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青を探して

お久しぶりです。


漫画の原作連載にむけて3年ぐらい頑張っていたんですが、本日無事(?)白紙になってしまいました(笑)

笑ってる場合ではないので小説の投稿を再開していこうかと思います。とりあえず書き溜めていたものや過去の物をちょびちょび出していこうかと。


これは短編で2万文字ぐらいです。感想などいただけますと幸いです。


 永い――夢を見ていたような気がする。そして今も、覚めない夢の中にいるのかもしれない。だって、そう――何も『見えない』から。

 ふわふわと、意識だけが水の中に浮かんでいる。存在は水に溶け、曖昧な境界の中を揺れ動く。一体――どうなったのだろう? 次第に鮮明になる意識の中で、恐怖も増していく。ずっと、暗いまま。何も見えない、何も聞こえない。身体も……動かない。いや、動かせない――のかもしれない。何かに縛られるように、何かに留められるように、身体は動かない。一日――二日、いや、何日経ったのかもわからない。曖昧な時間だけが、自分をなぶり続ける。


 ああ、誰か――。


 助けを求めるが、何も答えは返ってこない。そして、漸く思い出したことは……どうしてこうなったのか、どうしてここにいるのか――そう――自分が『死んだ』あの日のことだけだった。


    ※


「一か月でしょう」

 医者の余命宣告は短く、簡単だった。あまりに短すぎる余命に、両親はそれを告げる決心がついたらしい。『残りの人生を有意義に』、その想いは有難くもあったが、無意味だとも思った。なぜなら、あまりにもやりたいことが多すぎたからだ。ひと月の間にやれることはそんなに多くない。せいぜいが、いくつか旅行をしたり、友人と遊んだり、欲しかったゲームをしたり、読みたかった本を読んでいたらあっという間に過ぎ去ってしまう。そして、自分と過ごした人たちは、死して去るときに期待するのだ。『楽しかった』という言葉を。

 ――それが嫌だった。優しい両親と、平凡に、慎ましやかでいいからその暮らしを続けたかった。ただ――続けたかったのだ。何もいらない。派手なイベントも、特別な行事も、何も。ただゆっくりと、時間の中に身を置きたかった。私は何も我儘を言ったこともなければ、誰かと争うようなことも無かった。でも、自分は一つだけ、死の間際に優しい周りの人に逆らったのだ。唯一の我儘――『死んだら、検体にするか、冷凍保存して下さい』という願いを押し付けることで。


 ※※



 明滅する意識の中で、その少女は何かを思い出したような気がし、意識を取り戻した。でも――それは一瞬で、すぐに忘れてしまう。ずっと――生ぬるい何かに包まれているような――そんな感覚を彼女は抱き、再びその意識を手放し掛けると――。


 ――バチュウウウウウウウン。


「――!?」


 不意に、彼女の視界が白く染まる。それが『視界』だ、ということに気が付いたのか、彼女は思わず叫び声をあげようとしたが――失敗した。

 その原因は彼女の口に嵌められた酸素マスクのような装置にあった。これが嵌められているから喋ることが出来なかったのだが、それを外すことも不可能だった。

 彼女の身体は小さな棺桶のような――カプセルの中に入れられていて、その中は何か液体のようなもので満たされていた。そしてそのカプセルの――彼女の顔に当たる部分に小さなガラス窓があり、そこから外を見ることが出来た。

 彼女の目の前には――蠢く、何かがあった。それはまるで操り人形のように不器用に、その身体を揺らしていた。ぼんやりとしていた彼女の視界だったが、ゆっくりと視力が戻り始めたのかその輪郭がしっかりしてくる。


 あれは――なんだろう? と少女は思った。


 つるりとした光沢のある全身。ビデオカメラのような頭がちょこんとそれに乗り、細く、頼りない二つの手のようなものがそこから生え、その先端には懐中電灯のようなライトが取り付けられている。足にはキャタピラのようなものがついたそれは、現代において最も近しい言葉を選ぶなら『ロボット』だということになるだろう。

 そのロボットは彼女と窓越しに見つめ合い、そして、窓をコツン、とその細腕の先、ライトの部分で小突いた。ロボットは幾度かそれを繰り返したが、諦めたように窓から離れ、その進路を変える。暗闇の中で、光だけが動き、彼女はその動きを瞳で追ったが暫くすると諦めたように再び瞳を閉じ、眠りに落ちた。



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