冒険者ギルド
――冒険者ギルド。
「イトリス冒険者ギルド本部へようこそいらっしゃいました、新生者の皆様。ギルドスタッフのレリリと申します。
冒険者ギルドでは、町の方々や、あなた方と同じ冒険者の方々からの依頼を受けつけ、紹介しております。
ギルドへの登録手数料は500Nですが、新生者の皆様の最初の町の登録手数料は無料にさせていただいております。他の町、他の国のギルドで依頼を受ける、あるいは依頼を出す場合は最初に登録手数料がかかりますのでご注意ください」
ケイディア達4人はギルドのカウンターで説明を受けていた。ログインしているのが平日の昼間だけあって、ゲームのメイン施設にも関わらず、人の入りは少ない。
「あちらのクエストボードに依頼書が貼ってますので、受けたいクエストがありましたら依頼書を剥がしてこちらの受注カウンターまでお越しください。逆に依頼を出したい場合は、あちらの発注カウンターにお申し付けください」
「発注ってどんなことができるんだ?」
「どんな依頼でも発注は可能です。素材の調達、モンスターの討伐、飼い猫の捜索、実験の被験体。まあ受けてくれる方がいるかどうかは別ですが」
問いかけたダングルスに、あくまで紹介をするだけで結果までは保証できない、とレリリは言う。
「発注の際は依頼の難易度に応じて報酬金とは別に発注手数料を頂きます。クエスト受注の際にも難易度に応じて補償金をお預かりしますが、こちらは依頼が成功した際にお返しさせて頂きます」
レリリが一通りの説明を終えると、ケイディア達はカウンターに備え付けてある水晶玉の近くに案内された。
「こちらはギルド登録のための『ギルドクリスタル』です。魔力や気の流れを読み取り、習得ジョブやステータスを当方で把握するための装置です。そのデータを元にギルドカードを発行させて頂きます。
ギルドカードにはギルドランク、キャラクターレベル、ステータス、習得ジョブ、各ジョブレベル等が表示されます。データ上の物ですので、落としたり、取られたりする心配はありませんし、実体化させてある状態でも、取り上げる、盗み見るといった行為はできませんのでご安心ください」
それではクリスタルの上に手を置いてください、と促され、まず前に出たのはダングルスだった。
「おおっ?」
「どうした?」
「いやぁ……新感覚だった」
感想をこぼすダングルスに続いて、ケイディアが水晶玉に手を置く。すると、
「――っ!?」
ブワリ、と足の先から頭の先まで何かが駆け抜けた。言うなれば、体温のある何かが下から上へと体をすり抜けたかのような感覚だ。しかしそれを感じたのは本当に一瞬だった。
終わりましたよ、というレリリの声に我に返ると、ニヤニヤするダングルスと、何があったかわからないといった風のクローベルとサリミラの姿が目に写った。
「……なんですか、今のは」
「先程も説明したように、魔力や気の流れを読み取るために、体に少し魔力を通しますので、慣れていないとビックリされる方も多いですね」
にこにこと悪怯れる様子もなく説明するスタッフのレリリ。ギルドに入る通過儀礼のようなものなのだろう。
続いて、クローベル、サリミラと順に水晶に手を触れる。クローベルは可愛らしい悲鳴を上げ、それを見て爆笑するダングルスを杖で殴っていた。
「それでは、こちらがギルドカードです。お納めください」
レリリはカウンターの下から4枚のハガキ程の大きさのカードをとり出し4人に手渡す。渡されたギルドカードには、ケイディア達それぞれの情報が刻まれていた。
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キャラネーム:ケイディア
キャラレベル:1
ギルドランク:E
ステータス(+3)
筋力:21 技術力:26 体力:21 耐久力:21
敏捷性:21 魔力:21 精神力:26 運:20
習得ジョブ:弓兵Lv.7 風属性魔法士Lv.7
称号:新生者
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キャラネーム:クローベル
キャラレベル:1
ギルドランク:E
ステータス(+3)
筋力:21 技術力:21 体力:21 耐久力:21
敏捷性:21 魔力:28 精神力:24 運:20
習得ジョブ:白魔法士Lv.10 武闘家Lv.2
称号:新生者
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キャラネーム:ダングルス
キャラレベル:1
ギルドランク:E
ステータス(+3)
筋力:21 技術力:21 体力:21 耐久力:21
敏捷性:21 魔力:31 精神力:21 運:20
習得ジョブ:火属性魔法士Lv.10 両手剣士Lv.2
称号:新生者
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キャラネーム:サリミラ
キャラレベル:1
ギルドランク:E
ステータス(+3)
筋力:31 技術力:21 体力:21 耐久力:21
敏捷性:21 魔力:21 精神力:21 運:20
習得ジョブ:銃士Lv.10 土属性魔法士Lv.1
称号:無一文
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水晶玉に手を置いて魔力を通す意味は特にありません。ゲーム内のデータなので本当はそんなことしなくてもわかります。
サリミラのギルドカードについては次回。