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共鳴
六月。梅雨に入り、空はずっと重たい灰色だった。
蒼は、教室で倒れた。
蓮が駆け寄ったときにはすでに保健室へ運ばれていた。蒼の席にあったのは、破られたノートと、「死ね」と書かれた紙切れだった。
蓮は無言でそれを拾い、静かに握りつぶした。
その放課後、誰もいない図書室で、蒼がぽつりと言った。
「本気で、もうやめたかったんだ。でも……思い出した。蓮が言った言葉」
『君が死にたいなら、俺も一緒に行くよ』
「それ、冗談だった?」
蓮は首を横に振った。
「俺、君といるときだけ生きてる気がする。だから……君がいなくなったら、意味がなくなる」
蒼が震える声で言った。
「……生きてるのが、怖い。でも、死ぬのも、もっと怖い。でも、蓮がいるなら、もう少し……歩いてみてもいいのかなって」
蓮はそっと、蒼の手を握った。
「俺が隣にいるから。生きるのが怖いなら、俺と一緒に、怖がろう」