1話始まり
やっと納得の行く、作品が書けました。
放課後の学校、三年生の教室で楽しそうに会話をする五人の生徒達の声が響き渡る。
自分もその中に居る事を誇りに思う。
この五人は各分野でそれぞれトップを務めた、本物の天才なのだ。
俺、田中 理九もそのうちの一人。
「なぁ、理九!高校に上がったら一緒にサッカーやろうぜ!」
この金髪の爽やか系男子は青森 春斗、イギリス人とのハーフで、ウチのサッカー部のキャプテンでありエースだ。しかも本大会で弱小チームを一人で勝利に導いた注目選手であり、学校では1位2位を争う程のイケメンだと呼ばれて居る。
「いいや…理九は俺と一緒に剣道をやる…ハルトと言えど、邪魔をしないでくれ。」
剣道部主将の打部 正司、十五歳でありなが、打部流剣術の免許皆伝なのだ。大会では大人と混じって戦っている時も……彼の実力ではもう敵なしと言っても過言ではない。
「理九!理九!じゃあ、暇な時でいいから、僕と科学!!化学しよ!理科の実験!ものづくりだ!!」
彼女は六花理科、持ち前の頭脳と才能そしてセンスで、数々の実験を成功させて来た。正真正銘の天才、3年程前から、論文を出し、世界に認められる程の天才科学技術者なのだ。
世界の科学技術を十年は進歩させたと言われている。
「何を言って居るの?……理九はこれからバスケを始めるわ…邪魔をしないで?」
彼女は戦闘院 加奈恵、現時点ですでにバスケ女子日本代表のベンチ選手として登録されている程のスター選手、将来を約束されたVIPなのである。
同時に彼女は人気女性用ファッション雑誌Kanaの表紙として選ばれる程のモデルなのだ。
その美貌は学校1位、いや、日本1位だと言われている程の時の人なのだ。
「え、えぇっとぉ……皆?顔が怖いよ?冷静に!冷静に!ひっひっふー!ひっひっふーだ?」
俺は田中 理九、俺には才能など無い、あるのは努力する為の力だけ。
その力を使って、様々な成績、功績を作って来たが、俺は彼等と同じ立場には居られない、居ることが出来なかった。
俺がどんなに努力を積み重ねようが、どんなに実績を残そうが、天才の彼等には届かない。
だけど、そんな彼等と同じ場所に居られる、隣に居られる事が楽しくて、嬉しかった。
「明日で卒業だな……思えば最初は、皆仲悪かったよな?」
「ッフ…今もだと、思うぞ?理九」
「そうだ、こいつらと馴れ合うのは御免だ。虫唾が走る。」
「天才な僕達と一緒にするのは良く無い、万死に値する。」
「目障りな奴らですね、いっそ殺してしまいますか?」
こうして皆、順番に一言づつ喋っていて、仲良さそうなのに……。
俺達は何時もの様に駄弁っていると突然、俺達の目の前に黒い球体が現れた。
五人はそれを見ると、動きを止める、いや、止まされているのだ。
「な、何これ?」
唯一反応出来た俺が、言葉を口にする事が出来た。
しかし、そんな事はどうでいいと嘲笑うが如く、その黒い球体は黒い光を放って、俺達を飲み込んだ。
視界が飲み込まれて行くなか、皆がとった行動は一緒だった。
それは、理九の服を掴む事、何が有ってもこの手は離さないと、そう誓ってだ。
こうして俺達は日本と言う居場所から姿を消した。
気が付けば俺達は見知らぬ場所に居た、しかも、見知らぬ人々に囲まれており、中には鎧を身を包み、剣や槍などを持つ、騎士風な者達までいる。
「正司…行けるか?」
俺はそれとなく正司に脱出出来るかを確認する。
「俺とお前なら出来るな…しかし」
皆でって言うのが難しいか……。
「ハルト、カナエ、リカは行けそう?」
「俺は余裕……」
「私も行けますよ」
「むり、不可能、却下」
二人は流石だけど、リカも有る意味流石だな……。
逃げるのが、無理なら交渉しか無い………だけど、拉致をした奴らが素直に俺達を逃がす筈が無い。
俺はとりあえず両手を正面に構える。
正司は無刀取りの姿勢のまま動かない。
ハルトもボクシングの構え、流石はイギリスハーフと言った所か……。
カナエは空手?見たいな奴だ。
リカは訳の分からんポーズで威嚇している。
リカは天才だけど、何を考えて居るのか理解不能だ。
すると、やたら真っ白な女性が、慌てて飛びだして来た。
そして、両手を肩の高さまで上げて、俺達を止めようとする。
どうやら、敵意は無い様だ。
「私は敵ではありません、味方です…って言うかこの国の国王です……。」
「国王?」
「日本人じゃ無いのか?」
「帯刀している」
「……綺麗だね」
「ファンタジーですね」
俺達は多種多様に、思った事を口にする、この国王…騎士達とは比べ物に成らない程のオーラを纏っている。只者じゃない、と言うより、もはや化け物の領域に達している。
「ようこそいらっしゃいました。皆様…私はこの国の王、国王です」
俺達は特に何も言わずに、国王と名乗る女性を見つめる。
「ここは日本では無いのか?」
ハルトがおもむろにそう聞いて来る。
確かに周りに居る人達の顔は日本人のそれとは違う、国王と名乗る女性も日本人には見えない。
それに、部屋のあちこちにいる、鎧を着た者達のただならぬ気配が全てを物語って居る。
俺はリカを後ろにかばいながら、少し前に出る。
「国王……ここは日本では無いのか?…ここは一体、何処なのだ。」
皆を代表して、田中が質問をする。
今直ぐに襲い掛かり、黙らせるのは簡単だ、だが、情報が少なすぎる。
もし、本当に、敵では無いのなら、ムキに成って戦う事は無いのだから……。
すると、国王は1枚の紙を出して、田中に手渡した。
そこには、見たことの無い海に面した膨大な大陸の見取り図の様な物が描かれている。
「それはこの世界の地図です…ここは貴方達にとっては異世界…と言う場所です。」
「仮に貴女の言葉が本当だとすると、何で俺たちがここに居るんだ?どうせ、俺たちがここに居るのも、貴女達の仕業だろ?」
「この世界で、魔王が目覚めたのです。……いいえ、まだ預言ですね」
魔王が目覚める。だから、俺たちを呼んだのか……。
では、こいつは俺たちに何をさせたいのだ。
「魔王が目覚める前に、私達を呼んだと言う事は、私達を魔王と戦わせるつもり?」
国王の話しを聞いて、カナエも話しに参加して来た。
カナエは、まぁ…こう言う系の話しが大好きだからなぁ……。
「えぇ…貴方方は選ばれたのです。勝手なのは従順承知です、ですがこれも何かの縁だと思って、一緒に戦っては頂けないでしょうか?」
「何を言っているの?……一緒に戦う?……馬鹿にしないで、貴女達では魔王に勝てない、戦えないから私達を呼んだんでしょ?……一緒に戦わないくせに何を!!」
「戦います!!」
その言葉は部屋中に響き渡った。
カナエの言いたい事は分かる、きっとそれはカナエが読んで来た物語は俺達の様な異世界の人間達は戦いの兵器としてしか扱われて来なかったのだろう。
カナエの言葉にはそれ程、重く、強い思いが込められて居た。
しかし、国王の言葉はそれ以上に重くて強い、死ぬ覚悟、いや、もっと別の意思の様な物が感じ取れた。
すると、国王は下を向いて、とても悔しそうに言った。
「貴方達を召喚する為に散った命は一つや二つではありません……知らなかったとは言え、私は彼等を生贄にして、貴方達を召喚したのです。国王である私が!国の為に!彼等に死ねと!言ったのですよ……何が勇者を呼べば国が救われる、何が貴方達の仕事に世界がかかっているだ!何が期待をしているだ!!…私は楽をする為に国民の命を捨てたのだ!最低な国王だ!愚王だ!!私は!これ以上、私の国民を、未来ある希望を死なせる訳にはいかない!!これは私の我儘だ!!頼む!力をかしてくれ!これまで、死んで行った皆の為にも、共に戦ってくれ!!これが!私の!国王の意思だ!」
そう言って、彼女は、国王は俺達に頭を下げた。
両手両足を床に付き、頭を床に擦り付けた。
それは俺達の知る。国王の姿では無かった。
気が付けば、周りに居た人々達も、同じ様に頭を下げている。
彼等は本気なのだ、自分の国を、世界を守ろうと必死なのだ。
「カナエ…どう思う?皆も……。」
俺は彼等に問う、天才である彼等がどの様な選択をするのかを………。
すると、俺の問いをどう受け取ったのか、彼等は肩をすくめる。
「理九…それはズルく無いか?」
「俺はやるぞ、理九もやるんだろ?」
「ここには神秘がありそうだからね…僕も手伝う」
「私は主人公ですから、聞く必要はありませんよ」
「ああ!!お前ら!理九のポイント稼ぎしたな!!お、俺もやるぞ!!俺達がやるんだ!!」
どうやら、皆はやる気の様だ。
これだから、天才は………。
「国王……。」
今もなお、頭を下げている、国王に話し掛ける。
「はい……」
「手伝いますよ……俺達が、この世界を救って見せる」
これが俺達の始まりだった。
次のアップはいつに成るか分かりません、久々に書けたので、コメントを頂けたら幸いです。