女神の祝福
「弓兵は武器系のジョブですね。基本的に筋力よりも技術力によるダメージ補正が高いです。ですが筋力を上げることで攻撃力の高い巨大矢を放つ大弓を扱うことも可能です」
ケイディアの呟きに対して、女神は律儀に説明をしてくれる。
「よろしければ一般的なジョブ構成をお教え致します」
「一般的な、ってことは他プレイヤーがどんな風にジョブを選んでるかってことですか?」
「そうです。自由な発想の妨げになる、等の理由で遠慮される方もおられますので」
オリジナリティを出すつもりなら、聞かないという考えもあるようだ。だが、ここは聞いておいた方がいいだろう。先駆者の意見は重要だ。
「お願いします」
「かしこまりました。……弓をメインで扱う方は、魔法系ジョブを修得し魔法弓士として戦う方と、生産系スキルを修得し狩人プレイと称して楽しむ方が多いですね。
魔法弓士ですが、魔力や精神力を技術力と並列して上げ弓と魔法で戦う方と、あくまで魔法はサポートとして扱い、技術力や筋力にステータスを振る方が多いです。
狩人としてプレイされる方は、技術力にステータスを多く振っています。技術力を上げることで生産系ジョブの成功率も高まるので、一石二鳥ですね。
他にも、筋力を上げて大弓を扱う方や、近接ジョブを取って使い分ける方などがいらっしゃいます」
女神の説明を聞いて、圭馬の中でケイディアの方向性が固まった。狩人ロールで遊ぶのも捨てがたいが、弓メインの魔法弓士で楽しむことに決めた。回復魔法を修得すれば、パーティの誰もならなさそうな回復要員にもなれる。
「回復もできる魔法弓士、ってなったら、何属性の魔法が使えますか?」
「白魔法、神術、光属性、水属性、風属性の順に回復魔法が得意です。弓を扱う方に人気があるのは風属性ですね」
「確かに、弓って風属性のイメージあるな」
他属性の魔法に比べると回復能力は低いようだが、メジャーな構成ならば、他のメンバーがどんなキャラを作ってきてもあらかた対応できるだろう。
「じゃあ、弓と風のジョブでお願いします」
「かしこまりました。ステータスはどうされますか?」
「技術力を5と、精神力を5で」
弓メインで育てるつもりではあるが、魔法の操作能力というのは少し気になる。後衛なので魔法防御を上げることは無駄ではないはずだ。
「では、弓兵と風属性魔法士のジョブレベルを7に。技術力を5、精神力を5、ステータスを上昇させます。これが最終確認になります。よろしいですか?」
「……はい!」
「それでは……」
再びふわりと女神の体が浮かび、ケイディアから少し離れた正面に着地する。女神の手元にはいつの間にか枝のような杖が握られており、それを水平に構えた。
「世界の始まりの大樹の枝よ、我の言葉を聞きたまえ」
女神が詠唱を始めると、杖が光を放ち始める。
「今日この日のこの瞬間に、世界に新たな命が生まれた。新たな命を祝いましょう。新たな命は新たな光。光のために唄いましょう」
そうして始まったのは女神の舞だった。光を放つ杖を手に、クルクルと舞いながら祝詞を口にする。
「大地を新たな光が照らす。我らの世界に光が灯る。命から出でしその光は、また新たな命を照らすでしょう。
始まりの樹よ古の大樹よ、旅立つ者に祝福を。旅立つ者に旅立つ力を、旅立つ知恵を授けましょう」
圭馬は、自分の中に暖かいものが流れ込んでくる未体験の感覚に目を見張った。
「新たな命よ、新たな光よ。貴方の命を迎えましょう。光を喜び唄いましょう。貴方の門出を祝いましょう」
そして祝福は終わりを迎える。
「新たな命に――祝福を」