本当の愛
こんにちは。
真田 浮気絵です。うきえでもうわきえでもなんでもいいので呼んでください。ペンネームは適当です。1時間で書きました。よろしくお願いします。
ある公園で僕は夏乃とキスをした。お互い酒が入り、彼女の頬はピンク色に高揚していた。唇は甘えるかの如く離さず、舌を絡め合う。萌亜が見たらどう思うか。萌亜のことなんて頭にすらなかった。僕の頭は夏乃とのキスに支配され、再びお互いを求め続けた。
♢♢♢
アルバイトの塾の飲み会が終了し、僕は帰路につこうとしていた。酒カスと呼ばれても仕方ないくらい飲んだ。僕の彼女の萌亜には2回ほど叱られ、酔っ払いを嫌いなことを盾に散々言われた。夜の2時の風に当たりながらコンビニで水を買った。PayPayで会計を済ませると、1件のLINEが来ていたことに気づく。アルバイトの後輩の夏乃だった。彼女も酔っ払っているのか誤字がすごかった。
『今から飲み直そう』
僕はLINEで1字1句違わずに送信した。もう正常な判断なんて出来ないと思った。いや、正確には思い込みたかった。夏乃に会いたいという感情が自分の中で消し去りたいくらい大きかったのである。2時30分に合流した夏乃は洋服は変わらずそのままだった。面食いだった僕は可愛いと感じた。その可愛いはモデルや推しを見た時の可愛いではないのだ。自分の中で夏乃がそういう対象になっていることに対して腹が立ちつつ、もっと一緒にいたいと思ってしまった。
「よく来たね」
「だって小野さんが来いって言うから」
彼女は少し冷めてきたのか情緒はいつも通りだった。僕らは散歩をすることにした。ただ僕の酔いを冷ませるための相手が欲しかった。しかし、それは男は対象外なのだ。例の公園に着くまでの間は他愛もない話を続けた。彼女の方は見ていなかったと思う。この関係を求めていたはずなのに、倫理観が働いているのだと思う。そして僕らは例の公園に辿り着いた。ベンチに座って意味の無い会話を続けた。
「ちょっとトイレ行ってくる」
彼女が席を外した。スマホを耳元に当てて僕の元を去っていく。夏乃の彼氏なのかと思ったが、彼氏では無い明確な答えをこの時の僕は持っていた。猪口さんだった。「今どこにいる?」が聞こえた。彼も夏乃に会いたいんだと思う。
「猪口さんが来たいって」
「別にいいんじゃない?呼んだら?」
僕は特に嫌味を含めずそんなことを言った。塾講師は地元が同じ人が多い。会計の時に夏乃と猪口さんは2人で抜け出しかけていたのだ。夏乃との他愛もない会話の時に教えてもらった。
「猪口さんと2人になった時に手を繋いでキスをした。手が長くて綺麗だった。彼氏には絶対言えないな。私初めて浮気しちゃった。」
彼女は酔っ払うと甘えたくなるらしい。それを末っ子だからと言っていたが、言い訳だろう。彼女も僕も罪悪感が薄かったのだ。
「結局来るって」
「そうなんだ」
「何分くらいなんだろ」
「猪口さんいまどこって?」
「わかんないらしい」
「なんだそれ」
「あーもうほんと酔っ払うと何されても抵抗できないや」
夏乃の最後の言葉が僕の心を動かした。溜まっていた性欲は爆発し、夏乃の唇を奪っていた。彼女も僕の唇を求めているかの如くキスを続ける。唇を離した時の夏乃の表情がたまらなく可愛かった。
「可愛い」
「クズのセリフですよそれ。萌亜さんはいいんですか?」
「お前がいい」
夏乃のそんなセリフに僕はまた興奮した。いけないことをしているとお互いが分かっているのだ。それでもキスは止めなかった。夏乃が僕を求めてくれると錯覚していたのだろう。舌を絡め、キスが終わる時の漏れた声がたまらなく可愛かった。
「移動しよう」
「え、猪口さん来るって…」
「やっぱ帰るって言っといて」
「でも…」
そういう彼女の手を無理やり引っ張り、人気のない別の公園へと移動した。移動する間、僕たちの手は離れなかった。指と指を絡ませ、早足で歩いた。別の公園に辿り着き、彼女とまたキスをした。萌亜とのキスより気持ちよかった。服の上から胸を触った。最初は抵抗していた夏乃だったが、次第に抵抗はなくなった。小さい夏乃の胸に既視感を感じた自分を殺したかった。夏乃のスマホをみると「りょうへい」と表示された通話通知が来ていた。僕は夏乃のスマホの電池を切り、再びキスをした。酔っ払いを言い訳に夏乃が僕に与えている擬似的な愛が僕の欲を満たしていくのを感じた。久しぶりに興奮したキスをした。
♢♢♢
朝6時になり、帰ることになった。帰る時も見つかるリスクを鑑みず、手を繋いで歩いた。お互い酔いは無くなっていた。道端で何度かまたキスをした。その度に
「萌亜さんはいいんですか」
と聞いてきた。僕も
「お互い様だろ」
と返した。絶対バレてはならないダブル浮気が1日で完成してしまったのである。別れ際、道端でまたキスをした。夏乃に惚れている自分を気持ち悪いと思えなかった。帰って直ぐにベットに潜り、5時間寝た。目が覚めたのはお昼の12時前だった。軽い2日酔いで頭がガンガンした。起きて1番初めに考えたことは夏乃とのキスだった。親がいないことを見計らい、昨日のことを思い出して抜いた。彼女が与えた擬似的な愛とは真反対の愛を僕は彼女に抱いているのだろう。猪口さんとキスをしたと聞いた時にとてもムカついた。夏乃は自分のモノと本気で感じていたのであろう。今日だけの関係と何度も会話で話した。抜いた後、僕は抑えられず、彼女にLINEをした。もうダメだと分かっているのにも関わらず、彼女とまた話したいと心から思っているのだ。返信が来た。いつも通りの夏乃だった。
『何で電話してきたんですか』
『エントリーシート書いてる間暇だった』
『そうですか』
『話し相手になってくれ』
『いいですよ』
昨日と違い、最初からそういう目的だった。昨日の話になった。お互い悪びれず、仕方ない的な感じで話をしていた。マジのクズだった。しかし、僕は会話を重ねているうちにあることに気づいた。夏乃は猪口さんのことが好きなのだ。今の彼氏も好きだが、猪口さんも同じくらい好きなのだ。その好きとは僕が萌亜と夏乃に向けて思っている気持ちと同じだった。夏乃と付き合いたいと思っていたが、こんな誰にでもキスをするような人を彼女にしたらメンタルが終わる気がした。それを彼女に意思確認していくうちに感じたのだ。では、なぜ僕は夏乃を求めているのか。こんなにも彼女とキスをしたくてたまらないのだろう。その答えの1つが萌亜だ。簡単に言えば、浮気相手として夏乃はピッタリということだ。僕の彼女は萌亜で萌亜がいるからこそ、猪口さんとキスをしたと言われても激昂しなかったのだろう。1時の性欲を彼女で満たしたかった。けど誰でもよかったのであろう。夏乃じゃなくても良い。ただ俺を愛してくれる人であれば誰でもよかった。萌亜とのキスは俺が求めるばかりであっちから唇を近づけてきたことはない。指示して近づけてきたことはあるが、恥ずかしいという気持ちがあるのか、根っからの姫体質なのか、僕が姫体質にさせたのか分からないが夏乃とのキスほうが気持ちよかった。飲みすぎて怒ってくれる本当に良い彼女だと思う。しかし、僕は彼女に恥じらいは捨てて欲しかった。あった時は毎回キスしたいし、月に1回はホテルに行きたい。スキンシップはお互いの同意の元で行われるのであって、恋人同士でもレイプの危険性があるとストッパーがかかっているのであろう。だから今日はダメと言われれば引くしか無かった。不倫する人の気持ちが少し分かった気がした。僕は結婚してはならない人間なのだ。法律によって固められた強固な関係は僕を不幸へ導くものとなりうると感じた。僕の父は不倫して離婚した。血には抗えないと感じた。だから墓場まで持っていこうと本気で思った。萌亜に悟られないようにする思いは本気だった。萌亜との関係を終わらせたくない。恋愛感情が冷めてきた10ヶ月目の僕らのもとに起こってしまった飲み会の出来事である。