秘密ピクチャー
ひみつピクチャー
「返してっ!」
部屋に、私の声が響いた。
「青山?」
もうこれはプライドとか、そんなものは言ってられない。
羞恥心が込み上げた。
膝がかくんとなり、床に座り込む。
ハッとしたが、もう弁解の余地はなかった。
「いや、あの……これは…」
「……何隠してんの?」
「あんたに…関係ないしょ……」
「関係大有りだ」
こいつは、女の気持ちがわからない。
「お前は俺の彼女になる女だ。俺のへの隠し事はありえない」
「ちょっと、勝手に決めないでよ。私、あんたの彼女なんかになんないっていってるでしょ。それに、あんたも、誰にだって秘密にしたいことあるでしょ? 人好きになった事ないの?」
「ある、お前だけ」
「気持ち悪い事いわないでよ」
「こいつ、元彼?」
私の抱える写真を指差し、目を細める。
「……ちがう…」
すかさず、…否定。
「兄」
「…ちがう」
「ドンピシャか」
「違うってんでしょ?!」
こいつ、狼みたいだ。
どこでも構わず辺りを探って、獲物を見つけると、目を細めてその時をジッとまつ。
なんで、そうやって当てちゃうかな。
「あぁ、そのリアクションからして、元彼も当たってるな」
「なんで…」
「なんでわかるかって? 俺は天才の秀才だから」
「…意味わかんない」
「……近親相姦? 実兄か」
「だから何よ、悪い? 好きだったの、本当の兄妹だって、好きなものは好きなんだからしょうがないじゃん! 親にばれて、お母さんが泣いて、兄ちゃんも泣いて、…勝手に一人暮らしさせられて……でもまだ好きなのよ…あんたにこの気持ちわかる? 親が泣いて、好きな人が泣いて、この苦しい気持ち、あんたに分かる?!」
何言ってんだ私。
八つ当たりなんて格好悪い。しかもそのあいて柴田なんて……。
「分からんな、」
「そーだよね。あんたなんかにわかってたまるか!!」
「お前の兄。なんでお前連れてでも逃げなかったのか」
「はぁ?」
予想外の一言。いや、吃驚というか、この際引き気味。
「こんな良い女振って、……お前の兄、今度一発殴りたい」
「ちょ、やめてよ! 勝手に私の兄ちゃん殴らないでよ!」
振り向いたその先に、柴田の少し切れている顔に、私は思った。
「柴田、本当私の事好きなんだね」
「あ? 当たり前だろ? 俺以外にお前をこんだけ好きな奴いない」
「……」
あ、真面目な顔。ちょっと照れる。
顔を赤く染めた私に柴田が、
「泣くか?」
なんて少し優しい声で、私に問いた。
ここでうん、なんか言える訳ないし、ムカツク。柴田の前なんかで泣きたくない。
「誰が泣くかっ」
私は大いに拒否した。
「ふはっ、」
こういう拒否を待っていたかのように、柴田は馬鹿にするように笑いを噴く。
「笑うな!」
そんな柴田が、また私にはムカついて……。
だから笑った次に頭を撫でられて、私は子供扱いされたみたいに思えて、それもまたムカついた。
「撫でるなー!」
「無理な話しだ、お前、可愛すぎ」
クールで優等生で人を寄せ付けない私が、柴田の目の前にはいなかった。
柴田経は、校内で1,2を争う不良君。私の前では、ストーカー極まりない超変人。狼みたいな人間。
自称、天才の秀才。