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もしもあの日、雨が強かったら その二

 美月が指定した待ち合わせ場所は校舎の出入り口前だった。本当なら校門より奥には入りたくなかったが雨だから仕方ない。校舎から校門までの間で濡れては元も子もないから。

 しかし、宣言通り十分で着いたというのに美月の姿はまだ見えなかった。自分から呼びつけておいてこれとは。全くもって勝手が過ぎる。

 しかし馴染みのない学校というものはここまで落ち着かないものか。さっきから在校生の怪訝そうな目が痛い。

 壁にもたれかかりながらじっと待っていると言い争うような声が聞こえてきた。

「ねえいい加減にして新田君。私あなたには興味が持てないって何度も言ったでしょ」

「いいじゃん。一回遊びに行こうって言ってるだけだろ。なんでそんなに無下にするんだよ」

 美月の声だ。どうにも同級生に言い寄られているらしい。贔屓目抜きに見ても美月は整った容姿をしているから特に不思議ではなかったのだが実際にそういう場面に出くわすとは思っていなかった。

 入り口から少し足を踏み入れて様子を窺ってみると制服を着崩した男がポケットに手を突っ込みながら美月に絡んでいる。

「その程度でも願い下げって言ってんの。私、そんなに難しいこと言ってる?」

 なんと痛烈な。家では暴君。外では淑女を信条にしている美月にここまで言わせるとは。新田という男もなかなかやりおる。流石にこれで引き下がると思ったのだが

「一度だけだって~頼むよ~。そうだ帰りだけでもさ、傘持ってないんだろ」

 新田はまるで堪えていないようでなおも美月に縋り付いていた。タフなのかそれとも本気で嫌われていることに気づいていないのか。

 あそこまで嫌がっているのなら助け舟を出すべきだろうが、恋愛というものは複雑でああ見えて本当は新田某のことを内心では憎からず思っている可能性もある。割って入るのは───

 美月が誰かを好きになっているかもしれない、その可能性が頭を過ぎった時、微かに胸の奥に痛みが走った。

 姉に対してそういう感情を持っているとかそんなことは決してない筈だが、第一他に心を決めた女の子がいるんだし、モヤモヤとした不快感が胸にこびりついてとれない。

 こんなところに来るんじゃなかった、と愚痴を零しそうになった時美月と目が合った。

「あ、翼!」

 美月の顰めっ面がパッと無邪気な笑顔に変わってこちらの傍に駆けてくる。オレはなんと言っていいかどんな顔をすればいいかも分からないまま美月が腕を絡ませてくるのを眺めていた。

「ごめんなさい。私この人と帰りますので。ごきげんよう」

「…は、そいつ…誰だよ?つうかその制服って…?」

 新田は困惑していた。同級生を口説いていたらいきなり知らない男が現れてきて、しかもそいつが中学生なんだから。

「彼氏です、二度と喋りかけんなよ」

 新田に中指を立てて美月はオレの腕を引っ張って外に出た。意気消沈する顔が視界の端に残って申し訳ないような喜ばしいような、なんとも形容しがたい感情が湧き出る。

「じゃあ帰ろ。翼」

 傘をさして校門から出る。数分歩いて芝居をする必要がなくなっても美月は腕を絡ませたまま解かなかった。

 美月はブレザーの上からでもはっきりと分かるほど胸が大きいから当然この姿勢だと感触が嫌でも伝わってドギマギする。けれどそれを言ったら一週間はそのことで弄られそうだから別の言い訳を探した。

「……傘二本持ってきたからくっつく必要ないだろ…」

「いいじゃん。たまには仲良くしようぜ。傘重いし」

「結局自分が(らく)したいだけじゃないか…」

 そうぼやいてみたが正直悪くない気分だった。こんな風にくっついて歩くのなんて本当に久しぶりだったから。


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