4人目の仲間
「で?何にしたんだ?」
「ガンナー☆」
「「お前www」」
ランドクリエイトオンライン内で砂川、キャラクター名サリミラと合流したケイディアとダングルスは、立てたフラグを早々に回収されていた。
元々小柄な砂川だが、サリミラのアバターはさらに一回り小さいように見える。金に近いほどの明るい茶髪のショートカットの下に好奇心の強い猫科の瞳が光っている。
「いや、笑ってる場合じゃねえ!w」
「笑ってんじゃねえかw」
「わははははwww」
ランドクリエイトオンラインでは、ボイスチャットをリアルタイムでテキストチャットに表示する機能がある。声の調子に合わせて☆を付けたり、♥を付けたり、草を生やしたり、顔文字を設定しておくこともできる。草を生やすコツは声を少し震わせることだ。
それはさておき、
「マジで後衛4人になっちまった」
「お前が『風呂入ってくる』とかフラグなんか立てるからだろ」
「そうだよー」
「選んだのはお前だろうが!w」
「しかもよりにもよって狙撃銃とかさあ」
てへぺろ、と舌を出すサリミラが背中に背負っているのは巨大な銃である。せめて拳銃なら前線で振り回すこともできただろうが、持っているのはどう見ても長距離砲だった。
「違うよー、この銃は対物ライフルってやつだよー!」
「なお悪いわ!前衛の話はどうなった!」
「記憶にございません。全て秘書がやったことです」
「いねえだろ」
どこに秘書がいると言うのか。
「で、なんで狙撃銃をチョイスしたんだ?盾役いないって話はしただろ?」
「それに銃って割りと不遇だって聞いたぞ?」
「うん。それは知ってるー」
「……そうなのか?」
サリミラはその話を知っているようだったが、ケイディアには初耳だった。
「攻撃力が武器依存なんだよ。スキルとかで威力が上がったり弾の速度が上がったりはしないんだ」
「序盤は普通に使えるけど、段々メインで使うのは難しくなるんだってさー。全然ダメージ通らないって二丁拳銃使ってるって人が愚痴ってた」
「そこまで調べて選ぶってことは、ちゃんと考えがあるんだな?」
前情報を得てからジョブを選んだということは、狙いがあるに違いない。考えなしでネタに走ったという理由では無さそうでケイディアは少し安心した。
ケイディアの質問に、サリミラは笑みを深める。
「ゼロ距離でスナキャをブッパしようと思って!」
「お前、頭沸いてるんじゃねえの!?」
「前に出る気なのかよwww」
サリミラの出した答えは、攻撃力が武器依存なら、もともと攻撃力が高い銃を使えばいいというものだった。
その結果がゼロ距離対物ライフルである。
「いや、前線でどうやって構えるんだよ!?」
「腰だめでも撃てるさー!このゲーム世界ならね!」
「ショットガンとかじゃ駄目なのか……?」
「単発の火力がないと防御抜けないじゃん?」
「お、おう」
一応、色々と考えた結果らしい。
「女神様に、こんなことがしたいんですー!ってお願いしたら私のためにわざわざ対物ライフル用意してくれたんだよ!代わりに防具無し、初期金額500Nにされたけど!無茶振りな願いでも叶えてくれる女神様マジ優秀!」
「そうだな女神様は優秀だな!お前はポンコツだけどなああああ!」
「それでキャラメイク時の服装なのか」
単発式の対物ライフルを手に、防具も無しで、前線で何をしようと言うのだろうか。
出来上がってしまった後衛職パーティは、前途多難のようだった。
語尾などでwwwと笑いを表すことを「草を生やす」と表現しています。
追記:ここまでプロローグということで章の区切りにしました。