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隣のあの子  作者: yui
6/14

*至近距離

夏休みが始まって2週間が経った。

あれから葛西も毎日朝から自習室に来るようになり、村沢、杉村、立石、白川、葛西、俺の6人で休み時間や帰りを共にすることが多くなった。夏休みは長いといってもやらなきゃいけないことは多く、短い休み時間はあっという間に終わってしまう。


数学の問題集に区切りがつき、一息つく。時計は15時を指していた。

少し疲れたため、休憩がてら休憩室にコーヒーを買いに行くことにする。



休憩室のドアを開けると、広げたノートの上ですーすーと寝息をたてて寝ている葛西がいた。

とても幸せそうな寝顔と、規則正しいリズムを刻む寝息に惹かれて、つい葛西の前に座る。

ノートにはびっしり計算式が書かれていた。初めて葛西の字をじっくりみるが、書きなぐっているように見えながらも、すごくしっかりした字だった。


休憩室の机は小さく、目の前に座ると距離が縮まる。



寝顔はとてもかわいかった。寝息に合わせて小さくゆっくり上下する小さな肩。少しウェーブする茶色っぽい髪の毛。長いまつ毛。ちょっと赤い頬。薄いピンクの唇。


みればみるほどドキドキした。

鼓動が早くなる。



「俺…葛西のこと……」

ひとりでに呟いた言葉に自分で驚く。


でも、触れたくてたまらなくなり、頬を人差し指でちょんとつついてみる。葛西の規則正しい寝息は乱れることはなく、今度は2、3回少し強くつついた。



「んー」

葛西は目を瞑ったまま顔をしかめ、そしてゆっくり目を開けた。

つついたことがばれたら大変だと思い、椅子を引いて距離を離す。葛西は俺をぼんやりと見つめて、

「あーおだかかぁ」と眠そうに呟いて、大きくのびをした。まだ鼓動が収まらない俺はごまかすように「爆睡だったな」とからかうように言う。


「えーそんな寝てないよー」

「寝てましたー。寝顔の写メいただきー♪」

ほんとは撮ってないけど、からかいたくなって、わざと携帯を手に持って言う。


「えー!うそでしょ!?」

「うそじゃねーよ、まじ♪」

「えー!!消して!消して!」

「いやだねー」

「んじゃあわたしが消す!」

葛西はそう言うと携帯を取ろうとてを伸ばした。俺も葛西が届かない高さに手を伸ばす。

「ちょっと!携帯かしてよー!」

葛西が立ち上がって携帯を取ろうとするので俺も立ち上がって逃げる。

俺より15センチくらい小さな葛西に届くはずがないのに、葛西は手を伸ばして必死に取ろうとしてくる。

「ちっちゃいねー七菜ちゃん」と逃げながらからかう。

「さいてー!いいから携帯貸してよ!」頬を膨らまして怒りながら腕を伸ばす葛西。

その繰り返し。

すると、

背後から葛西が俺の携帯を取ろうとする気配を感じてぱっと振り向いた。

葛西は俺の手にある携帯にてを伸ばした格好だったため、振り向くと、15センチも離れてない所に葛西の顔があった。


みつめあう。


数秒後、お互いぱっと目を反らして、葛西が離れる。

葛西の顔は赤くて、俺は自分の顔も赤くなっているのを感じる。


気まずい沈黙のあと、

「しゃ、写真絶対消しといてね」

と葛西は早口で言うとノートなどを持って出ていってしまった。


一人になって顔の温度が下がってくる。けど、鼓動は収まらない。

あんな至近距離に葛西がいたこともそうだが、

その後の葛西の反応を思い出して。


鼓動が収まるのを待って、冷たいペットボトルを買って額に当てる。




俺、こんなに葛西のことが好きなのか




















今、七菜と俺はあんなに近い距離にいれるだろうか

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