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痩せた神様と太った神様

作者: 小雨川蛙

 

 ある時、痩せた神様の下に太った神様が現れた。

「相変わらず貧乏だな、君は」

「そういう君は相変わらず豪勢だね」

 二人は共に神様でありながら姿形はまるで違った。

 痩せた神様はまるで骨のように痩せ細り、身に纏った衣服はボロボロで肌も見え隠れするほどであるのに対し、太った神様は顔は真ん丸で色が良く、身に纏っている衣服には宝石が散りばめられている。

「君は一体どうしてそんなに豊かなんだい」

「逆に君は一体どうしたらそんなにも貧相なんだい?」

 痩せた神様に問い返して太った神様はそっと下界を覗き込む。

 そこには乞食や病人たちが泣きながら痩せ細った神様に慈悲を請うていた。

「あぁ、可哀想に」

 そう言いながら痩せた神様は彼らに施しを授けた。

 すると、彼らは僅かばかりの救いを得てより一層、痩せた神様に感謝をしていた。

「なるほど。そういうことか」

 太った神様はそう言うと痩せた神様の隣に座って言った。

「君はこんな人々のために自分の力を使っていたのだね」

「だって、それが神様の役目だろう?」

「確かにそうだとも。だが、あんな人々を助けたって自分には何も返ってこないじゃないか」

 そう言うと太った神様は下界を指差す。

 そこには今、まさに処刑されようとしている極悪人が泣きながら神様に慈悲を請うていた。

「いいかい? あんな奴らを救うべきなんだ」

 太った神様はそう言うとその場に雷を落として、処刑台に居た極悪人以外の全員の人間を殺してしまった。

 その横暴に痩せた神様が呆然としていると、下界では極悪人が太った神様に感謝を捧げていた。

 自らの持つ多くの財を捧げるほどに。

 そして、その捧げられた財が太った神様の身体をより一層豊かにしていく。

「ほらね? どれだけの悪人であろうと圧倒的な奇跡が起これば神様を信じて感謝するものさ」

「しかし、それでは困った人々はどうなるんだい? それに、見ろ。案の定この極悪人はまた悪さをして多くの人々を苦しめている」

 心苦しそうに下界を眺めている痩せた神様に対して太った神様は言った。

「そんなこと気にしなくたっていいさ。大切なのは私達に感謝を捧げるか否かだよ。いいかい。忠告をしてあげるが、貧しい人々に施しを与えたって返って来るものはろくなもんじゃないのさ。ならば、開き直って富める人や悪人に施しを与えた方がいいんだ。そうすれば、彼らはとんでもなく丁寧に私達に感謝を捧げてくれる」

 痩せた神様は難しい顔をしながらうーんと唸る。

 どうしたものかと悩み抜いている。

 そんな痩せた神様を見て、太った神様は微笑んで肩を叩いて言った。

「君は優しいな。まぁ、どうするかは任せるよ」

 そう言って太った神様は去っていった。


 痩せた神様が結局どのような選択をしたか。

 それは現代の社会を見てみれば明らかである。

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