プロローグ
ガンっと扉を叩くような音を聞き目を覚ました。
目を開きあたりを確認すると、理科室らしき場所で扉から一番遠い位置の机の影に寄りかかるようにして僕はいた。
なんで、こんなところに?
記憶を溯ろうとしてみても、どうしてもなぜなのか思い出せない。
ひとまず起き上がろうと両手に力を入れたときだった。
右腕に鈍い痛みが走った。
なんだと思い制服をまくり確認してみるとそこには、じんわりと血の滲んだ包帯が巻かれていた。
嘘だろ。
こんな怪我をおっているなら普通は病院、最低でも保健室とかにいるべきはずなのにここは理科室。
いまの状況をいちはやく理解したくて、左腕だけ使い立ち上がった。
もう一度あたりをよく見渡してみると、目覚めたときにきいた扉の音はどうやら別の部屋からだったらしく、どこにも人影は見当たらない。
やけに静かだな……。
妙な胸騒ぎを感じつつも、今おかれている状況をいちはやく理解するためにここを出ることにした。
扉には何故か鍵がかかっていて、窓にはベッタリと赤いものがくっついていた。
恐怖を飲み込んで扉を開けると、鉄の臭いが一気に押し寄せてきて肺を埋めつくした。
それにむせ返りつつも、ひとまず人のいそうな教室の方へ歩みだす。
辺りに飛散する赤を見た感じ一縷の望みでしかなさそうだったが、それしか今の僕にできることはなかった。