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家族か幼馴染か、現実か夢か



 美月に傘を届けた日から数日後の土曜日。外は晴れ渡りまさに絶好の行楽日和だったがオレは相も変わらず机に向かっていた。




 過去の試験問題集と格闘しているのだがどうにも目が滑る。その原因は明らかだった。




 その原因の在処がいる上階に視線を向ける。




「……」




 美月は朝食を済ませた後、再び部屋に閉じこもって出てこなかった。休日はわりとだらしがない生活を送っている姉だが、いつもなら表でテレビを見ながら寝転がっている。珍しいと言えば珍しかった。




 あの日から美月はなんだかよそよそしい。碌に目も合わせないし喋りかけてくる回数も減っている。どうしてあんなことをしたのかと聞くことも出来やしない。




 振り回されるのはいつものことだが流石にあまりいい気はしない。行為自体ではなくその後のことに対してだ。弄ばれているみたいで落ち着かない。




 しばらくすれば元に戻るだろうし美月のことは一旦考えないようにしようとも思ったのだが中々上手くいかない。どうしてもあの日の柔らかい感触のことを思い出してしまう。




「バカ姉貴……」




 人をからかうにしたってなんでこんな受験シーズンにやるんだと毒づきたくなった。




『行ってほしくないよ。私は翼が好きだから』




 あの言葉が本当なら、本当に美月がオレにいて欲しいと思っているのならどうすればいいのだろう。




 分からない。好きとかそういうのは抜きにしても美月はオレの大切な家族だ。人の価値を比較するなんて傲慢だが、もし唯と天秤にかけるとしてもどちらかを選ぶことなんて出来なかった。




 美月を悲しませることなんてオレだってしたくない。でも唯もオレにとって大切で、また会える可能性が僅かでもあるならそれに賭けずにはいられなかった。




「……」




 ペンを回しながらそのことをずっと考えていると、足音とコーヒーのいい香りがした。




「翼、頑張ってるみたいね」




 顔を上げるとそこにはお盆を持っている母親の日葵がいた。

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