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黒い春、そしてその先へ
季節が過ぎ、冬が来た。
蒼は少しだけ明るい服を着るようになった。蓮は時々、笑うようになった。
二人は相変わらず図書室にいる。でも、今ではそこは「逃げ場」ではなく、「居場所」だった。
ある日、蒼がそっと言った。
「俺、蓮のこと……好きだと思う」
蓮は少し驚いた顔をしたあと、ゆっくりと笑った。
「俺も。たぶん、そうだと思う」
二人の傷は、完全には消えない。でも、寄り添えば、少しだけ痛みが和らぐ。
そしてその灰色の世界に、小さな色が差し始める。
——春はもう一度、来る。