表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/27

鍛冶師

遅れてすみません(汗々

もう土下座ものです。。。どうか見捨てないで……

ということで投下です。

「鍛冶師?」


「はい。例の滑車の事で、この村で鍛冶が出来る人はいないかと思いまして」


 明くる日の朝、日課である水汲みを終えた一心は、滑車の完成を急ぐべく、朝食の準備中のハルへと声を掛けた。


「村に一人いる」


「じゃぁ、今日紹介してもらっても良いですか?」


「ん」


 ハルの答えに喜び勇んで言葉を続ける一心。

ハルは頷くことで答えを返し、そのまま朝食となる。


「いくつか聞きたいことが……」


 向かい合って食事をとりながら、一心は気になる事を聞くべく口を開いた。


「どんな物を打ってる人なんですか?」


「いろいろ」


「……どんな人なので?」


「変わり者」


「…………頼みごとを聞いてくれそうな人ですか?」


「さぁ」


 一言で鍛冶師と言っても、実際には剣や斧などの武器を打つ武器職人から、籠手や鎧などを打つ防具職人、農具や鍋など日用品を打つ鍛冶職人などその仕事は様々である。


 その人の性格によっては専門以外の物は打たないと、滑車作りへの協力を断られるかもしれない。そこに一抹の不安を抱いたが故の一心の質問だったのだが、返ってきたハルの返事は一心の不安を助長するものでしかなかった。


 朝食を終え、ハルが簡単に昼食の仕込みを行っている間に、一心は見本となる滑車試作3号を手にとり、外出の準備を整える。


「これが完成したら次はコンロを何とかしたいな……」


 滑車を手で弄びながら次の制作に思いを馳せる一心。水汲みと並んで面倒で、かつ時間を取られる作業が、毎回の食事用の火起こしだった。


(クリエイトものだとコンロとかライターとかの制作はメジャーだけど、それも実際に生活してみると良く分かるな)


 幾つかのライトノベルのタイトルを脳裏に浮かべながら、それらの道具が無いがゆえの不便さを改めて認識する。


 特に毎日使う物ほどその不便さが際立って感じられ、更に不便さゆえに時間を余計にとられることでストレスも募る。


(いつまでもハルやルウェルに依存するのも不安だしな……)


 また、一心が滑車の完成を急ぐ理由の一つに、現在の依存状態からの脱却というものがあった。現状一心は何かを生産して居る訳でもなく、食料その他は全てルウェルの好意によって賄われている。その好意がいつまでも続くかは分からないし、無償かどうかも分からない。


 一心の持つ知識と、机上の理論。それを形にする手段か人材が早急に必要だった。


「やれやれ……ラノベやアニメの主人公みたいにはいかないな……」


「ラノベって何?」


「うお!?」


 独り言として消えていくはずだった呟き。しかしそれは背後に現れたハルによって独り言ではなくなった。


「い、何時からそこに?」


「今。準備できた?」


「ええ……まぁ」


「なら行く」


 言葉少なにそれだけ告げると、さっさと部屋を後にするハル。


「びっくりした……ってか前にもこんなことあったよな……」


 わざとじゃないか? と少しばかり疑問に思いながら、慌ててハルの後に続き、家を後にする一心であった。



◇  ◇  ◇



「ここ」


「ええと、本当に?」


「ん」


 自宅を出てから20分ほど。山間にある村の作り上、高低差のある込み入った道を突き進んだ一心とハルは、村のはずれに建つ一軒の民家の前に立っていた。


「ホントのホントに?」


「ん」


 鍛冶場かそれに類する所に連れて行ってもらえると思っていた一心にとって、これは少々予想外の展開である。


(鍛冶師の自宅か何かか?)


 見た感じそれほど大きくも無く、中に鍛冶場があるとは思えない。一応煙突はあるのだが、これはどの家にも大抵は付いている。


「さて……」


 どちらにせよ入ってみなければ分からないと、気合を入れる一心。思えばこの世界で誰かを訪ねるのは初めてのことだった。


「すみません、どなたかいらっしゃいませんか?」


 呼び鈴といった物は無く、仕方なく声を張り上げる。すると――


「おう、何か用か?」


「うおぃ」


 突然降ってわいたように声が掛けられる。しかも何故か背後から。


(ま、またか……)


 早くなった動悸を抑えながら、後ろを振り向く一心。そこには厳つい顔に笑みを浮かべた男が立っていた。


「ど、どうもはじめまして……」


「おう!」


 挨拶を交わしながらざっと男の出で立ちを確認する一心。


 身長は150センチぐらいと、一心より頭一つ分くらいは低く、それでいて体にはがっしりと筋肉が覆っている。顔は髭に覆われ、顎から伸びた髭は何故か三つ編みに。如何にもまさに(・・・)といった背格好だった。


「ドワーフ?」


「いかにも。んで、何の用だ? 用があったから俺んちの前で突っ立てたんだろ?」


「あ、はい。実は――」


 一心は自分が滑車の制作をしている事。そして問題点として金属加工が必要なこと。その金属加工を依頼しに来たことを告げる。


「ほうほう。それで俺にその金属加工を頼みたいと」


「はい。場所はこの軸の部分と、軸周りを金属で覆ってほしいんです」


 持ってきた試作3号を見せながら、金属加工が必要な個所を告げる一心。


「なるほどな。改めて確認なんだが……」


 男――ガンテツと名乗った――は、金属加工の必要な部位を聞くと、改めて滑車の用途を尋ね、その上で仕組みを訪ねた。滑車の仕組みは中学レベルの力学の話が分かれば分かる、至って簡単な原理なのでガンテツもすぐに理解した。


「なるほどな。いや、お前さん良く考えたもんだな!」


 目の前に試作品という形で既に完成形のモデルがあるので、ガンテツにとっては理解しやすく、おかげで一心の金属加工が必要という言葉の意味も、その意図も理解できた。


「つまりはここの部分と、これを金属にして、回転をスムーズにしてやればいいのか。そうすれば強度的にも強くなるし、1石2鳥と」


「ええ。後は全体を金属で作ってしまうと重さの問題が出てくるので、基本は木造で、必要な部分だけを金属にしようかと」


「なるほど、なるほど」


 途中からは家の中へと招かれ、ガンテツと2人で盛り上がる一心。ハルはさすがメイドというべきか、勝手知ったるとばかりにお茶を沸かし、棚から茶菓子を持ち出してきた。


「よし、分かった。取り敢えずこいつは使っていいのか?」


「ええ、構いませんよ」


「ならすぐ済むだろう。見てくか?」


「はい!」


 試作品第3号を手にガンテツが立ち上がる。ついてこいというガンテツの言葉に従い、その後に続き、家の奥へと進む。するとすぐに一つの扉が現れた。


「この先だ」


 そう言ってガンテツが金属製の扉を押し開けると、その先に地下へと続く階段が現れる。


「地下があったんですか?」


 鍛冶場が地下にあるとは思えず、首を傾げる一心。しかしガンテツは、来れば分かるとそのままずんずん進んでしまう。慌ててその後に続く一心とハル。そして――


「これは…………」


「……すごいですね」


 ガンテツに続いて地下道を下ることしばし、現れたのは巨大な地下空間。そこには鍛冶用と思われる巨大な炉を備えた台が鎮座していた。


「へへ、どうだ? 俺の自慢の鍛冶場は」


 悪戯を成功させた子供のような顔で笑うガンテツ。ハルも、そして一心もしばらくは言葉が出なかった。


「驚いた。ここはあなたが?」


「いやそれがな、実は先々代が偶然発見したらしい。そうとう埃被ってたからかなり古い場所らしいんだが、全部現役で使えるんでな、そのまま使ってる」


 先に驚愕から抜け出したハルが、ガンテツと言葉を交わす。


「まさか遺跡!?」


「かもな」


 ハルが驚愕と共に口にした遺跡という言葉。それはこの大陸に点在する先史文明期の遺産である。

 今の技術体系、魔法体系を共に凌駕するその時代の遺産は、各国が所有権を主張し合って争いにまで発展するような代物だった。


 ちなみにユズリアル女王国の建国もその時代で、実は大陸でも最も古い国家だったりする。当然その時期の遺跡や遺産も多く所有している。


「個人で持つ物ではない」


「いや、さすがに所有者は国だ。俺は維持管理を任されているにすぎない」


 呆れたような口調でそう呟くハル。彼女にしては先ほどから饒舌なのは、ひとえに驚きゆえだろう。


(なぜだ……どうして…………)


 一方、未だ驚愕冷めやらぬ一心は、先程から別の(・・)驚愕に囚われていた。


(俺はこの場所を知っている?)


 初めてくる場所。しかし彼の記憶には既にこの場所に関するものがあった。


(ということはここはカグツに関係する場所なのか?)


 そっと左腰へと手をやる一心。その手に触るのはカグツを宿した一振りの剣。あの日以来、一度も反応を見せない剣は、この時もまた何の反応を見せず、沈黙を保っていた。


「よし、んじゃそろそろ始めるとするか!」


 一心やハルの驚く姿を一通り見て満足したガンテツは、鍛冶作業を始めるべく持ってきた試作第3号を台の上へと乗せる。そして、その日一番の驚愕が一心を襲う。


「炎よ。神聖なる鍛冶の炎よ。命無き物へその息吹を込めよ。燃え盛る神炎(ブレイジング・アグニ)


 それは、一心が初めて見た魔法行使の瞬間だった。


(ま、ま、ま、魔法キターーーーー!!)


 もしかしたらと思っていた。なにせここは獣人がいる世界。しかし逆に言えば、地球世界と違うところは尻尾と獣耳がある人間がいるということぐらい――一心が生活した範囲ではだが――だった。


 期待はするが、しかし無かった場合の精神的ショックを思えば過度の期待はためらわれる。それが一心の今日至までの魔法に対する考えだった。


 さっさと誰かに聞けよと思うなかれ。「ない」と答えられるのが怖かったのだ。誰にとは言わないが……


「一心?」


 気づくとハルだけでなく、ガンテツも一心を見ていた。そして驚いていた。当然であろう。なにせ一心はただただ無言で涙を流していたのだから。


「感動した」


「はい?」


「感動した!!」


 おそらくハルにも、そしてガンテツにも分からないだろう。一心の感じた感動を理解できるのは、一心自身と、あとは地球世界に残してきた数百万人のオタクだけだろうから。

というわけで鍛冶師です。ガンテツです。ドワーフです。

ようやくちょっとはファンタジーテイストになってキタでしょうか……


次話はもうできていますので、明日投稿しようと思います。。。今度は大丈夫でっす! たぶん?

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ