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魔法考察

次話です。どぞどぞ

 深夜。辺りが寝静まり、物音といえば幾つか焚かれた松明の爆ぜる音や、寝ずの番をする数人の護衛の歩く足音だけとなった時分。こっそりと天幕を抜け出し、夜闇に紛れて移動する2つの影があった。


(何も見つかった時疑われるような危険を冒さんでも……)


(分かってるけど、早めにやっておかないと落ち着かなくて)


(全く……おっと、見回りだ。伏せろ)


 幸い、番をしている者達が警戒しているのは外側に対してで、内側で動いている一心とカグラには気付かない。


(もう大丈夫?)


(じゃな。行くか?)


(うん!)


 会話の全てを念話で行い、護衛達の目を盗んで、野営地を飛び出す2人。目指すは野営地のすぐ近くにある森の中だった。


 何故こんな時分に2人だけで抜け出しているのかと言えば、昼間の戦闘と、その後行動を共にする事となったレイスら一行が原因であった。


 一つ目の昼間の戦闘に関してだが、戦闘後もずっと、一心は使った魔法が、エルク戦での威力とかなり違いがあったことが気になっていた。

 その違いが誤差とかいうレベルでは無かったからだ。


 仮にエルクと盗賊たちの技量にはっきりと差があったとしても(実際に差は明らかだったのだが)、体の耐久値という点では、そこまでの差があるとは思えない。


 しかし実際問題として、エルク戦ではそこまで明確なダメージを与えられなかった一心の魔法(エアリアル・コンボ)が、対盗賊戦では致命傷を与えた。この違いはいったい何なのか。


 今後手加減をする必要が出てきた際に、あるいはエルクのような強敵と戦うことになった時に、そこらへんが曖昧だと致命的な失敗を犯してしまう気がしたのだ。しかし、これに関してはすぐに答えが得られた。


「それならば、イメージの強固さの問題じゃろう」


「イメージ?」


「うむ。そもそもお主が今扱っている魔法に関してじゃが――」


 一通り一心の疑問を聞いたカグラは、己の内にある魔法に関する知識、考察をもとに一つの仮説を立てる。


 それは、魔法行使の際に必要となるイメージ。体内の魔力を事象に変換するためのキーとなるそれが、エルク戦の時には曖昧で、対盗賊戦の時には明確だったのだろうということだった。


「魔法の威力に関わる要素は3つある。一つは魔法と行使者の相性、もう一つは込める魔力の量。そして最後がイメージ力じゃ。このイメージ力がエルクとの戦闘では曖昧に流れた。エルクに距離を詰められ、お主が焦ったことでな。それがおそらくは原因じゃろうて」


「あ~~ 言われてみると確かに」


 エルク戦の時には最後距離を詰められ、大いに焦っている中での魔法行使だった。対して、盗賊と戦った時には、相手が3人いたとはいえ、心にも、実際面にも大きなゆとりがあった。それらの違いが、結果として魔法の威力を大きく左右したのだろう。


「なるほどね。イメージの具体性、強固さで魔法の威力は大きく変わるのか……」


「その通りじゃ。というか一心よ、それぐらいの知識なら記憶領域に書き込んでおったと思うのじゃがの。そこら辺どうなんじゃ?」


「うぐ……」


 おそらくカグラが言うのならば、記憶領域にはそれに該当する知識があるのだろう。後は一心がそれをちゃんと引き出せるかどうかという問題だけだ。


「見つけられなかった……」


「まぁ、結構な量書き込んだからな」


 実際には力が足りず、書き込もうと思った半分も書き込んではいないのだが、それでも量が莫大なのには変わりない。そう言えばユズリアル達も当初は苦労していたなと、かつてを懐かしく思いながら、焦らず、ゆっくりとやればいいと一心へとアドバイスを送るカグラ。


(やばい、慰めてくれるのは素直に嬉しいんだが、同時に切なくなるな……。何ていうか己の不甲斐なさを実感するというか……)


 その慰めによって、救われたような、止め刺されたような不思議な感覚に陥る一心。


(止めよ。考えたら負けだ)


 何とかそう己に言い聞かせて、気を取り直す。やる事はまだいくつか残っている。


「取り敢えず、イメージをしっかり固めると、威力も安定すると考えて大丈夫?」


「うむ。それで問題ないはずじゃ」


 ならばとりあえず昼間の戦闘に関しては解決でいいかと己に言い聞かせ、後はイメージトレーニングや何度か行使を繰り返すことでイメージを定着化させることを考える。さすがにこの時間帯に実際に魔法を練習する気にはならないが……。


「となると本題は触媒に関してか……結果的にだけど、こっちが主目的になったな……」


 そう呟くと、一心は幾つかの木を叩いたり、表皮を剥がしたりし始める。何をしているかというと、杖を1、2本拵えようとしているのだ。杖は触媒となる魔石か魔結晶をはめ込み、魔法杖とする予定である。というより、そうする必要性が出てきた。


 原因は昼間の戦闘だ。カグラが魔法を使った際、盗賊が触媒無しで魔法を使ったカグラに驚いていた。それに、初めて一心が魔法を行使した時にも、それを見たルウェルとアイリーンが驚き、一心へと詰め寄り、質問責めにするという一幕があった。


 この世界、時代に置いてはその反応が当たり前で、触媒無しで魔法を扱えるのは、カグラのような神や精霊を除けば、神と契約し、体内に魔力炉を持つ存在だけだ。そして現状、神との契約を成しているのは一心ただ一人。


 無論その特異性も、それが広まった際の面倒ごとも理解出来ている一心は、己の使う分の魔法杖は用意していた。しかしカグラの分は失念していたのだ。彼女が神の身なることを知っている一心としては、カグラが触媒を必要としないことが余りにも当然のこと過ぎて、逆に気づかなかったのだ。


 そんな訳で、これから先の事を思えば、カグラの分の魔法杖を早急に用意しなければならない訳だ。


「これがいいかな……」


 幾つかの候補から、最も密度の濃い木を選ぶと、一心は周りに気を使いながら静かに木を切り始める。無論、ノコギリなどは使わない。今回は実験も込めて、高圧縮の水で切断する。一般にウォータージェットや、ウォーターカッターと呼ばれるやつだ。


「ほほう、水にそのような使い方があったとは……正直驚きじゃな。しかし何故水を使ったのじゃ? 切るだけならば風でも良かろうに」


 さっそく質問してくるカグラ。彼女は意外と好奇心が強い。己の知らないことや、目新しいものを見ると、その原理や、意義を知りだがった。


 今回もまた、水で硬い物を切るという物珍しさに興味を示し、同時に切るのに最も適した属性は風だという己の感覚から、わざわざ水を使うことの意義、もしくは理由を知りたがった。


「何でって言われてもな……、俺の世界では割と知られてる技法だし、切れ味も鋭い。あとは割と加工の自由度が高いから……かな」


「切れ味鋭い? 水がか?」


「うん。水はこの世で最も切れ味が鋭いって説がある。まあ、諸説あるだろうし、都市伝説的なものかも知れないけど、でも実際に金属とか、ダイアモンドの加工も出来るから、あながちデタラメというわけでもないと思う。で、取り敢えず魔法で再現したらどうなるかなと」


「なるほど。それでやってみたら出来てしまったと」


「そういうこと」


 思ったよりも上手くいったと一心。満足気である。一方カグラは、未だ水で木が切れるというのが不思議なようで、切断面を試す眺めつしていた。


「水がのぉ。ちぃと信じられんが、しかし実際に切れておるしな。切れ味も……これまた凄いな」


 木の断面を見て、その滑らかな切れ味に感心するカグラ。


 この時、彼女はもちろん、一心自身も知らぬことであったが、一心の認識には過ちがあった。


 厳密に言えば、ウォーターカッターではダイアモンドは切れないのだ。それどころかウォーターカッターは本来、金属などの硬質物の加工には向かない。木に関しては非硬質物なのでそもそも問題は無いのだが、しかし、では何故一心はそんな勘違いをしていたのか。


 実際には、これは勘違いという程のものではなかった。


 アブレシブジェット加工というものがある。ウォーターカッターに研磨材を混ぜて、切断力を高めたものだ。これは一心が言ったように、金属もダイアモンドも加工、切断することが出来る。但し、コストが掛かるのと、騒音が凄いという欠点があった。


 一心の中で、このアブレシブジェットと、ウォーターカッターが、ごちゃ混ぜになっていたのだ。その結果生まれたのが、魔法版ウォーターカッターである。


 イメージ通り、金属でもダイアモンドでも加工出来る切断力を持ち、但し水だけで構成されている為、騒音は無し。魔法なのでそもそもコストはかからないという、ちょっととんでも仕様である。まさに偶然の産物。知らぬが故に出来た産物である。


「カグラってさ」


「うん?」


 手を休めぬままカグラへと声を掛ける一心。しかし切断面の手触りを確認するのに一生懸命なカグラ。自然と生返事になった。


「神様なのに、以外と知らないことも多いよな?」


「ほっとけ。というか、全てを知る存在など、この世に存在するはずなかろうが?」


 しかし一心がそう言うと、流石に気になったのか、顔を上げ、呆れたような眼差しを向けてきた。


「そうなの? 地球の神様って全知全能とか言ったりするけど……」


「あのな一心。そりゃ、人間には出来ないようなことも出来るし、人より遥かに長い時も生きる。んで、人より長く生きとりゃ、そりゃ色んなことを知るし、経験もする。しかしそれだけじゃよ。加えて限りなく不老に近いからの、人の目から見たら全能で全知に見えるかもしれん。もっとも、そうであったら恐ろしと儂は思うがの」


「恐ろしい?」


 全知全能の存在。それはある種の野望の究極形ではないか。不老不死と並び、古来から人が追い求めてきた……少なくとも一心はそう考えている。求めこそすれ、何故それが恐ろしいということになるのか……


「出来ないことはなく、知らぬものはない。凄いとは思うけど、なんで恐ろしんだ?」


 実際に、思ったことをそう口にする。


 一心とて一人の男だ。強者で在りたいと思うし、博識でありたいとも思う。強き者や、良く知る者の周りには人が集まるし、他人からの尊敬も受けられる。そう成りたいと密かに思う自分がいることを、一心は自覚していた。


「出来ないことが無いということは、やること成すことが全て、出来て当たり前ということだ。そこには努力も過程も無いじゃろう。出来たことに対する感動も、興奮も、そして

喜びもな。全知についても同様。知らぬものが無ければ、見ることやること全てが新鮮味を失い、物珍しさも、知る楽しみも無くなる。それは恐ろしいほどつまらぬと思わんか?」


「ん~~ 言われてみたら……そう思わないことも無いかも」


「じゃろう? まぁ最も、こんな話をしたところで、実際問題として儂は全知にも、全能にも程遠い。今後そうなる予定も、そもそもそこに到達出来るとも思っておらん。議論自体があまり意味の無いものじゃがな」


「それもまたごもっとも。ま、興味深い話題ではあったけどね」


 そう言ってから一心は立ち上がる。その手には2本の杖が握られていた。


「だいぶ手際が良くなったのぉ」


「まぁね」


 手にある杖を素早く見てとったカグラが感心の声を上げる。


 話し、カグラへと注意を向けながら、しかし作業の効率も、正確さも微塵も落とさない。それは等しく、一心が物作りに慣れてきた証。そして魔法工学士として確かに成長している証拠だった。


「さて、帰りますか」


「そうじゃな。儂は兎も角、お主はそろそろ寝んと明日に響くじゃろうて」


「まぁ、確かに。全然眠くないけどさっ」


 最後に、一心は現状で可能なだけ細く、密度を濃くした水流を近くの木に向けて放った。それは、なんともなしに行った行動で、同時に軽い気持ちで行った実験であった。


「げ、」


 但し、その結果は一心を大いに驚かせ、その顔を盛大にしかめさせるものだった。


「これは……色んな意味でやばかったか」


 妙に使い勝手が良く、切れ味も抜群。作業がスムーズに進み、短時間で杖を2本仕上げることが出来たその原動力。その威力は一心の想像を遥かに超えるものだった。


「これも秘匿技術……だよな」


 周りにひび割れを起こすことなく、綺麗に貫通したウォーターカッターは、更にその後ろの木を数本、同じように貫通していた。綺麗な貫通痕を前に、改めて魔法の万能さを感じる一心。ただし、内心穏やかではない。


(減衰率や拡散率の問題は無視されてるのか?)


 地球の技術体系では欠点となっていた2つの要素。これがあったことで、高圧水流は、長く伸ばすことが困難であり、よって使い道も限られていた。しかしこの世界の魔法ではそれらの2つは無視されているのか、高圧水流は意図もたやすく伸び、威力を保った。これが意味するところは、武器としての転用が効くということだ。しかも扱うのが水なので後には残らず、外相も細い鋭穴痕だけ。非常に暗殺向きで、しかもこれを知らない限り恐らく凶器として認識されない。


(氷や風で代用できるか……いや、無理だな)


 氷は細く丸くしたところで強度という問題がある。風に関しては、そもそも扱うのが液体でも個体でもなく気体なので、まず安定性に欠けた。


(やばい、絶対これやばい……でも便利だったよな?)


 人前で使わないことは勿論だが、いっそのこと今後一切使わない方が……。そう考えたが、しかし先ほどの作業を思い出して、それが無理だと悟る。


 とにかく扱い易いし、作業効率も捗る。何より便利だ。今後一切使わないのは、恐らく無理だった。


「全く、飽きさせん奴よの……」


 隣ではカグラもまた呆れたような、されど嬉しそうな表情をしている。


「秘匿技術、秘匿魔法ばかりが増えていく……なぜだ」


 杖の出来栄えは納得のいくもの。ウォーターカッターの実験も、思った以上の成果を発揮。しかし、思った以上過ぎて逆に問題。何とも言えず、果たして喜ぶべきか、嘆くべきか判断のつかない一心であった。






今後の目標を・・・・・・目指すは、とりあえずお気に入り登録50、

PV30000といったところでしょうか。よろしくお願いいたします!!

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