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隣のあの子  作者: yui
2/14

*新たな彼女

あれから一週間がたった。文理は授業が別々なので、この一週間あの子に会う機会はなく、休憩の時に意味もなく塾の中をふらついてみたりしたけれど、会うことはなかった。今日は木曜日。なんとなく気持ちが急いでしまい、授業が始まる20分くらい前に着いてしまった。教室には半分くらい人がいて皆自習していた。俺の隣の席はやはりまだ空で、俺は席につくと単語帳を開いた。

気づくと教室に人だかりができていた。これはいつもの光景なのだが、いつもと違うのは様々な制服の人で構成されてることだ。そしてその中心にはあの子がいた。ついその辺りから聞こえる声に全神経を集中させた。

「でね、担任の男の先生のね、ズボンの後ろのポケットにこっそり鹿せんべい突っ込んだら」あの子の楽しそうな声が聞こえる。「鹿たちが先生のこと追っかけ回しちゃって」笑いを懸命に押さえているようなその声に、思わず視線も向けてしまう。「先生はなんでかわかんないからすごい必死で逃げてて…」まわりはみんなお腹を抱えて爆笑していて、あの子も笑いながら「そのあとめっちゃ怒られちゃった」といたずらっぽい笑顔。まわりの女子たちはみんな違う学校なのに、あの子を中心に楽しそうに笑ってて、クラスの雰囲気が明るかった。皆先週までは大山でも渋川でもないから仲良い友達が少なく休憩中も静かに席に座った人ばかり……でも、女子たちがあの子の話に引き込まれるのがわかる気がする。あの子自身が一番楽しそうに話すから見てて聞いてて楽しくなるんだろう、きっと。


しばらくすると隣の椅子が引かれる。そしてその前の席の子と楽しそうに話しだす。

「いいな修学旅行」

「高三で行くなんて遅いでしょ?変なんだようちの学校」

苦笑気味に、でもやはり楽しそうに言う。

「楽しそうで羨ましいよ!わたしの学校そんな自由じゃないし」

「そうかなーってかわたしが規則把握してないだけかも」

「なんか葛西さんっておもしろいね」

そう言って笑う前の席の子に顔をしかめてあの子が言う。

「かなちゃん!七菜でいいって。わたしさん付け苦手なの。」

いきなり名前で呼ばれたからか、名前で呼んでと言われたからかわからないがかなちゃんと呼ばれた彼女はすごく驚いた顔をしたあと嬉しそうに「うん!」と言ったところで先生が入ってくる。

休憩時間も大山と渋川の塊の視線を分かってるのか分かってないのかまた他の子たちに楽しそうにお土産話。先週とのギャップについていけない俺が杉村たちに聞くと、

「先週葛西が先生に当てられた時にした返答がおもしろくてさ」

いつのまにか"さん"がとれてる。

「そうそう。それでもうなんか素を出すことにしたらしい」

「なんて言ったの?」

「物理わかんなきゃわかんないと思う」

思いだし笑いをする二人にいらっとする。知りたい、あの子のこと。


俺は基本的に人見知りしない。塾の女子にだって普通に話しかけるけど、なんだかあの子にいきなり話しかけることにはなぜか躊躇してしまう。





あのときのような、人が自然と集まる雰囲気は今でもきっと変わっていないだろう。

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