突然の追放―1
「ロイス、お前はもうこのパーティーに必要ねぇ!」
ダンジョン内で探索中、パーティーのリーダーであるバルゴスから突然かけられた言葉に俺はひどく驚いた。
バルゴスは冒険者歴五年のベテランだ。
彼は、俺が冒険者ギルドに初めて訪れたときには既にCランクに到達しており、それから二年経った今ではAランク冒険者として多くの依頼をこなしている。
そんなバルゴスを筆頭に、このパーティーには実力者が揃っている。
『魔導強化』のスキルを持ち、多数の魔法を操る魔法使いのベレニア。
『治癒の加護』のスキルを活かし、仲間の傷を癒す治癒術師のエイリス。
いずれも、Aランク冒険者の仲間に相応しい才能と実力の持ち主だ。
そんな皆の足を引っ張らないように、パーティーへ勧誘されたあの日から俺は、彼らに貢献できるように頑張ってきたはずだ。
それなのになぜ……
「ど、どうして俺が? もしかして、なにかミスを……」
「そんなんじゃねぇよ。ただ単に、俺らがお前を見限ったってだけだ」
「み、見限った……?」
確かに俺はバルゴスほど上手く剣を扱えてはいないし、他のメンバーのような魔法の才能もない。
でも、俺なりに努力してきたつもりだ。
昔に比べれば剣の腕も確実に上がっており、最近ではC級の魔物くらいなら一人で討伐できるようになった。
戦闘以外でも役に立っていたはずだ。依頼人とトラブルを起こしがちなパーティーメンバーの尻拭い、他のパーティーとの情報共有といった、一見地味なこともこなしていた。
「俺は、パーティーに貢献するためにこれまで頑張って……」
「確かにお前は努力してたかもしれねぇ。だけどよ、雑魚がどんだけ努力しても無駄なんだよ!」
「ざ、雑魚……?」
「なんだ? 文句でもあるのか? お前みたいな雑魚が必死こいて剣の鍛練をしたところで、『剣術』のスキルを持ってる俺には到底及ばねぇのは事実だろ」
「……なら、どうして俺をパーティーに入れたんだ?」
確かバルゴスは俺をパーティーに誘ったとき、『お前には才能がある。これからに期待している』などと言っていたはずだ。
今の言動と明らかに矛盾している。
「そんなもん、お前がユニークスキルを持ってるって聞いたからに決まってんだろうが! んな事もわかんねぇのか?」
その言葉を聞いて、俺は衝撃を受けた。
そもそもスキルとは、一人につき一つだけ神から与えられる、特別な才能だ。
その中でもユニークスキルは、既存のスキル体型から大きく外れたレアスキルのことを指す。
希少なだけあってその多くは強力な効果を持っており、大昔に魔王を討伐したという勇者やその仲間は例外なくユニークスキルを所持していたという。
確かに俺は『選択者』というユニークスキルを所持している。
しかし俺はまだ、このスキルを使うことができていない。
通常ならスキルの扱い方は自然と頭に浮かぶものらしいが、俺は全くと言っていいほど、このスキルの使用方法が理解できなかった。
おそらく当時のバルゴスはそんな事も知らずに、俺がユニークスキルを持っているという情報だけを知ってパーティーに勧誘したのだろう。
「ユニークスキルに期待してパーティーに入れてやったのに、肝心のスキルが使えねぇ。仕方なく二年間も待ってやったが、一向に使えるようにならねぇ。いい加減邪魔なんだよ!」
バルゴスの言い分を聞いて、呆れる他なかった。
勝手にスキル目当てでパーティーに誘い、さんざん雑用をさせた上で、邪魔だと言って一方的に追放する。
以前から自己中心的な人物だとは思っていたが、まさかここまでひどいとは想像していなかった。
「……本気で、俺を追放するんだな」
「いつまで文句を言ってるつもりなの?」
それまで黙っていたベレニアが口を出してきた。
「大したこともせずに、いっつも私達の報酬の一部を掠め取ってばかり。そんな無能がいつまでもパーティーにいられるわけないでしょ。そんな事も理解できないなんて、救いようのない馬鹿ね」
「ベレニア、言い過ぎですよ。確かにロイスの頭がお花畑なのは事実ですけど、一応プライドくらいはあるでしょうから」
エイリスも同じく、厳しいことを口にした。
こちらをかばうような口調だが、その目は俺に対する嫌悪感を隠そうともしていなかった。
「そういうことだ。てめえの居場所なんてどこにもねぇんだよ」
仲間たちが、俺を取り囲むようにしてこちらを見ていた。
……いや、仲間だと思っていたのは俺だけだったのだろう。
本当の仲間なら、パーティーメンバーに対してあんな言葉を浴びせるはずがない。
結局、俺は都合よく利用されていただけだったのだ。
そう考えると、彼らに対する気持ちは急激に冷めていった。
「……改めて言ってやろう。お前を、このパーティーから追放する!」
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