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隣のあの子  作者: yui
8/14

*涙

翌日の昼休み。いつものようにお弁当を広げる。

「七菜、さっそくだけど」と立石が切り出す。何を言い出すのか俺にはすぐ分かった。

「え?」

「翔くん、かっこいいじゃん!」

「は?」

「だからー!七菜、翔くんといい感じだったじゃん!」

葛西はぎくっとした顔で立石と白川を見つめて、それから笑い出した。

「あはは。なんでそうなるのー」

「え、違うの?」

「全然そんなんじゃないって!」

明らかにごまかしてるように見えたが、照れてるようにも見えない。

「えーでも明らかに他の男子より仲良かったじゃん!」

「それはだって…まあ色々?」

「色々?」

「んー色々ったら色々!

でもそんなんじゃない」曖昧だけど、嘘には見えない。少し安堵する。立石たちもそう思ったようで、「ふーん、なんだー」と言って話題は変わった。



***



18時。今日から4日間、理系のやつらは17時から講習会があっていない。コンビニに買い出しに行こうと自習室を出ると、葛西に会った。

「あれ?講習会は?」

葛西も理系だから講習会のはずだった。

「わたし明後日予定があって、別の日程にしたの」

「へぇそうなんだ」

「コンビニ?」

葛西が財布を持った俺の手を見て言った。

「うん」

「じゃあさ……ご飯、その辺に食べにいかない?」

「へ?」

「あ、いや、そこのそば屋の割引券2枚持ってて咲と行こうと思ってたんだけど講習会でさ」

「あぁ!いいよ行こう」 「ほんと?よかった。お腹空いてたんだけどなんかそば屋に1人ってちょっと勇気いるから」

「そう?俺よく行くけど」

「男子はやっぱりそうなんだー。マックとかファミレスならよく行くんだけどね」


そば屋に入り、割引券が使える一番ふつうのそばを頼む。

よく考えたら葛西と2人きりってあの時以来か。そう考えるとドキドキしてしまうから考えるのをやめる。せっかく弾んでいる会話を台無しにしたくない。


「共学だとさ、男子がおごったりするわけ?」

「しないよー!ていうかするわけない」

「やっぱそうか。最近はデートも割り勘なんでしょ?」

「最近はって小高くんおじいさんみたい」

葛西が声をあげて笑う。

「だって男子校って男子しかいないからさ、やりたい放題だし分かんないんだよなー」

「やりたい放題?」

「パンツ一丁でみんなで廊下走ったり」

「なにそれ!」また葛西は爆笑する。

「そんなもんだよ」

「でも、男子校出身の男子って逆に紳士っていうよね。」

「俺とかね」

「へぇ〜小高くん紳士なんだ〜初めて知ったわ〜」

冗談めかして言って2人で笑いあう。

「じゃあ葛西は紳士な人がいいわけ?」

「んーそれもいいけど……安心する人」

「安心?」

「うん。ってわたしもよくわかんないんだけどねー」

「ふーん」

「小高くんは?」

「かわいい子」

「外見!?」

「結局はそうだって」

「夢がないなー」

あきれながら、運ばれてきたそばを食べ始める葛西。

別に嘘じゃない。けど、外見て内面が自然と出ると思うからだ。葛西がそうだったから。



色々な話で盛り上がりながらそばを食べ終え、店を出る。近くに公園があった。葛西は「わーブランコ!ね、ちょっとだけ遊んでいかない?」と言ってブランコに駆け寄りこぎはじめた。俺もあとを追って公園に入る。するとサッカーボールが転がっているのが見えて、遠くの木の幹をめがけて蹴ると当たった。

「すごい!」気づくと葛西はもうブランコを降りていた。

「野球部なのにサッカーもできるの?」

「たまたまだよ。」

そう言いながらボールを拾いに行き、葛西に向かって蹴る。葛西はきれいにボールを止めて、まっすぐけりかえした。

「うまいじゃん」

「まーね」

2人でわーわー無駄に騒ぎながらパスをして、10分くらいしてベンチに座る。

「あー超楽しかった!」

「葛西けっこううまくてびびった」

「小高こそ」

パスをするうちに呼び方が小高にかわってて、少しうれしい。



「今日は、ありがとう。すごい楽しかった」

突然の葛西のお礼に驚く。

「いや、別に……」

「小高ってすごいや」

その声が少し震えていて、焦る。

「こんな楽しいの……久しぶり」

今度はさらに震えた声。

しばらく無言が続き、そして、隣のから小さいながら嗚咽が聞こえてくる。

突然のことになにもできなくて、俺はただただ隣に座っていた。




30分くらい経っただろうか。涙する声も聞こえなくなりそっと隣を見ると、葛西はいつもと変わらない顔で俺を見て、「戻ろ」とつぶやいて、ベンチを立つ。そして、小さな声で「ありがとう」と言うと、歩き出した。

俺はどうすればいいのか分からず、何も触れずにただ横を歩くことしかできなかった。










七菜、また同じ涙1人で流してないよな

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