖に出たらいきなり海面を蹴って船に乗り込んで人も悪魔も斬り殺すような蟹もいるっすよ。んっと、こーんぐらい?」


 ノーチェは両手に蟹を掴んだまま大きく腕を振り仰ぐ。そんな奴がここにいなくて良かった。いるのは精々、俺達に食べられるような奴だけだ。


「どうやってそんなの倒すんだ?」


「皆で槍突き刺したり魔法だったり、倒さずに棒で突き落としたり、厄介っすよ。貿易船にも来るもんだから、冒険者が乗ってる船ってのがほとんどっす」


 この島にもそんな生物がいる可能性は十二分にある。ナイフ以外に武器を用意しとくべきかもしれない。まぁそんなこと思ったって頑張って作れそうなのは木製の槍と弓ぐらいなものだが。


「ノーチェ、この貝は食べれるのか?」


 岩場にくっついていたまだら模様の刺々しい巻き貝をナイフで引っぺがして彼女に見せる。これが毒じゃないなら結構な大物だ。手のひらより大きい。


「スイジガイっすね。海がない地域だと貝殻がお守りとして高く売れるっす。味は知らないっすけど、食べるなとは言われたことがないから平気だと思うっす」


(なら取っておくか。どうせなら種類を食べたい)


 これだけ取れてればマングローブの牡蠣に手を出すまでもないかもしれない。けどまぁ今夜は贅沢したい。他にもいい食料がないか見渡す。さざ波が響くなか、ノーチェは食べごたえのありそうなヤドカリに指を挟まれていた。


「岩場で飛び跳ねてると危ないぞ」


「ちょっと心配ぐらいしたらどうなんすかー!」


 指を突き出し涙目になってノーチェが訴える。少し赤くなっているが血が出ているわけでもないし大したことはなさそうだった。いつのまにかヤドカリもポーチに収容されている。


(血の涙流されたときよりは百倍よさそうだが)


「へいきか?」


「平気っすよ! けどこいつは生かしてはおけねえ。絶対焼き殺すっすよ。確実に息の根をとめるために家から引きずり出して八つ裂きにするっすよ!」(物は言いようだな)


 ようは貝殻ごと焼いたあとヤドから出して切って食べようと。


「毒とかないよな」


 酸性のゴキブリを食べておいてノーチェにこんなことを聞く権利があるのか分からないが、それでも一応尋ねた。彼女は深く頷くと小悪魔めいた八重歯を見せてしたりと笑う。


「毒のある蟹はもっと深いとこじゃないといないっすよ。それに見分けられる。この辺の食べれるものとかは大体わかるっすよ。船にいたとき船長が全部教えてくれたっすから!」


「それで物知りお姉さんなんだな」


 適当にからかいながら引き続き磯場を捜索。水がまだ残っているところなんかにウニもいた。けど異様にでかい。サッカーボールぐらいの大きさだ。針が長いわ集団で固まっているわ、ギョロリとした一つ目がたしかに俺のことを睨んでいた。心なしか長く鋭い針が俺に向けられる。


(これはモンスターなのか?)


「ノーチェ、ウニのモンスターっているのか?」


「スカベンジシーキャットっていう奴がいるっす。希少種なんであんまり見ないっすけど、針が長くて群れで生息してて、毒があって、肛門から水を噴出して飛び掛かったり逃げたりするっす。あとでかいっすね」


 思わず彼女とウニを交互に見返した。相変わらずウニの一つ目が俺を睨んでいる。彼女の説明とこいつらの特徴が全て合致している。


「……そいつらは攻撃的か?」


「ビビってんすか? 満潮じゃなきゃ襲ってこないっすよ。素潜りとかしてる奴を襲ったり、漁業場を荒らすから駆除されまくったんすけどね」


 ほっと胸を撫で下ろした。無警戒に周囲を散策していたけど、やはりノーチェあ離れすぎるべきじゃない。話を聞いているとこの世界の生き物は攻撃的過ぎる。


「そ、そそ、そろそろ充分なぐらい収穫したんじゃないか?」


 ウニから後ずさって声をかけた。ノーチェは磯場のゴツゴツとした岩を綺麗に跳んで、一度、二度、石を振り下ろしたかと思うと、顔を真っ黒に染めて一匹のタコを持ち上げた。だらりと垂れ下がる触手。十五センチ程度のそれは殴打によって絶命していた。


「んあ? そうっすね。今日はごちそうっすよ! 人間とまともな食事するなんて生まれて初めてっす。こんなの久々すぎてランチで胃もたれしちゃいそうっす!」


 飛び跳ねながら俺のもとに駆け寄る。動きに合わせて跳ねる尻尾。タコが瀬戸際に吐いたと思われる墨が返り血みたいに跳ねていた。


「あー……先焼いててくれ。五分で戻る。散策してたときにいい食料を見つけたんだ」


 ちょっとばかし自慢げに語るとノーチェは目を輝かせた。パタパタと羽ばたく悪魔の翼。グッと親指を突き出してくれた。


「その顔! 火をつけるアイディアが浮かんだときと同じっすね! 期待大っす! おいーしく焼いてるからとっとと行くっすよ!」


「さーいえっさー」


(……あのゴキブリ、焼いたらもっといい味になる気がする)



スカベンジシーキャット

スカベンジシーキャット目・スカベンジシーキャット科に属するウニの一種。長い棘に毒があり、刺さると激しい痛みをおこす。

 全体に黒紫色。殻は薄く硬い。径は5-15cm、上から見るとほぼ円形で底が凹んだ半球形をしている。生時は肛門の部分が袋状に膨らみ、その開口部周辺が黄色いのでよく目立つ。また、殻の側面やや上に五個の白い眼がはっきり見える。これが青いものや、刺の合間に鮮やかな模様が見られる例もある。

 棘は長いものは50cmに達し、本体に比べて著しく長い。上向きの棘が長いが、下側は短い。若い個体では棘に青の横縞模様が見られる個体もある。

 一般的なウニであるムラサキウニやバフンウニなどは、手に乗せて多少押しつけるなどしてもそうそう刺さらず、刺さったとしてもほとんど深傷にはならない。しかしスカベンジシーキャットの針は細く鋭く、そして脆い。表面に逆刺があり、しかも折れやすいために、皮膚内部に折れて残ることが多く、ひどく痛む。種によっては強い毒性を持ち、痙攣による呼吸困難などを起こすものもいる。

 主に岩礁地帯やサンゴ礁に生息するが、漁業用の網などにくっついている場合も多い。

 スカベンジシーキャットに属するウニの特徴として群れで生息し、凹んだ部分に存在する肛門から勢いよく海水を噴出することで海水のなかを飛ぶ習性がある。このウニは唯一狩りをするウニであり、自身を噴出し、小型の魚などを刺し殺す。突き刺した針は自切することができるため、海底に沈んだあと時間をかけて捕食する。

 天敵は多く、装甲魚やガザミの類に捕食されたのを確認されている。


人間とのかかわり。

 噴出移動による攻撃は近場を通った人間にも行われる。一匹が飛ぶと群れの全員が襲い掛かるという性質から死亡被害も出ている。また、漁網にかかった魚を食害。網の破損。漁師への被害が多い。また、通常のウニ同様卵巣・精巣は他のウニと同様食用にされる。

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