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透明色の彼女

 遠い昔、ある冬の日の夕暮れ。小学校の帰り道の途中にある公園でブランコに一人座り込んでいた。家にはまだ帰りたくなかった。帰っても一人きりだから。父は死んで、母はいなくなってしまった。以前までいた友人達は父が死んでから壊れ物を触るような態度で接してきて次第に疎遠になっていった。姉だけは傍にいてくれたから完全に一人きりというわけではなかったが、習い事でまだこの時間家に帰ってこない。


 じっとしている間に陽が沈んでいった。そろそろ家に帰ってご飯を作らないと。今日は鍋だから大して時間はかからないが美月が帰ってくるまでには仕上げたかった。


 そう考えて立ち上がろうとした時、声をかけられた。とても澄んだ鈴の音のような声。


「こんにちは、黒羽君」


「……誰?」


 俯いたまま返事をした。顔を上げるほどの意味を見出せなかったから。


「一応クラスメイトなんだよ。覚えてないの?」


 顔を上げてみると金髪の少女が目の前に立っていた。確かに、言われてみればこんな子もいた気がする。だがそうだと分かってもどうでもよかった。同じクラスにいるからなんだというのだ。結局は赤の他人じゃないか。


「赤の他人って…それはそうだけど酷い言いようだな。そんな刺々しいことばかり考えていると自分も他人も傷つけるよ」


 それもどうでもいい。そう考えた瞬間、違和感に気づいた。なんでこの子はオレが考えていることが分かるんだ。口には出してないはずなのに。


「ようやく興味持ってくれた。じゃあ改めてこんにちは黒羽君。私の名前は音羽唯。変わり者同士仲良くやろうね」


 


 それが彼女との初めての出会いだった。クラスでは既に顔を合わせていた筈なのだから本当の意味では初めてではなかったが、明確に音羽唯という存在を認識したのはこの時が初めてだった。


 


 その後も唯はオレに話しかけ続けた。最初の内は警戒心と気恥ずかしさから冷たく当たったが、それも長く続かなかった。


 容姿が群を抜いて整っていたからというのもなくはないが不思議と彼女の声を聞いていると心が和らいだ。だから気を許したのだと思う。


 唯は本をよく読む人で子供にしては随分な博識だった。彼女が澄んだ声で唄うように雑学を語っているのを横で聞くのが好きだった。


 知り合ってからしばらく経ったある日、帰り道を共に歩いていた時、彼女がオレにある質問をした。


「ねえ、黒羽君は何が出来るの?」


「なにがって…どういう意味だよ」


「人とは違う特別なこと。出来るんでしょ」


「…」


「…なーんてね。実はもう知ってるんだ。私のはそういう力だから」


 家族以外には教えるつもりはなかったから黙って乗り切ろうとしたが無駄だった。その時にはオレも薄々彼女の力に気づいていたからもう特に驚きもしなかったけれど。


「なんでも分かるよ。キミがどれだけ速く動けるのか、初恋の相手が誰か、最後におねしょをした日がいつか、とか。全部」


「おい後ろ二つ」


 オレが睨みつけても彼女は涼し気な顔で受け流した。今思い返しても本当に捉えどころのない人だった。どんな時でも笑っていてそれがかえって感情の起伏が少ないように彼女を見せた。


 ひた隠しにしていた、残酷な真実を暴く時でさえ、彼女は笑っていた。


「キミがお母さんに殺されかけたことも、知ってるよ」

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