彩萌の昔話1
「奏音先輩♪」
「あら、彩萌じゃない。どうかしたの?」
「いや、たまたま近くを通り過ぎただけですよ。あ、先輩の弓すごく使いやすかったです!ありがとうございます!」
「いやいや、おさがりでごめんね。私が彩萌と同じ頃使った弓だから、もうボロボロだしね。」
「そんなことないですよ♪前の弓より矢を番え易いですし、かなり精密な矢が打てますからね。」
これは3年前、13歳の彩萌と17歳の奏音の物語。
「そういえば使える術増えた?」
「おかげ様です。」
言いながら小さな本を取り出す。
「・・・・・・うん、順調に増えてきたね。いつも通り系統魔法が全然ないけど。」
「あ・・・・・・あははは・・・・・・どうも合わなくて。」
二人が見ているのは通称チューニングブックと呼ばれる魔法書だ。魔法は本当ならば長いコマンドが必要になる。この本に特殊な文字である法則に従った文字を書き込めば特定のフレーズを入力すれば自動的に起動コマンドに変換してくれるという画期的なものだ。
これにより単独では意味不明で覚えづらいコマンドも覚えやすくなる上、整理もしやすい。この本が無ければ魔法は発達しなかったと間違いなく言える。
彩萌のチューニングブックには20ページにわたって奇怪な文字がたくさん記されている。魔法の総数はおよそ19といったところだ。
「うーん・・・・・・そろそろアレを教えても問題ないかなあ・・・・・・?」
「?何でしょうか?そのアレって?」
先輩は思わぬ一言を告げる。
「オリジナルスペルの作り方。そろそろできそうだしね。」
「なんですか?それ。」
「簡単にいうと世界でただ一つの魔法だよ。」
「へえ・・・・・・。そんなものあるんですね。」
「とりあえず、明日私の作業場来れる?」
「ええ。明日はひまなので。」
「じゃあ、また明日。どこかに行く予定だったんでしょ?いってらっしゃい。」
「あ!しまった!有栖にまた怒られる!」
そういったきり猛ダッシュで走り去る彩萌。
「・・・・・・どんな成長するか楽しみだなあ♪」
番外編その1は彩萌の昔話です。
3年前、彩萌が剣士として新たに転向する様子を描いています。