酒場にて
9話目
──『憩いの場』
王都冒険者ギルドの目の前にあり、冒険者で賑わう食堂。
木造でできたその建物は人を引きつける。
疲れた者を癒すように。
傷ついた者を治すように。
冒険者は皆ここを訪れる。
レオは食堂の隅の方に座る。
「おねーさん!ご飯頼みたいんだけど!」
「はーい!今行きまーす!」
可愛らしい声と共に可愛い女の子が注文を受けに来る。
「あ、久しぶりだね!レオ君!」
「リナさん、久しぶり〜」
「ほんとに久しぶりだねー。なんかあった?」
心配そうな顔をこちらに向けてくる。
銀髪の髪を後ろで1つ結びにし、青みがかった瞳が覗く。
リナと話すのは本当に久しぶりだった。というか、食堂に訪れること自体久しぶりだった。
レオが勇者としてではなくレオとして活動していた時よくお世話になった。
「う〜ん。ごろごろしてた」
「ちゃんと働きなよ!で、今日はどのような注文で?」
リナは注文を受けていたことを思い出し尋ねる。
「今日のオススメとアップルジュースで」
「今日のオススメとアップルジュースね。すぐに持ってくるから待っててね〜」
リナは厨房の方へかけて行った。
レオは少し嬉しかった。自分のことを憶えていたことに。
レオのことを勇者と知っているのは少ない。
パーティーメンバーは勿論のこと、ギルド職員や王や宰相と本当一握りだけだ。
勇者として真面目に活動していた時はフルフェイスで知られないようにしていた。
名前が知られているのは仕方がないが、レオは基本本名を名乗らないため分かられていない。
勇者がこんなだらけた奴だと知れたら民衆は落胆するだろう。
レオは空腹になった腹を擦りながら料理がくるのを待っていた。
──数分後、料理はリナの手によって運ばれてきた。
「はい!今日のオススメとアップルジュース。後、店からのサービス!味わってねー」
そう言い残すと仕事に戻って行った。
テーブルにはシチューと様々なパンとアップルジュース、そしてサービスとして出てきた野菜炒めが並んでいた。
「野菜嫌いなんだけど」
レオの呟きは他の冒険者の声に消えていった。
「ご馳走様でした」
野菜に悪戦苦闘しながらも完食した。
久しぶりの味を堪能した。
レオは思う。自分で稼いだ金で食べるご飯も美味しいと。
ご飯の美味しさの余韻に浸っていると急に声をかけられた。
色々とおかしくならないように本当に苦労した...