悪者
昔々、といってもそこまで昔じゃない。
人の一生一つ二つくらい前だ。
とある所に学者がいました。
その学者は悪者とはなにか、を研究してました。
研究の方法は様々な人に聞き、その回答を統計する方法です。
それは簡単なようで途方もない研究だったそうです。
「悪い事をする人」
大人に聞くと
「言うことを聞かない、人に迷惑をかけるetc」
子供は単純明快でとてもわかりやすい回答でしたが、大人は自らにとって不愉快、もしくは嫌いなことをする人となりました。
学者はその結果に頭を抱えました。
悪者とはなにか。
世間一般が言うから悪者か。
それとも自分が思うから悪者か。
それとも法律が言うから悪者か。
学者はホトホト困り果ててしまいました。
そして一つの結論に辿り着きました。
“悪者”はいない。
なぜそういう結論になったのか。
学者はその死の寸前まで話しませんでした。
その自らの首を吊って死ぬ時まで話しませんでした。




