王都に向かうようです。
次の日になり王都に向かうためソフィアさんに朝早く起こされた私達は、朝食を食べ身支度を整えた。
そして、馬車に乗り王都への道を進む。
(王都ってどんな所なんだろう。)
私はサラの腕の中から馬車の外を覗く。
ルーンとサラは、どちらが私を抱いて馬車に乗るか言い争っていたためそれを見兼ねたアルトさんがじゃんけんのようなもので決めさせた。
その勝負の勝者であるサラは満面の笑みで私を抱えて馬車に乗り込み、ルーンはしょぼんとしながら乗り込んだ。
だが、ルーンが落ち込んでいたのも少しの間だけで今は森しか見えない窓の外をキラキラした目で眺めている。
2人は馬車に乗るのが初めてらしく、それに興奮しているようだ。
(それにしても森が続くな。)
窓の外の景色は時々村が遠くに見えるほかはほとんど木である。
ルーン達の住んでいる村も含め、モンスターの生息する森近辺の村の周辺にはカヤと呼ばれる鋭く固い葉を持つ木とその内側にシナモマムという、モンスターが嫌う匂いを出す木がある。
そのため村にいればモンスターに襲われる心配は無いそうだ。
「‘おうと’ってどんなところなの?」
「色々な店や物があって面白いぞ。」
王都は、沢山の店や物が集まっているらしい。
(騎士団に行く前に王都見て回りたいな。
)
ルーンとサラがアルトさんを質問攻めにしている間も馬車は走り続ける。
日が傾き空が茜色に染まる頃、漸く家々の連なりが見え始めて王都の中心街に着く頃にはすっかり日が暮れてしまった。
でも、王都にはアルトさんの友人が経営している宿屋が有ったため遅くでもチェックインする事が出来き、そこで夕飯を取ることになった。
「あしたはいろんなおみせみてまわるの?」
ルーンが夕飯の美味しいポテトサラダ(私の分もアルトさんがお願いしてくれた)を食べながら言う。
「そうだな、騎士団に行くのは昼過ぎくらいでいいだろう。それまで回るとするか!」
「じゃあ、サラお洋服がみたい!」
「ぼく、おかしやさんにいきたい!」
『にゃん!(甘いもの!)』
どうやら騎士団に行くまで猶予がいるらしい。
(騎士団に行ったら見て回る事も出来なくなるかもな。考えるほど騎士団に行きたくなくなってくるし、なんか暗くなってくるわ。やめ、やめ。)
騎士団へ行ってからなんて考えは暗くなるだけだと即刻打ち切る。
折角ルーン達と居られる時間があるのだから、今は楽しい事だけを考えていたい。
「パパ、騎士団ってどんな人たちなの?」
ふいに、サラが私が考えるのを打ち切りったばかりの騎士団の事を聞いた。
「国を守ってくれている人達だぞ。人を襲おうとするモンスターを倒してくれたり、国の平和を守ってくれている偉い人達だ。」
「フィーアのこと、たいせつにしてくれるかな。」
「大丈夫だ、ルーン。騎士は強くて立派な人にしかなれないからな、フィーアの事も大切にしてくれる。」
(会ってもいない人達がどんな人か勝手考えて暗くなるなんて変だよね。むしろ、騎士だしきっと逞しい体つきの男前に違いない!)
『にゃうー(大丈夫だよね。)』
その日はルーンとサラと一緒にアルトさんに腕枕をしてもらい、以外と肉付きが良い細マッチョな腕を名一杯堪能した後眠りに着きました。
次の日
一番早く起きたのはルーンでその振動で私が起き、二度寝しようとした所でサラが起きた。(私はそのまま二度寝した。)
アルトさんは疲れていたのかルーン達が起きてからも起きて来なかった。
だが、なかなか起きないアルトさんに痺れを切らしたルーンとサラはお腹へのダイビングし、それにより「グハッ」っと声を上げて目覚めたアルトさんは横で丸まっていた私を抱き抱えてのそのそとベッドから出た。
「……おはよう、二人共。」
「「パパおはよう!」」
子供2人は朝から元気だ。
「パパもう朝だよ!早くおみせいこう!」
「早くお洋服みたいの!」
2人に急かされて支度をするアルトさん。ルーンとサラは私が二度寝をしている間に支度をしていたようで、準備満タンで待ち構えている。
「そんなに急がなくてもお店は逃げたりしないぞ。」
そんな2人を見て苦笑いしながらアルトさんが言った。
アルトさんの支度が整うと夕飯と同じく美味しい朝食を宿の食堂で頂き、早速街に繰り出した。
「いっぱいおみせあるね!」
「パパ、あれなんのおみせなの?」
街に出た子供達はあれこれと指差しながらアルトさんに質問したり、腕を引いてお店に引っ張っていったりしている。
私はというとサラのショルダーバッグの中から周りの人にバレないように外を見ていた。
(結構色々あって面白いな、あれは鎧かな本物を生で見るの初めてだ。騎士いるけど魔法使いとかいるのかな。魔法とかあったら面白そう!使えるようになりたいな!)
武具屋の前を通り、その左隣にあったオリーブという呉服屋に入る。
(言葉は日本語だったから分かったけど、文字は変な形で日本語じゃ無いんだね。文字数は一緒だけど。でもなんかじっと見てたら日本語に見えてきたんだよなー。)
自分の目に翻訳機がついている事が判明しだ。
服屋の中はシンプルだけど可愛い洋服が沢山あり、メンズもある。
サラは奥の方にあったピンクのワンピースが気に入ったようだ。
サラが気に入ったワンピースを買い、次にルーンが行きたがっていたお菓子屋に向かう。
「うわー!いろんなおかしがあるよ!」
「これ、おいしそうね!」
お菓子屋に来た2人のテンションはマックスだ。
色々なお菓子を買ってもらった2人はニコニコと幸せそうな顔で歩く。
「そろそろ昼ごはんだな。」
お昼時になり皆丁度お腹が空いたため近くの飲食店に入り、食事をとる。
カフェのような店内でレトロな雰囲気があって落ち着く店だ。
「じゃあ、騎士団行くか。」
食事を終えると同時にアルトさんが言った。
お店を見て回る楽しさにすっかり夢中になっていた私は一言で現実に引き戻される。
(もうそんな時間か。)
横で二人が寂しそうな顔で俯いていて、
「もう行くの?」
「もうちょっとだけあそんでいちゃダメ?」
と、沈んだ声を出す。
しかし、騎士団に会える時間は限られているためアルトさんは私の入ったショルダーバッグを提げ、2人の手を引き騎士団に向かう。
騎士団は王宮の敷地内にある王族専属の騎士団、白の騎士団の他に王都内を守る紅の騎士団、地方を守る蒼の騎士団があるらしい。
そして、今向かっているのは紅の騎士団だ。
「ぼく、フィーアと離れたくないよ。」
「サラだって…。」
歩きながら呟く2人にアルトさんは困ったような悲しそうな複雑な顔になる。
それでも、歩き続けしばらくして紅の騎士団の門にたどり着いた。
門には紅いラインの入った白コートを着た門番が2人いて、アルトさんはそのうち一方に話しかけ、私をバッグから出し見せた。
私を見た門番は緑の石を取り出してそれに話し掛けた後、私達を門の中に入るよう促す。
さっきは高い塀に囲まれて上手く見えなかったが紅の騎士団の建物はまるで館のようだった。
御覧下りありがとうございました。
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次回はやっと騎士様登場です。