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地雷パーティになりました。  作者: 滝津原
ようこそ!ランドクリエイト・オンラインへ!
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世界への招待

「――ランドクリエイト・オンライン?」


 大学生である五条圭馬(ごじょうけいま)は、大学の食堂で、高校からの親友(というより腐れ縁)である本郷陽輝(ほんごうはるき)からその話を持ちかけられた。


「そう!先週発売されたドルーグのランドクリエイト・オンライン!俺と一緒に始めないか?」


 ドルーグというのは近年、爆発的に成長した世界的なゲームメーカーの社名で、一昔前は知る人ぞ知る程度の知名度だったのだが、今ではかなりメジャーな部類に入る会社だ。だが、そこが先週発売したとなると……


「……つまり、あの本体価格が6桁のハードを買えと?」

「……まあそうなるな」


 一週間前、ドルーグ社が新たな家庭用ゲーム機本体『ネクスディメント』(NDとかネクスとか呼ばれている)を開発し、市場に繰り出してきた。

 既存の没入型VRゲーム機を圧倒的に上回るスペック。VRゲームの時代が本格的に始まったと多くのユーザーがその内容には歓喜した。


 だが、そのメーカー希望価格が……


「10万飛んで2千円は流石に辛いぞ……?」


 これが本体価格であり、さらにゲームソフト代で約8千円。合計11万円である。一般的なゲームハードの二倍を超える強気の価格設定に、それだけの価値があるのか様子見をしている人も多いと聞く。

 ちなみに現状の既存ソフトはたったの2本。『ランドクリエイト・オンライン』と『アルティメットスポーツNEXT』だけだ。


「だが、俺はある伝手を使い、ゲームソフト込みで10万に抑える交渉に成功した!」

「それは割とすごいな」


 発売一週間のゲームを1万値切るとは。どや顔で自慢する陽輝に圭馬は素直に称賛を贈る。


「というわけで、買おう」

「どういうわけなんだよ」


 はあ、とため息混じりで圭馬は答える。ずるずるとうどんを啜る陽輝に先を促す。


「お前が安く買えるだけで、俺まで10万で買えるわけじゃないだろ?」

「いや、お前も10万で買える」

「……まじか?」

「大学の近くのゲームショップがさ、結構な数仕入れたらしいんだ」


 陽輝の話によると、発売初日に大量に仕入れたはいいが、店の客層が大学生メインのため、高すぎてなかなか売れ行きが伸びないのだそうだ。更にかなりの大きさになるため、保管場所にも困っているらしい。


「それで、店長と交渉して、俺の他に2人買う奴を見つけて来たら、1人10万で売ってやる。って話になったんだよ」

「……2人?」


 どうやらもう1人、あのバカ高いゲームを買う当てがあるらしい。


「そう。黒瀬に頼んだ」

「黒ちゃんかー。よく買う気になったな」


 黒瀬音は大学サークルの部員であり、陽輝とは同中だそうだ。因みに3人とも同じ漫画サークルに入っている。うちの漫画サークルはアニメや漫画の話で駄弁っていることがほとんどで、活動らしい活動は文化祭近くにしかしていないが。


「もとから興味はあったらしいから、1万値切ったって話に食いついて来たんだ」

「なるほどな」

「というわけで、あとはお前だけだ!お前が断れば、黒瀬も悲しむ!」

「スナでも誘っとけよ。あいつ、結構なゲーマーだろ?」

「……まあこのあと誘うつもりはあるけど」


 スナこと砂川美月も同サークルメンバーである。同回生はこの四人だけだ。


「でも、女子2人とやるよりかはお前がいたほうが精神的に楽なんだよ!わかるだろ!?」

「そりゃあな」

「……お前がここで断ったら、明日から部室でお前の知らないゲームの話で持ちきりになる」

「それはなんか嫌だな!」


 自分だけ話についていけない疎外感を味わいたくはない。10万は痛いが、実家通いの身なので出せない金額ではなく、最近暇を持て余しているのも事実だ。ふむ、と考え込む圭馬に陽輝はもう一押しと、手を合わせて頼み込む。


「10万するの納得のクオリティだって話だから、頼む!」

「ちょっと出費は痛いが……やるか」

「よっしゃ!」


 グッとガッツポーズを取る陽輝を前に、圭馬は笑う。そして、ふと思い付いて呟いた。


「でも、6桁か……。3人集めたから5桁にならないか聞いてみたら?」

「……なるほど。お前も鬼だな」


 圭馬の提案に2人でニヤリと笑いあうのだった。



 そして放課後、4人でゲームショップまで買いに行き、交渉の結果、税込みで99,800円となった。

 店主は泣いて喜んでくれた。

ギリギリ黒字ですが、利益はほとんど出ていません(笑)

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