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魔法使いの恋愛事情  作者: アルケニア
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謎の少女と悩む少年

魔法の科学的根拠の続きですが、章ごとに見直して投稿するつもりなので連載にしました。前よりバトル要素が減ってますがメインが一応、恋愛なのでそこはすみません。

 研究と言うのはどれだけ多くの人と行っていても何かを探し求めるのは、求道者であるという事は、基本的に孤独なものである。それを求めろとは言わないが、知るべきだとは思う。だからこそ、そうした研究で出会う事の出来る人と出会えたなら、それは一生の友となりえる。_せんせい


 放課後のMSP、多くの生徒は部活に向かい。外のグラウンドに向かう者、校内で魔法の研究に勤しむ者、普通に遊びに行く者、そして、シモンやガロア、エミリーにボクも遊びに行こうと荷物の整理に自分のロッカーに向かっていた。

「しかし、また補習だなんて凄いね。ガロア」

 ガロアは相変らずの補習に追われていた。ほとんど自業自得と言っていい理由で。

「うるせえ、戦闘の方が大事だろ。俺は軍人になるんだし」

「あんたねえ。軍人だって普通に色々知らなきゃダメでしょ」

 エミリーがため息交じりにそう言った。

「ガロア馬鹿だからねえ」

 ボクは無邪気な笑顔でガロアを馬鹿にした。

「お前なあ、お前みたいな奴がなんで頭いいんだよ。シモン並みじゃん」

 ガロアがボクを見ながら言う。

「そうだねえ、シモンといつも一緒に勉強してるもんね」

 ボクはシモンの方を向いて言う

「すごいね、ガロア。なんであんな彼らはナチュラルにのろけてんの」

 エミリーが良い顔でガロアに言った。

「俺に聞くな、俺に。相変わらずシモンは恥ずかしがって先に行っちまってるしな」

「でも、恥ずかしがるってことはシモンもまんざらじゃないんじゃない」

「えっ、なんで先行っちゃうのシモン、まってよ」

 先にロッカーに着いたシモンが自分のロッカーを開けると中から一通の手紙が出てきた。

「何だこれ」

 シモンはその手紙がなんなのか。まじまじと観察していた。

「なにそれ、シモン」

 後を追っていたボクがシモンが握っている手紙を見つけた。

「ああ、ボクか。いや、何か入ってたんだよ」

 ガロア達もシモンに追い付く。

「なんだそれ」

「分からない、なんだろう」

「ねえねえ、もしかしてそれってラブレターじゃない」

 エミリーが楽しそうな声を上げる。

「・・・・・。いやいや、それはないって」

「だったら、貸してみろって」

 そう言うとガロアはシモンからその手紙を奪い取った。

「ちょっと」

「まあまあ、いいじゃなないシモン」

「そうそういいじゃないシモン」

 ボクがエミリーの真似をして言った。

「少し話したい事があるので、今日の放課後、第2体育館にくれませんか。待ってます。ロザリンド」

 ガロアが手紙の内容を読んだ。

「これ、本物のラブレターね」

 驚きと喜びをミックスした顔でエミリーが言った。

「ラブレター?」

 なにそれとボクが説明を求めてガロアを見る

「愛を語る手紙のことだよ、ボク」

 ガロアはそれに答えると手紙をまじまじと見つめていた。

「どうしよう」

 シモンはいきなりのその出来事に驚きが大きく、その驚きをエミリーたちに吐露する。

「どうしようって、行くしかないでしょ」

「そうだよね」

「心配しなくても、俺たちが遠くから見守っていてやるよ」

 ガロアはにやにやとした顔つきでシモンに手紙を返した。

「・・・。ありがとう」

 呆れたような顔で手紙をシモンは受け取る。

「もう放課後だし、さっさと行かないと」

「そうだね。・・・楽しそうだね、ガロア、エミリー」

「当たり前だろ」「当たり前でしょ」

 ガロアとエミリーはにこやかにそう言い放った。



 第2体育館、第2体育館と言う割には最も学校の本館から遠い上に基本的に実習でしか使用されないために放課後はほとんど人がいない。

 待ち合わせの第2体育館前で待っているシモンを遠くの別館の空き教室からガロア達が見守っていた。

「実際、どうなんだろうな、ロザリンドってどういう奴なんだ」

 ガロアは隣のエミリーに自分の疑問を投げかける。

「私の知る限り無口な子って感じ、同じクラスだけど話したことないし、かわいいというより美人って感じかな」

「へえ、俺の聞いたところミステリアスな子って聞いたな」

「ミステリアスなんて、要は何考えてるか分かんない子ってことでしょ」

「そういうなよ。ミステリアスでいいじゃん」

 ガロアとエミリーの恋愛談義の中、ボクはシモンのいる方をしっかりと見ていた。

「ボク的には心配か。シモンが取られちゃうのが」

「分からないけど、シモンは大丈夫だよ」



 シモンはしばらく第2体育館の周りをぶらぶらしていた。すると。

「ごめんなさい。こちらが頼んでいるのに待たせてしまって、先生に仕事を頼まれてしまって」

 シモンの前に、肩まで伸びた長髪、黒髪の美少女の姿があった。彼女はシモンを第2体育館の裏手にある森の中にシモンを誘導した。

(えっ、森の中って)

「そんな心配しないで、貴方の期待する様なことをするつもりはないから」

ロザリンドは笑顔でシモンに語りかける。

「なんか、ごめんなさい」

 シモンは自分が抱いた邪な感情を罪悪感で上書きした。

「まあ、気にしないで。それより私の手紙を読んでくれたと思うんだけど」

ロザリンドはときおり自分の指を触りながらシモンに語りかける。

「うん。・・・それで話と言うのは」

「それについてはあなたの想像する通りと思ってくれて間違いないわ」

「それって」

 シモンは驚いた顔の後、喜びが閉じ込めるように手に力を入れ拳を作った。

「そうよ。あなたの事が好きなの。私と付き合っていただきたいんだけど」

 ロザリンドは真正面からシモンの顔を見つめてそう言い放った。

「・・・・・・」

 思った以上の攻撃にシモンは止まっていた。感情の激流を受け取った経験のあるシモンではあったが、ダメージに対する耐性はあってもこんな方向からの攻撃には耐性なんてない。

「答えは急がなくてもいいわ」

 ロザリンドは冷静にそう言うと、後ろを向いてすぐに立ち去ろうとした。

「理由を聞いてもいいかな」

 シモンは冷静さを少し取り戻し、ふと浮かんだ疑問を口にした。

「理由?そうね、非常に単純よ。あなたが魔導師ヴェルナ―を倒したと聞いてね」

 立ち去ろうとしたロザリンドは再び振り向くとシモンの疑問に答える。

「なんで、知ってるの」

「エミリーって子がいろんなところで話してたからね」

「エミリーー・・・。それに勘違いしてるみたいだけど、ヴェルナ―さんを倒した時はボクが協力してくれたからだから」

「それも聞いてるわ。知ってるかもしれないけど、私のパパも魔導師なのよ。だからこそ、魔導師に立ち向かうって事の意味は知っているつもりよ。その勇気だけでも、一人の女が男に惚れるのは十分だと思うけど」

 ロザリンドはシモンの誤解にただただ答えていく。

「いやいや、事実かどうかも分からないのに、こんなに嘘っぽい話なのに」

 シモンは納得いかずに大げさな動作を取り、訴えかける。

「でも、どうやら本当の話みたいじゃない。それに恋愛なんて最初は憧れのようなものから来るものなんだから良い経験ってことで良いと思うのだけど」

「そんなこと。流石にちゃんと考えたいし」

「そう。思っていた以上に真面目な性格なのね。でも、新しい経験をするのも面白いと思うけれど」

 対して、ロザリンドはシモンの感情を振り払うようにそれに答える。

「そんな君を利用する様な事」

 シモンは理解しかねるといった様子でロザリンドを見ながら言った。

「利用ね。知るためには他人を犠牲にすることも必要だと思うわ。知ることは好きなんでしょう」

 しかし、ロザリンドはそのシモンの表情にもたんたんと自分の主張を並べていく。

「なんでそれを」

「分かるわよ。あなたの顔が言っているもの」

「そんなこと・・・」



 ガロア達はシモンが視界から消えてから、しばらく、ロザリンドの事を話していた。

「ロザリンドって、確か魔導師の娘って聞いたけど誰の娘なのかな」

 ガロアとエミリーは空き教室の椅子に座って語っていた。ボクは見えなくなったシモンの影をまだ追っていた。

「そうなのか。でも、一般に知られずに魔導師になっている人もいるって聞いてるが」

 最強の称号と同値の魔導師だが、その名前を知る者は多いが一般に知られているのはヴェルナ―とトマス、ソフィくらいのものである。

「でも、魔導師って9人しかいないって聞いたよ」

 ボクはまだシモンの跡を目で追っていたが時折、知っている知識をガロア達に吐き出していた。

「そうだけど、魔導師の全体の数はネットとかを中心に情報が出てきてるらしいの」

 当然だが、魔導師の実態や細かな情報はその多くが公開されておらず大抵はインターネットなどの憶測から判断するしかないのが普通である。

「ネットって、正しいのかその情報」

 ガロアはエミリーに目で訴えかける。

「そう言われると、絶対とは言えないけどおおよそはそんなものって聞いてるわ」

 エミリーは一瞬困った表情をのぞかせた後、それに答えた。

「そういや、お前のお母さん、魔導師だったな」

「まあね。でも、お母さんも正しいかは分からないみたいだけど」

 そんな話をしていると、シモンが戻って来た。

「どうだった。やっぱ、付き合ってくださいとか言われたか」

 にやにやとガロアはシモンに語りかける。

「・・・・、うん」

 シモンはそれに何とも言えない表情でうなづいた。

「本当。返事は、返事は」

 椅子から飛び上がって、エミリーがシモンに詳細を求める。

「テンション高いねえ、エミリー。まあ、保留って事にしてもらった」

「まあ、流石にすぐには答えられないよな」

 ちょっとがっかりしながら、ガロアはシモンをフォローした。

「でも、なんか好きになった理由がねえ」

 シモンはガロア達にロザリンドがシモンを好きになった理由を話した。

「凄い理由ね。・・・うん。変わった人とは思ってたけど、想像以上だったみたい」

 驚いた表情でエミリーは素直にそう答える。

「確かにな。でも、分からなくはないな。実際、魔導師に戦い挑んで何があったにしろ勝ったってのは魅力的なんじゃね」

「分かんないなあ。そんなものかなあ」

 エミリーはどうにも理解できないといった表情だった。

「お前は親が魔導師だから、そんなことが言えんだって」

「でも、どうしようか」

 シモンはため息交じりに言葉を吐き出した。

「迷ってるんだな」

「まあ、告白されたのなんて初めてだし真剣に考えてみようかと、そう言う事で恋愛について教えて」

 シモンは手を合わせてガロア達に頼み込んだ。

「じゃあ、ガロア。補習の勉強しますか」

 エミリーはガロアにアイコンタクトをガロアに送る。

「そうだなあ。やるか。じゃあ、俺らはこれで。まあ、頑張れよ」

 ほとんど棒読みでガロアはそう言った。

「じゃあね、シモン。頑張ってね」

 ガロアとエミリーは急いで図書室に向かって行った。

(あれ。露骨に無視された)

「シモン。どうするの」

 さっきまで黙っていたボクがシモンの方を向いて話し始めた。

「どうしようかとかはもうちょっと考えてみる。取りあえず、二人には聞けそうにないからね。ダメもとでトマスにでも聞いてみるかな」



 トマス宅、ガロアと勉強した時に訪れたヴェルナ―宅と同様に大きい家だった。ヴェルナ―の家ほどではないにしろ大きな家、その中の客間にシモンとトマスの姿があった。

「お前が尋ねてくるなんて珍しいな。真剣な面持ちだから、喧嘩でもしたのか」

 トマスは笑いかけながらシモンにそう言った。

「違う。・・・。告白されたんだよ」

 シモンはロザリンドに告白されたことをトマスに話した。

「ふーん。それで俺に相談ってか。あのなあ、分かっていると思うが俺はこんな人間だぜ。お前たちのするような純粋な恋愛なんて経験ねえよ」

 トマスは筋骨隆々な男だ。筋肉が体を発達させたような身長二メートルな肉食獣のような男だ。

「そうだよね。そんな気はしていたんだけど」

 シモンもトマスの風貌を改めて確認して心底トマスの言っている事の正しさを実感した。

「そう言う事はヴェルナ―の奴に聞けよ」

「ヴェルナ―さんはそう言う経験が」

「あいつはもてるからな。少なくても、俺よりかは参考になるだろ」

「そうなんだ。じゃあ、聞いてみるよ。ありがとう」

「ああ、じゃあな」

 シモンはトマス宅を出た。

「あいつがねえ。ボクの奴はどうするやら」

 トマスは奥の部屋に戻っていった。



 ヴェルナ―宅前、シモンはヴェルナ―宅前でうろうろしていた。

(よく考えたら、ヴェルナ―さん忙しいからな。いるかな)

「どうしました」

 シモンにヴェルナ―のところのメイドが話しかけてきた。

「ああ、メイドさん。実はヴェルナ―さんに相談があって来たんですが」

「ヴェルナ―様でしたら、いらっしゃいますよ。なんでしたら、お時間があるか聞いてみましょうか」

「すいません。お願いします」

 メイドさんはヴェルナ―宅に入っていった。



 しばらくして、メイドさんが戻って来た。

「ヴェルナ―様がお会いになるようです」

「ありがとうございます」

 相変わらず庭園に噴水、城のような敷地の中を通ってメイドさんは客間に通された。客間には白いローブを着たヴェルナ―の姿があった。

「シモン君、久しぶりです。私に相談と言う事ですがガロアかエミリーさんと喧嘩でもしましたか」

 ヴェルナ―はシモンに客間のソファーに座るように促しながらそう言った。

「いや、喧嘩とかではなく。・・・・。実は告白されて」

 シモンは軽くお辞儀してソファーに腰掛けた。

「ほう。ボクさんにですか」

「いや、彼女ではなくて違う子にです」

「なるほど、それでは恋愛の相談と言う事ですか。しかし、それでしたらガロアかエミリーさんに相談してみればいいのでは」

「いえ、なんか恋愛の相談をしようとするとなぜか避けられて」

「・・・。はは、そうですか。まだ、気恥ずかしいのでしょうね」

 ヴェルナ―はなるほどと一人納得しでほほえんだ。

「なんか、あったんですか」

「いえ、こっちのことです。それでは、告白してきた子の事を教えていただけますか」

 シモンはロザリンドの事を話した。

「なるほど、変わった理由ですね」

「そうですよね」

 シモンは理解できないと言う表情でヴェルナ―に訴えかけた。

「でも、大抵、初めの恋愛はそんなものですよ」

 ヴェルナ―はゆっくりと語りかける。

「そんなもんですか」

 それでも、シモンは納得できないと目で訴える。

「そんなものです。好きなんてはっきりと言える相手に出会える人なんて少ないんですよ」

 ヴェルナ―はそれでも変わらずゆっくりと意見を述べていく。

「・・・・。なんかショックです」

 シモンはその言葉を受け取ると悲しそうな表情をのぞかせた。

「まあ、出会えることもありますけど、実際身近に出会えた人がいますよ」

「誰です」

 シモンはふと湧いたヴェルナ―の言葉に反応したようにそれに答えた。

「ガロアとエミリーさんですよ」

「やっぱり、付き合ってたんですね、あの二人」

 納得と少しの驚きをシモンは言葉にした。

「想像通りだと思いますが、あの二人は付き合ってますよ。しかし、シモン君の話を聞く限りではまだ、気恥ずかしいみたいですけど」

「へえ、それで避けられたんですね」

 なるほどとシモンは納得した。

「そう言う事でしょう。まあ、参考にもなるでしょうし、こっそり二人の恋愛模様を話してさしあげましょう」

 ヴェルナ―は無邪気な笑みを含ませてそう言った。

「本当ですか」

「ええ、二人には内緒ですよ」

 


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