第20話 夜会
夜会当日となった。今日は僕がリトリシエをエスコートしなければいけない。そう思うと少し緊張する。深く深呼吸をしながら、彼女の身支度を待った。
「遅くなりすみません!!」
暫く待っていると、彼女がぱたぱたと走ってきた。実際なら、淑女はそんなに走ってはいけないと言うべきなのだろうが、彼女の姿が美しく、何も言えなかった。
容姿はリトリシエだが、彼女のようなきつい目ではなく、少しタレ目気味になっている。リトリシエの見た目だが、彼女では無いと伝わってくる。リトリシエの中にクラウシアがいるから、このドレスも似合うのだ。だが、まさかこんなにも早く、僕の色のドレスを纏ってくれる日が来るとは。そう思うと喜びに浸る以外に出来ることがない。今すぐにでも、僕の婚約者は世界一だ!!と叫びに行きたいくらいだ。流石にそんな事したら嫌われてしまうからしないがな!
エスコートするために僕は手を伸ばした。その手の上に、彼女の小さな手が重なる。
.......あぁ、幸せ。
エスコート中はずっと手を握っているため、リトリシエの心の声がずっと聞こえてくる。とても緊張しているようだ。
「とても綺麗です。」
そう告げると、緊張が和らぐかなーと思ったが、そんなこと無かったみたいだ。
(きれい.......綺麗?!?!そんなに口を耳元に近づけて囁かないでください!!!!)
めちゃめちゃてんぱっているようだ。中々に可愛らしい。こんな彼女を間近で見れて、僕は幸せだななんて思った。
―――――――――
はぁ、何だこの茶番は。
目の前の聖女は明らかに中身リトリシエである。
そして僕の隣にいる、リトリシエ(中身クラウシア)は目の前の聖女の中身は自分だと思っているようだ。確かに聖力がお互い半分になっているが、ちゃんの中身は入れ替わっているんだよ。
どういう事かというと、実はリトリシエも聖女候補だったそうだ。そして、元の身分は平民。クラウシアの聖力を100とすると、リトリシエの聖力は50である。この力は、成長すると増えるとかはなく、先天的なもので、生まれた瞬間から、力の上限が決まっている。だから、そんな2人が入れ替わるとどうなるか。クラウシアの聖力は100だが、器の上限は50。つまり、強制的に残りの50は排除される。そして、リトリシエは聖力が50だから、器に入り切るため、そのまま50。ちょうど半々になってしまったように見せかけられる.......。計算しすぎだろ!!!!
ところで、何故僕がこんな事情を知っているのか、気になるところだろう。
理由は簡単。聖女(中身リトリシエ)がリトリシエ(中身クラウシア)に話しかけている間、ずっと僕の腕と聖女の腕が触れていたのだ!彼女のありえないほど早い思考が僕の中に流れ込んできた。お陰で僕は博識になったよ。ありがとう。離れてくれ。
とにかく、リトリシエ(中身クラウシア)は盛大に騙されているようだ。
◇◇◇
ダンスの時間になった。さっきリトリシエから凄い不穏な思考が流れてきたが、それは帰ってから処理しよう。犯人が見つかったのならあとは尻尾を掴むだけだ。
実は、僕は今日のこのダンスのために、死ぬほど練習してきたのだ。元々得意ではなかったから、他の人以上に練習に打ち込んだ。リトリシエには公務で忙しいから会えないと言ったが、実は全部ダンスレッスンだ。嘘ついてごめん。
踊っている間もずっと触れ合っているため、常時彼女の思考が聞こえる。
(相手は年下...相手は年下...)
なんか失礼なこと考えてないか?この子。ずっと年下なんて言い聞かせているのが少し気に入らない。今だけは、年下の男の子ではなく、婚約者の男性として見て欲しい。できればこれからも。そう思いながらダンスのリードをする。
「今日のドレスとても似合っています。とてもかわいい」
そう囁くと彼女はとても焦っているのかものすごい勢いで思考が流れ込んでくる。
(ダンスしながら耳元で.....!しかも今は距離もとても近いのです。顔もよく見えて.....。あああとても整っていて素敵なお顔です!!!可愛いと言われるのは嬉しいのですが、それ以上に恥ずかしすぎます!!)
なんか急に僕の顔について褒められ、どきっとしてしまう。そんな彼女を見つめていると、彼女は真っ赤になった顔を背けながら、「...ぁりがとぅ、ござぃます...」と消え入りそうな声で言った。可愛すぎて口角が上がってしまう。その時気がついた。今、今日初めて笑ったな、
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「お初にお目にかかりますスレン殿下。私ウェザール伯爵家のマリアールと申します。先程のお二人のダンスとても素敵でしたわ!皆も見蕩れておりましたわ!」
「そうですか。ありがとうございます。でも、褒めるならリトリシエを。彼女はとてもダンスが上手なのですよ。」
危ない危ない危ない。いや、アウトかもしれない。
とりあえず、リトリシエがめちゃめちゃダンス上手ということにさせてもらった。これには深い訳がある。
昔から、僕は容姿だけで令嬢から人気だった。自慢ではない。とにかく、色んな夜会やパーティに出るだけで私と踊ってくれないかという令嬢が殺到した。それが嫌すぎて僕は言い放ったのだ。
「私は踊れないので、誰とも踊りません。」
と。だから、今の僕が踊れるようになったと知れ渡ったら、婚約者など関係なく、また踊りたいという令嬢が殺到してしまう。それだけは避けたい。察してくれ、リトリシエ。
「あっ、あの、ダンスはスレンさま.....んっ!」
おいいいいぃぃぃ!!僕は咄嗟に彼女のほっぺを掴んでしまった。そんな素直な所も可愛いが.....。頼むから素直なのは僕と2人きりの時にしてくれ.....。
一応言っておくが、やましい事は何も無い。
読んで頂きありがとうございます!
もう少しスレン視点が続きますが、お付き合いお願いします!
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