4.二人の繋がり
シンジ SIDE
これがファーストキスだということに驚き、抄妓さんから説明されたS男性というものの生態にも驚く。
その後、マリコさんのファーストキスの相手になれた喜びで気持ちがいっぱいになる。
「びっくりしましたけど、嬉しいですよ」と私が言う。
「わ、わたしも嬉しかったです」とマリコさんが笑ってくれる。
「ふふふ、よかったわねぇ、二人とも」抄妓さんも笑ってくれている。
私も嬉しくて笑顔がこぼれた。
ぴんぽーんとインターホンがなる。気づいたら営業開始時間を過ぎていたようだ。
「あら、先生。いらっしゃい」抄妓さんが言って、50代くらいのおじさんが入ってくる。
「こちら、緊縛師の國村城先生。マリコさんから聞いてるけど、シンジさんが見てくれた、私をモデルに縛って写真を撮ってくれた人よ」そう説明してくれた。
普通の人、第一印象はそんなシンプルなもの。あの写真に見えたような特別な感じはしなかった。
「はじめまして、シンジと言います。先生の写真を見て緊縛に憧れて、ここに来ました」と話しかける。
「そう言ってもらえると、嬉しいですね。ありがとうございます」そういって、先生は深々と頭を下げた。礼儀正しい人だなと思った。
「あ、先生、この二人、さっき付き合うことになったのよ。」と私達二人を見てくる。
「おや、それはおめでとう。お幸せにね」そう先生が笑顔で祝福してくれる。
「さて、せっかく先生が来たから、早速シンジさんに生の緊縛を見てもらいましょうか?」抄妓さんが尋ねてくる。
「はい、嬉しいです。生で拝見できるなんて」僕が喜び勇んで答える。
「ただねぇ、私はお店見ないといけないから、今先生が縛るとしたらマリコさんになるわよ。それでも大丈夫?マリコさんは何度も先生に縛られているから今更気にしないとは思うけど」抄妓さんにそう言われてしまう。
「君がそれで嫌な気持ちになると思うなら、無理にすることはないよ。好きな人に他の男性が触れるのを不快に思うのは自然なことだから」そう言って先生は穏やかな顔で私を見つめてくる。この人になら仕方がないかなと自然に思えてきて。
「多少嫉妬はするかもしれませんが、マリコさんに縄がかかった姿も見てみたいです。どうかお願いします」そう僕はお願いしていた。
SIDE END
マリコ SIDE
シンジさんに縄を見てもらう。私は抄妓さんと相談して着物に着替える。緊縛の美しさをわかりやすく日本の美として魅せるにはやはり和装がいいわよね、ということになったのだ。
部屋の奥で待っている先生の前に座ると、一礼して「お願いします」と声をかけて、先生に背を向けて座りなおす。
シンジさんに見られているそう思うと、嬉しいような恥ずかしいような複雑な気持ちになる。その気持ちを見透かしているように、先生の手が私の両手をつかんで、後ろに回す。そして手首に縄がかけられると、先生の手が私の両肩にそっと添えられて、動きが止まる。
安心してという気持ちがその手から伝わってくる気がして、私は落ち着いてくる。こちらをじっと見ているシンジさんと目が合い、私はにっこりと笑っていた。
「見ていてくださいね、縄の素敵なところ」
私からシンジさんに声をかけると、先生が動きだす。
急に動きが早くなり、私の胸の上、そして胸の下と順々に流れるような手さばきで、私の身体にどんどん縄がまわっていく。少しずつ身体の自由が奪われいく。最初はふんわり包まれているようなのに、だんだん自由に動ける場所が少なくなり、真綿で締められるように、じわじわと自由が効かなくなっていく。
胸の前の飾りの縄をギュッと引き絞られた時、自分の気持ちよくなる準備が出来ている、所謂『縄に入る』とか『スイッチが入る』とか、また『縄酔い』とも言われる状態に、自分の心身がなっていることに唐突に気づく。
強い拘束感で無理矢理スイッチを入れるんじゃなくて、気づいたらそうなっている、先生の縄はとても不思議だ。こうなると身体中の感覚が気持ちいいに繋がってしまって、何かされるたびに、吐息が漏れてしまう。
恥ずかしい姿をシンジさんに見られているということに少しの怯えと、ちゃんと見てほしいという気持ちが交錯する。
上半身を縛り終え、私の身体は優しく支えられて床に横たわっていた。
「ほら、彼が見ているよ」そう先生が声をかけてくる。意識させられると余計に恥ずかしくなるけど、私は顔をあげてシンジさんの方を見た。
目が合うと、安心しろというようにシンジさんがニコリと自然な笑顔を見せてくれた。
それを見て私は安心して縄に浸ろう……そう思った。
SIDE END




