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愛情スパイシー

あいじょうスパイシー

 天候は曇りだった。

 こんな真夏の夜に曇りなんて…雨が降ったら凄く蒸し暑いだろう。

 やっぱり私はなんて運が悪いんだろうか。

「やっぱ勉強はかどらない。頭ん中パーだ…」


 柴田は私に告白した。

 半ば強制的に。

全然嬉しくもないし、ときめかないし、でも、最後のあの笑い顔に、照れの意味で少し放心状態になったのは本当。

「……ふぅ」

 なんなんだ、あの男。

 馬鹿な不良ヤンキー。私なんかに告白しちゃって。

「馬鹿な奴……」

 シャープペンを置き、ベッドに寝転がる。今日一日の疲れが、とれてるような気もしない。

 明日からは土日休みで、来週の木曜日が学力テスト。

 なんか、柴田に振り回される気がするよ……。

 うん、まぁ、もう振り回されてるんだけど。


 あー、なんか疲れたなー。

 最悪な一日。



「うー…」

 五月蝿い。五月と縄の『糸』を『虫』と書き換えて、うるさい、だ。

「ぅあー……」

 苦しい。誰かに乗っかられているような。

「がー……重い…」

「じゃ、起きろよ」

「っぬ?!」

 聞き覚えのあるようなないような声。

 ……あぁ、目ぇ開けたくない。

「…誰デスカ?」

 目を開けずに、まずは質問。

「あ? そんなん決まってるだろ」

 ぐいっと、(まぶた)を親指の平で持ちあげられる。

「痛った……!! ちょ、何すんのよ?!」

「…いい目覚ましになっただろ。しかも俺の顔も見れるし、……一石二鳥? じゃん」

「目が痛い、重い、苦しい。逆の意味で一石三鳥よ……。ていうか……今日土曜でしょ?」

「うん、だから。俺とデートして」

「やだ。あ、てかどうやって家入ったのよ、泥棒! まず私あんたの彼女でも友達でもないただのクラスメートだから! 帰って!」

「あ、間違った。『して』じゃない『しろ』だ」

「え、何。命令系?! なんつー俺様」

 相変わらずの、私にまたがる柴田という格好。俺様ボケの突っ込みに、重さと苦しさを忘れる所だった!

 すぐさま腕に力をいっぱいいれ、後方に押した。観念したのか、柴田はゆっくりと私の上を下りた。


「ふん、強情な性格だ」

「あんた人の事言えないでしょ」

「いーんだよ、俺は」

 何が良いんだか。

「……とにかく、今日は起きて朝ごはん食べたら勉強なの。悪いけど帰って」

「無理、じゃあ俺もここで勉強する」

「それこそ無理、独学で頑張んなさい」

「はぁ……」

 柴田は溜め息を吐きながら、浮かない顔をしてあたりを見回している。

「大体、インターホンなんか聞こえなかったよ?」

「あたりまえじゃん、窓から入ったんだから」

「はぁ?! それ不法侵入なんですけど!」

 駄目だ不良は。

 常識が通用する相手じゃない。

「おい、青山」

 振り向くと、柴田が何かを見つけたのがわかった。

「何?」

「これ誰」

 昨日やさっきとは違う、低い声。何かに怒ってる?

 そして、柴田が手にしたもの。

 

 目に映る、四角い写真立て。中には私と、一人の男。

 みられた。

「青山?」

 体がだんだん放心状態に近づいてくる。

 だめ、体の動きを止める前に、一つやらなきゃいけない事があるだろ?

 柴田の手から、写真を奪え。これは、誰にも見られちゃいけないものだよ。


「っ……!」

 足が重たい、だけど! これだけは……。

「返してっ!!」


 駄目なんだ。

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