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二章OP ルビにプロローグとかつけなきゃ読めないのかッ?!

 ここは、成層圏より高く、オーロラが煌めく電離層の闇夜を彷徨う浮遊島。

「魔術議会」の本部内。


「どう思うかね?」


 円卓を囲む七人の中でも一際、年季があるが偉大さもかもし出すローブを身にまとい、

整えられつつも腰まで届くほどに伸びたひげ面の老人は円卓を囲む他の六人に尋ねる。


「何とも低俗な…」

「頭、悪そう」

「僕が言うまでも無いと思いますが、程度が知れていますねぇ?」

「……………」

「楽しそうな~男の子だと~思うわよ~~?」

「己の力の大いなる責任を全く理解していないことが見て取れます」


 ひげ面の老人。魔術議会最高責任者で議長を務める

ギド・ドゥモンは額を指で軽く叩く。


「ふむ…存外似たり寄ったりか…」

「しかしギド議長。この男があの…」

「それはワシとお前(うぬ)我が師(ウチーチェリ)の秘め事と約束しなかったかね?」


 ギド議長は右隣の渋い顔立ちの男の言葉を遮る。


「……失言でしたな…お許しください。議長」

「な~に~? 議長とガルヴァンちゃんの内緒話~? 教えて~教えて~?」


 ギド議長の左隣に座る、豊満な体つきだが鈍そうな美女が

ギド議長とその右隣に座る、渋い顔立ちの男ガルヴァンの話に首を突っ込もうとする。


「まぁまぁまぁ、シルヴィス様。今、僕らはこのクロアミとか言う…

え~と、狂乱魔術師なんてふざけた名前を名乗っているヤツの話の最中ですよねぇ?」

「けど、バルザートも興味、ありそう」


 飄々と喋るバルザートに声を掛けた少々大きすぎるとんがり帽子を被った

小柄な少女は先ほどから目線が魔道書に向いたままである。


「いやぁいやぁ、そんな事はありませんよ? 大魔女(クロアンヘキサ)マリリエル様?」

「………」

「ところでオールダン。あなたも何か喋ったらどうですかねぇ?」


 暫く溜めていたオールダンと呼ばれた巨漢は


「……………必要性を感じない」


 とバルザートを一蹴する。


「ああ、そうですか……」


「オールダン殿、ここは議会です。出席する意欲がおありになるのでしたら、

最高議員の一人として然るべき最低限の発言はしていただきたいです」


 半ば諦めたバルザートに代わって、蝋燭だけの薄暗い部屋でも煌いて見える、

膝まで届きそうな長い紫銀色の髪の少女がオールダンに意見する。

 ギド議長は話がズレ始めていることに少しばかり落胆の色を示し、少し重く咳払い。


「ワシはうぬらにこの者の処遇をどうするかね?

と問うたつもりだったのだが…いささか言葉を間違えたかな?」


 この鶴の一声に魔道書に釘付けなマリリエルと、

最初から議長のみ見ているオールダン以外の四人は押し黙って議長に目線を戻す。


「ワシがうぬら六人の最高議員たるお前たちを招集したのは他でもない」


 呟くようにそう言ってギド議長は円卓の中央の水晶玉に映る、

遠隔透視による幻影の、見境無く物を破壊しまくる黒網修吾を見ると、

マリリエルを覗く他の五人も水晶玉に映る彼を見る。


「このうつけ…いや…黒網修吾が、かの先代最高責任者であり

ワシの偉大なる師(ウチーチェリ)でもあり…

今は亡き『魔術王(ロワ・マギ)』と謳われしお方、

ゼル・ノワールレゾー様の血を受け継ぐ実の孫だということじゃ」

「え~~? ゼル様の~? あらぁ~あらぁ~?

よ~~く見たら~あの目つきとかぁ~ゼル様に~そっくり~♪」

「へぇぇ、僕の偉大なるご先祖様も最好敵手と認めた先代議長のねぇ…」

「『魔術王』、の…孫」

「…………ほう…………」


 ただ一人心中穏やかではない者が一人。椅子を倒して立ち上がる。


「そ…そんな…こ、こんな…同類とは言え…他者を…弄び! 

辱めて! 暴虐の限りを尽くすような鬼畜外道に堕ちたこの男が!? 

……偉大なあの方の…直系の孫だなんて…」

「どうした? 『刃の神子(アンファン・ド・ディユ・レーム)』とまで称されたうぬらしくもない」

「ッ!? し、失礼しました……」


 ハッとして、紫銀髪の少女は席に戻り、深呼吸。


「と~いうことはぁ~、あの子あんな子だからぁ~、最悪の事態って~言えるかも~?」

「そうでしょうかシルヴィス様? 僕としては大したことなさそうに感じますがねぇ?」

「『魔術王』の、遺産?」


 マリリエルのその言葉でギド、ガルヴァン以外の者達に緊張が走る。


「…………成程………」

「何て事でしょうかねぇ…あのクソガk…いえ少年に受け継がれているのですかねぇ?」

「あ~ら~ら~? もぅ、ゼル様ったらぁ、そういうトコ~相変わらずなんですからぁ~」

「悪夢です…世界の破滅です…地獄の始まりです…暗黒の未来です…」


 ギドは改めて六人に問う。


「うぬらはどう思うかね?」

「抹殺ですな。如何に先代の孫とはいえ、生かしておく利益がありませぬ」

「僕もガルヴァン様に同じですねぇ」

「だめよぉ~。優し~く、やさし~く更正してあげるのが~一番なのよぉ~?」

「芽は、根こそぎ、焼却処分」

「…………………」


 オールダンに目を合わせるギド。


「オールダンよ、うぬはどちらだ?」

「…………………」


 視線を合わせたままのギドとオールダン。


「ふむ、そうか…では、ワシは更正を選ぼう」


 ギドの発言の後、六人は残った紫銀髪の少女を見る。


「………わたしは…その……」


 そのまま押し黙ってしまう。


「七人全員の表決を得るにはいささか性急だったかのう…」


 そしてギドは一呼吸置くと。


「ではこうしよう…黒網修吾の処遇についての最終決定は、猶予期間を儲けた後とする。

良いかな?」


 バルザートが挙手。


「如何したかの?」

「それは監視の継続と言うことですかねぇ?」

「うむ、ただしこれまでの監視体制を変える」

「と、仰いますと?」


 ギドは右手から魔法陣を浮かび上がらせ、その魔法陣からキセルを生じさせる。


「そう()くな……遠隔透視による監視ではなく」


 キセルを咥えるギド。


「ではなく?」


 つい身を乗り出すバルザート。


「一服くらいさせてもらえんか? ワシも喋り疲れたわい」

「おっと…これは失礼でしたねぇ…」


 座り直すバルザート。

 キセルに指先から生じた蒼炎で火を点けるギド。


「………」


 ついそれを見守る、マリリエルを除くほかの五人。

 大きく息を吸い込み、ゆっくりと天井に向けて紫煙を吹き出すギド。


「ワシを除く六人の中から一人選び、直接監視をする」


 待ってましたとばかりに挙手するのはバルザート。


「うぬはいかん」

「えぇ? 即答ですかねぇ?」

「バルザート。うぬは先程から、ちと性急すぎるぞ? 何を焦っておる?」


 残念そうに手を下ろすバルザート。

 さりげなく笑うマリリエル。


「は~い! は~い! 私が~行きますぅ~♪」


 動きこそ無駄が無いがとろとろと挙手するシルヴィス。


「うぬか……」


 シルヴィスの目を見るギド。

 にっこりと微笑むシルヴィス。


「ふむ……」


 つい胸元に目が行くギド。


「ぬ…!」


 幻影の修吾を見るギド。

 豊満な女性を追い掛け回している劣情丸出しの修吾。


「うぬぬぬぬ……!」


 キセルを咥えて考え込むギド。


「どうかしましたぁ~? 議長~?」


 ついシルヴィスの胸元をチラ見して自分の額を引っ叩くギドの行動に六人は少々驚く。


「うぬも……いかん」

「そ~んなぁ~……」


 がっくりと項垂れるシルヴィスをよそに

さりげなく魔道書を片手に挙手するマリリエル。


「む、うぬならば……」


 もう一度幻影の修吾を睨みつけるギド。

 マリリエルと同じくらいの少女達もやっぱり追い掛け回している劣情丸出しの修吾。


「くはっ…! ……うつけめ…似て非なる…わが師よ…言いえて妙でございますぞ…!」


 つい独り言を言ってしまうギド。


「?」


 首を傾げるマリリエル。

 今度は指で額を小突きながら考え込むギド。

この短時間で待ちくたびれたのか、いつの間にかお茶をしているバルザート。

 ひたすらギドを見守るガルヴァン、オールダン、紫銀髪の少女の三人。

 何となくシルヴィスにお茶を勧めてみるバルザート。いじけつつ相伴するシルヴィス。


「うぬは……うむ…」


 まだ考え込んでいるギド。それを静観するマリリエル。


「やはりいかん」


 少しだけ残念そうにしてまた魔道書に目を通すマリリエル。


「やはりここは……」


 残った三人を見てギドはゆっくりと深呼吸。


「ご決断なされますか…?」


 誰よりも真剣な顔つきのガルヴァンと、その隣で何かを期待する目のオールダン。


「イザベル………イザベル・レーム・ド・ルミエルよ」


 凛と構えるイザベルと呼ばれた紫銀髪の少女は驚いてギドを見つめ直す。


「は、はい!」

「直接監視の件は、うぬに委ねよう」

「わ、わ、わらひ……失礼しました……私ですか!?」

「考えた結果、最高議員の中でも『刃の神子(アンファン・ド・ディユ・レーム)』の英名を

唯一冠するうぬが、此度の監視役に最適だと判断した」


 どことなくほぐれていく大講堂の緊張感の中、胸に手を当ててうつむくイザベル。


「しかし、若輩者の私が…」

「議長の決定ですよねぇ? イザベルさん?」


 残念そうな表情を直しきれていないバルザートが念を押すようにイザベルに言う。


「この場合の、議長の決定は……尊重して、然るべき」


 魔道書に目を通しながら呟くマリリエル。

「でもぉ~~、イザベルちゃんなら~、きっと大丈夫よぉ~」


 表情は明らかに残念そうではあるのだが、

聞いているだけで肩の力が抜けそうな速さで励ますシルヴィス。

 胸に当てていた手を握り締めるイザベル。


「ですが……私はどちらかと言うと…抹さ――」

「先代議長とも縁の深い君ならできるとも」


 遮るように後押しをするガルヴァン。そしてそのガルヴァンにさりげなく

「すまんな」と、目配せするギド。


「うぬ以外の発言者はのう…みなうぬと違い、

英名ではなくかつて退けた敵たちからの異名しか持っておらんことも理由としてあるのじゃ」


 再びキセルを吸って紫煙を吐くギド。


「ワシは今も昔も『天地を貪る邪龍王』ギド・ドゥモンと、敵対者から呼ばれておる」


 イザベル以外の五人をそれぞれゆっくりと見ていくギド。


「『幻魔の女王』シルヴィス・イヴァリノーメ=ローゼンクロイツ」

「その呼び名は嫌いですぅ~」

「『叫喚の霊帝』バルザート・フォン=ファウスト十七世」


 得意げに前髪をかきあげるバルザート。


「僕は、結構気に入っておりますがねぇ」

「『世界蛇の愛娘』マリリエル・ツェーリア=エルフェス」


 ギドを一瞥するマリリエル。


「ヘビは、魔女の、家族」

「『死を穿つ牙』オールダン・リガルディー」

「…………………懐かしい…」


 最後にガルヴァンの前で視線を止めるギド。


「そして副議長にして『静謐(せいひつ)の魔人』ガルヴァン・ベルテアクス」


 肘を着き両手の指を交差させるガルヴァン。


「と、議長が挙げて頂いた通り、われわれの異名は、言ってしまえば悪名だ。

だが黒網修吾とて魔術師…この事を知らぬというのも奇妙だからな……」

「………」


 握り拳が少しだけ緩むイザベル。


「酷な事を言うておるのは承知じゃ、しかし上位以下の議員では、

黒網修吾には手も足も出せん。彼奴(きゃつ)は魔術師としての弱点をも克服し、

あまつさえ直属の部下として『魔術王』の遺産の一つでもある『守護兵』達も従えておる」


 何も答えることなくうつむいたままのイザベル。


「………ならば、ガルヴァンよ」


 腰を上げようとするガルヴァン。


「やります…いえ、やらせてください」


 立ち上がった一人を除く六名は微笑む。


「あの鬼畜外d…もとい悪鬼羅s…いえ、黒網修吾には……私が直接監視の下、

更正か…抹殺かの一時判断を委ねる権限を賜りくださったことを感謝いたします」


☣魔術師クロアミ☣


「……はぁ」


 イザベルの目の前に広がるのは日本家屋にありがちな電灯と天井。

横を向けば、すやすやと寝息を立てている妹ユリエルの寝顔がそこにある。


「……皮肉といえば、皮肉なのかな…?」


 下手をすれば彼女の横で気持ち良さそうに眠っている妹がこの世の何処にも居ない。

しかしイザベルはそれを拒んで行動した結果。妹は命を救われる。

奇しくも議会とは事実上敵対関係であるここの邸宅の家主によって。


☣魔術師クロアミ☣


 さらに所変わって、ここは首都圏のとある空港。


「ここが日本…ふぅん…クール・ジャパンって言われてるけど、こういう所は地味ね」


 そう言いながら、その体格には不釣合いなほどに

巨大なキャリーケースを軽々と引っ張る金髪ツインテールの少女。


「さ~て…ここにはウチの眼に適う男はいるのかな~?」


第七話に続く★

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