7稿目
わたしの名前は、ワカバ
どこにでもいる、奴隷だ。
産まれた家が極貧で、売られることなんて、よくある事だ。
栄養不足で病気もち、よく転ぶから身体中傷だらけなんてことも、いたって普通。
仕事など出来るわけないから、売られる事は運命だ。
最近では、目が見えにくくなり、耳も遠くなった。
たった10年の人生だったが、まあ、よくある人生だろうよ。
奴隷として一緒に買われた子が何人かいるようだが、みんな状況は似たり寄ったり。
夢や希望なんて、考えるだけの知識も無い。
早くこの辛い痛みから解放されたいな…
そんな事を考えていた私でしたが、同い年くらいの方に買われ、気がついたら健康になっていました。
え?なんで?
そう思いましたが、どうやら私は、私を買ってくださったご主人様の力で、身体をすべて入れ替えられたようです。
…ええ、自分で言ってても、意味がわかりません。
外見は、外傷が無く、健康的な肉付きになった事を除けば、自分の身体のようです。
…除いたものが大きすぎますね。
死にかけの人間が、こんな健康になれるだなんて、学のない私でも、ありえないと分かります。
まさか、ご主人様は大神官なのでしょうか?
身体のパーツをすべて入れ替えた?
確かに、自分の身体のはずなのに、少し違和感は感じます。
しかし、今まで感じていた痛みに比べたら、取るに足りませんね。
あと、ご主人様が先程から、自分達の事を、所有物にしてしまったと謝ってきますが、奴隷として買われたので、当然ですよね?
これから一生、離れられない?
むしろ、ご主人様に捨てられたら、野垂れ死ぬのは自分達ですからね。
一定以上離れたら、自動でご主人様の元に帰ってくる?
よくわかりませんが、迷子にならなくて良さそうですね。
他の3人も、自分と同意見のようですね。
まあ、当然でしょう。
なぜだか、身体にかなりの力強さを感じますし、生まれて初めて、苦痛の無い状態です。
ご主人様が私たちを買われた目的は?
モンスターを倒して素材を集めたい?
はい、もちろんご主人様のためなら、死地に赴くことくらいはいたします。
身体を治療していただいたのですし、モンスターに食べられる様を見て楽しみたいわけではないでしょうし…違いますよね?…
とりあえず、ご飯を食べに連れて行っていただけるそうです。
美味しいご飯を食べられることは、当たり前ではありませんよ。
まさに、これから、人生で1番幸せな時間にむかうわけです。
ついつい笑顔になってしまっても、ご主人様は怒らないですよね?
俺は奴隷4人を連れて、一度家に帰った。
さすがに奴隷達に、ボロきれを着せたまま街中を歩くのはマズイだろうと思い、妹の古着を着せた。
道中、みんなを自分の所有物にしてしまった事を説明し、謝ったが、いまいち理解してもらえてない感じで、笑顔で感謝されてしまった。
服を着替えさせ、時間を確認すると、昼時にさしかかっていたため、定食屋に向かった。
奴隷の4人はすごく嬉しそうで、とても笑顔だったが、そのあと一緒にモンスターを倒しに行く事を伝えると、なぜか少し引かれた気がした。
道中名前を聞くと、1番小柄な子がワカバ、
1番背が高い子がホノカ、1番後ろを歩いているのがコサメ、そして、自分のすぐ後ろに付いてくるのがエルチャというらしい。
定食屋に入ると、とりあえず日替わりを5人分頼んだ。
運ばれてきたランチはとても美味しそうで、実際美味しかった。
4人は、本当に食べて良いのか再三確認してきて、そしてとても美味しそうに食べていた。
特にホノカは身長があるからか、1番がっついていたな。
まあ、みんな満足そうで良かった。
その後は、冒険者ギルドに寄り、登録を済ませた。
奴隷は主人が冒険者登録していれば、武器などと同じ携帯品扱いになるようで、そのまま門の外に出れるそうだ。
登録料を払うと、いよいよ金が無くなり、武器も買えない状態だったが、ギルドで、門を出てすぐの森に手頃なモンスターがいる事を教えてもらえたので、早速向かう事にした。
モンスターの種類はウサギだそうで、雑貨屋でも、その毛皮の加工品は作っていた。
肉もある程度流通しているので、他の冒険者さんに日々感謝だな。
ちなみに、このウサギって、素手で倒せるやつですよね?
ツノとかは生えてない?突進してくるだけ?
なら大丈夫かな。
さっきの冒険者、若手の頃の失敗談として、骨折した話をしてたけど、ウサギが相手じゃないよね?
俺たちは、門の外の森に向かうのだった。