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北の街で

遅くなりました~~よろしくです。

 交易都市として栄える街ルクセル。夕刻前にそこに到着した一心達は、盗賊を衛士へと引き渡すと、その日の宿を探しに街へ出た。


「すご……ユズリハラルも大きいとは思ったけど……」


 人の多さ、街の規模。どちらもルクセルの街の方が大きく、その人の多さと活気に圧倒される一心。


 人の多さなどは東京や福岡、大阪、名古屋などの方が遥かに多いのだが、日本人一色(偶に外国人含む)の日本に対し、この世界は、獣人がいて、人間がいて、ドワーフがいてエルフがいてと、見た目の多様さに加え、傭兵、シスター、商人、町人と、その背格好も実にばらばら。


 乱雑な賑わいという点で、日本の都会を圧倒していた。


「ほほう、一心はユズリハラルへは行った事が?」


 雑踏へと消えるかに思われた一心の呟き。しかし前を歩くレイスの耳には届いていた様で、興味を見せる。


「ええ。まぁ、一度だけ。観光しとこうと思いまして」


「あの街も良いところですね」


「レイスさんも行った事が?」


「ええ。商売の成功を祈願し、歴代さまの恩恵を預かろうと思いまして、何度か足を運んでいます」


 元居た場所に繋がる情報は極力避けるべきだと判断し、曖昧に濁す一心。フォローの為か、それとも単なる興味か、レイスへと聞き返したルウェルに、すかさず答えるレイス。


「ああ、こちらです」


 そうしているうちに、一行を乗せる馬車は、1軒の旅籠の前で停止した。


 街中には馬車を入れられなかったユズリハラルに対し、道が広く、馬車で街中を通れるのも、ルクセルの街の特徴の一つだ。旅籠はレイスおすすめの宿を紹介してもらった。


「では、私は一度商業ギルドへと顔を出して来ますので、また後ほど」


 荷物と馬車を旅籠に預けると、レイスはそう言って席を外す。後ほどという言葉は、一心の勘違いでなければ、一心へと向けられていたようにも感じる。事実、


「何か約束でも?」


 と、ルウェルが一心に向けて首をかしげていた。


「まぁ、一応ね」


 あれか? あれの事かと、内心の期待を悟られない様、冷静さを心がけながら、何でもない様子を装う。しかし、否応なしに期待は高まり、同時に胸の鼓動も高まる。


「どうした一心。顔が赤いぞ?」


「いえ、だいじょーぶ!」


 果たして何が大丈夫なのか。どうしてもそちらの方向へと流れる思考は演算領域を起動、思考を分割化して並列思考で回避する。絶賛能力の無駄使いである。


「じゃ、じゃぁとりあえず部屋で休もう。部屋割は?」


 取り敢えず部屋に退避するべしと、並列思考の一つが判断。同時に別の並列思考では戦略撤退という文字が踊っている。しかし――


「あ、それなんだけど、今回は1つの部屋で。意外とここ高かったからさ。お金はまだ十分あるけど、削れるところは削っておいた方が良いでしょ?」


 などと、旅が始まって早くも3日目で嬉し恥ずかしい同室イベントが発生。けれども、今日、この日、この時ばかりは素直に喜べない一心。


「え、いや……でもそれは……」


 女の子3人と同室(カグラ含む)。それはつまり、レイスと出かけ、むふふに行って帰ってきたらそこにはルウェルとハルとカグラが居る訳だ。


(な、なんて展開! 悶え苦しめと? そう言う事か!?)


 これ何てえろげー? 的な疑問が脳裏を駆け抜ける。どうでもいいが何時の間にやらルウェルの壁が無くなっている。


(ってか、良いのか? 一応王女だろ? それが男と同衾って……。それに基本(スタンダード)なんですーって言ってた敬語は何処に行ったぁ!)


 良い意味で慣れてきたルウェル。そして並列思考を展開していても、その全てが混乱している一心であった。



 翌日。



「良い天気ですね~ じゃぁ、出発しましょうか」


 妙に機嫌のいいレイスの号令で旅を再開する一向。何処か肌に艶があった。対して……


「どうしたの一心? もう酔った?」


 朝から何処か疲れた様子で調子の悪い一心。


「いや、別に大丈夫」


 心配するルウェルにそう答えたものの、その目には何処か恨みがましい眼差しが籠っていた。


(――?)


 当然、ルウェルに心当たりは無く、意味も分からない。しかし――


(ルウェルめ、ルウェルめ、ルウェルのせいで、いや、おかげで!! …………は、いかんいかん)


 一心の内部では、ルウェルに対するなんとも言えない複雑な感情が渦巻いていた。



 昨夜。



 結局部屋にはルウェル達が居て、気の休まらなかった一心は、一人街をぶらついていた。


 とはいえ、特に目当てがある訳ではない。足の向くまま気の向くままに、武器屋を覗いたり、防具店を冷やかしたりしながら時間を潰す。


(さて、宿に戻るか、それとも何とかしてレイスに連絡を取るか……)


 もともと街に着いたのが夕暮れ時だったこともあり。辺りはすぐに暗くなった。そして電灯などのないこの世界。日暮れとともに多くの人は家に戻り夕餉の支度や、寝る準備を始める。


 多かった人通りも、時を置くにつれどんどん少なくなっていった。


(帰るか)


 一部、明るさを保つ方向もあり、男達がそちらへ流れていくのを視界の隅に捉えながら、しかし一心は宿へとその足を向ける。一人で明るい方向へと向かう勇気は無かった。


(宿に帰ればレイスから誘いが来るだろうし……)


 そんな下心、もとい期待感もあり、胸を高鳴らせながら宿へと戻る一心。そして、


「一心殿ですね? 主レイスから伝言を預かっております」


 宿ではレイスの下男が一心を待ち構えていた。


「れ、レイスさんから?」


 ごくり、じゅるり。いよいよか……そんな思いを胸に、下男の伝言とやらを聞く。しかし――


「すまん、用事が出来た。この埋め合わせは必ずする。次の街を楽しみにしていてくれ。だそうです」


「………………はい?」


 急激にしぼむ期待感。期待が高かっただけに、それが裏切られたときの反動はそれはもう、凄まじく。口をぱくぱくしながら、しかしどうしていいか分からない。


 そんな一心をよそに、下男は仕事は終わったとばかりに宿を後にした。


「はい?」


 一人取り残された一心は、もう一度首を傾げてみるが、しかし何も起こらず、何も変わらない。結局、とぼとぼと部屋へと戻るしかなかった。そして――


(何この地獄……俺にどうしろと?)


 その夜。ルウェルやハル、カグラと同じ部屋で横になった一心。高級宿らしく、ベッドは柔らかく、シーツも手触りが良い。けれど、一心自身はそんなものを堪能している余裕が無かった。


「う……うぅん」


 右を見ると、艶めかしい寝声を上げながらルウェルが寝返りを打つのが見え、


「あっ……ふぅ……」


 左を見るとハルがその豊満な胸を、自重で押し潰しているのが見えた。


 灯りは無い。なのに部屋の中ははっきりと見ることが出来る。全ては月明かりのおかげで……


(月明かりの下……寝返りを打つ2人の美少女……って、寝れるか!!)


 寧ろ月明かりは妙にロマンチックで、なおさら性質が悪かった。


(相手は少女だ。ルウェルは16歳、ハルは……何歳だ?)


 おそらくルウェルよりは年上だろう。幼く見えるがルウェルが16歳なのだから、19,20といったところか……


(あれ、問題なくね?)


 ルウェルの16歳も、日本では結婚できる年頃だ。


(いや、相手は未成年だ。俺はれっきとした大学生。手を出したら犯罪。お巡りさんこっちですーーってなってしまう)


 ともすれば熱を帯びそうになる己の頭を、必死になって冷却する。その間にも、うふぅん……だの、はふぅん……だの、わざとか! と突っ込みたくなる声が両方から聞こえてくる。


(沈まれ……静まりたまえ。心頭滅却! 悪霊退散!!)


 部屋にベットは4つある。それぞれに一心、ルウェル、ハル、カグラが寝ているのだが、4つは横に並べられなかったらしく、カグラの寝るベットだけが横に、ちょうど一心の頭の上の方に置かれていた。


「あ……」


「うん?」


 ふと、聞こえた声に目を向けてみると、そこにはすっぽんぽんになったカグラの裸体が。


「は? ……」


「暑い……」


(カグラーーー!!!!)


「あ……つい」


(お、お前もか、ルウェル!!)


 慌ててカグラから目を逸らした先で、まるで一心の苦労をあざ笑うかのように、寝服を寝乱すルウェル。そして――


「うぅん……」


(まさか……)


 この日、一心はこの世界にはブラジャーがないことを知った。そして己の能力の正しい使い方も。


(記憶領域展開……永・久・保・存!!)



 ◇  ◇  ◇



「一心?」


「うぉっ――ルウェルか? な、なに? どうした?」


「昼休憩にするって……ほんとに大丈夫?」


「昼? もう昼なのか?」


 昨夜保存した脳内写真(資料)の整理をしていた一心。整理に夢中になり過ぎて、いつの間にか大分時間が経っていたようだ。


 ちなみに、盗賊を街で引き渡し、馬車が一台空いたので、レイスやその使用人たちは元の馬車に戻っている。護衛も追加で増やし、怪我をしていた者は街に置いてきた。


「顔、赤いよ? ほんとのホントに大丈夫?」


「大丈夫だって。ちょっと寝不足なだけだよ」


 なおも心配してくれる心優しいルウェル。そんな彼女の様子に、ほんのちょっと罪悪感が芽生える。永久保存した資料の中には、彼女の写真も幾つか……いや、たくさんあるのだ。


 ただ、罪悪感を覚えたところで、一心に消去をする気は全くない。これっぽっちも無い。故に、永・久・保・存!! なのだ。


「食べたら馬車で少し休んで。今日は村で一泊するって言ってたから」


「うん、分かった。ありがとう」


 そんな彼女の気遣いが、目に染みる。


 昼食を終え、再び馬車は走り出す。言われた通りに馬車の中で横になる一心。ルウェルとカグラがそんな一心の世話を焼いてくれた。


 その日はそのまま特に危険なことも無く、日暮れ前に村に到着する。


「明日には城塞都市アルスへと着きます。北の玄関口ですね。となれば、キルナンまではもう少しですよ」


 一心達の旅は順調に進んでいた。

今回、少し遊んでみました。


か、感想とか評価ボタン……よ、よろしくお願いします!!

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