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隣のあの子  作者: yui
9/14

*最後の最高の瞬間

1週間経ち、夏休みも残り4分の1くらいになってしまった。あれから葛西は塾に来ていない。立石は、気分変えて地元の図書館で勉強してるってメール来たから大丈夫って言ってたけど、あの涙を思い出すと不安でいてもたってもいられなくなる。

けれど、今日は葛西に会える。8月の初めくらいから、夏休みらしいことしたいってことで塾のメンバーで花火をやることになっていて、それが今日なのだ。立石が昨日確認メールを送ったら、ちゃんと来るって返事が来たらしい。



午後7時、近くの川辺に塾の自習室にいたメンバーで向かう。約束の場所には既に何人か集まっていて、葛西もいた。

「七菜〜!久しぶり!」

「咲!さっちー!久しぶり!」

「もーなんで来なかったの?」

「定期切れちゃって面倒になっちゃってさ」

「なにそれー」

久しぶりの再開に笑い声が絶えない。葛西は変わらず明るい笑顔で、俺まで嬉しくなる。

「じゃあ始めるかー」村沢の声にみなが賛同し、バケツや花火が用意される。

「じゃあまず俺のに火付けるから、どんどんとってってー」

村沢の花火に火が付く。思ったより明るく光ってとてもきれいだった。みながどんどん自分の花火に火をつけていき、23人全員の花火が明るく輝く。花火は大量にあって、消えるとすぐ付けるの繰り返し。勉強から解放されて久しぶりに外で遊んだからか、みないつも以上にわいわい盛り上がり、写真を取り合う。

「小高、火ちょうだい」

声がして振り向くと、葛西だった。話すのはあの日以来だから正直動揺したが平静を繕う。

「いいよ、はい」

「ありがとう」

葛西の花火に火がつく。花火の灯りに照らされた横顔はとてもきれいだった。

「わーきれい!さっきのと色が違う!」

「村沢がめっちゃ種類買ってきたらしいよ」

「花火よくやるの?」

「村沢は修学旅行でやったらしい。俺はすげぇ久しぶり」

「わたしも!最後にやったのは多分中学の時だな」

「村沢さ、修学旅行で花火で大騒ぎして先生に捕まったんだよ」

「え、なにそれ!」

「ホテルの前でネズミ花火ばんばんやって、げんこつ」

「あはは!さすが村沢くん!」

爆笑する葛西の笑顔につられて俺も笑顔になる。最高に楽しかった。

「七菜!小高!写真とろー」

立石の声がして、いつもの6人が集まる。

「はい、チーズ」

光るフラッシュ。

6人の笑顔。

これが、俺が葛西と過ごした、最後で最高の瞬間となった。










あの時俺は七菜がいつもの七菜に戻ったと思ってた。けどあの写真を見るといつも思う。七菜は、これから離れていく距離を知っていたのかもしれないなと。

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