表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生特典はテセウスの船⁉︎  作者: キャシー
5/7

5稿目

昼からの作業で、豆を植えた。

苗を買ったので、収穫はひと月くらいで出来るらしい。

日本の大豆とは少しちがうのだろうが、まあ出来る豆は同じようなものだ。

食べ方も、そのまま茹でて枝豆や、ポークビーンズのような煮込み料理に使われている。


豆を植え終わると夕方で、夕飯を食べて寝た。


「明日からよろしくな。」


部屋へと入る背中に、父がかけてくるた。


翌朝、食事を済ませた俺は、両親の雑貨屋で働き始めた。

まずは、在庫の補充、納品の受け取り、フロアの掃除。

といっても、10畳くらいのフロアで、そんなに物も売れてないので、たいした仕事量ではない。

お皿、コップ、フォーク…

桶、石けん、タオル…

椅子、本、敷物…

うん、店内の品揃えは生活雑貨だな。

しかも、石けんや本がすでに普通に流通している。

これは、俺の知識で世紀の大発明を…は無理そうだな。

なんなら、異世界定番のマヨネーズも、近しい物が今朝の食卓に並んでいた。

味噌や醤油こそ無いものの、手軽にドヤァは出来ない感じだ。

そして、残念なことに、店が暇だ。客が来ない。

試しに店の前に出てみるも、そもそも通行人がほぼ居ない。

「こんなに人が来ないんですね…」

カウンターに座る父に話しかけた。

母はその横の作業スペースで、店に並べるブローチなどの小物を作っている。

「そりゃ、一番外側の道なんか、普段は誰も通らないよ。通っても、目ぼしい物を売ってる店なんかないんだから。」

なるほど。要するに、この辺りで生活する人のためにある店な訳だ。

夕方、勤めから帰ってくる人が、一定数利用してくれるのだと、父が教えてくれた。


それから、店と畑の開墾で、1ヶ月が過ぎた。

店の稼ぎは相変わらずなため、自分の給料はお小遣い程度だった。しかも、豆の苗を買うために使っているため、貯金は無し。

だが、畑をすべて耕し、第一陣の豆を収穫する日となった。

豆はかなりの量が取れ、売ったお金から次は種芋を買った。

残ったお金の半分を両親に生活費として渡して、残りが自分の取り分だ。

畑に灰を撒いたおかげか、品質のいい豆がたくさんとれた。

父や母もとても喜び、妹にも新しい服が買えた。

生活が少し豊かになり、自分は幸せを感じていた。

この日常を大切に、これからも楽しく生きていこうと…



「******が入って来たぞ!!」

突然、国の入り口にある門の方から、怒声が聞こえてきた。

表に出ると、道の向こうから砂煙がやって来る。

「どうした?」

家族も心配して、家の周りに出てきた。

基本昼間は静かな通りなため、自分たち家族以外の人はあまり居ない。


ドドドドド!


けたたましい音が近づいてきた。そして、砂煙から見えた物は、


1m以上あるかという、前に突き出た牙

硬そうな茶色い体毛におおわれた、巨大

四足歩行のそいつは、猪の化け物だった。


「な!?」


と思った時には、目と鼻の先まで迫っていた。

牙に貫かれる身体

吹き飛ぶ手足

地面に落下し、あらゆる痛みが遅れて到着する


(痛い痛い痛い!)


視界の端に、走り過ぎていく化け物と、自分と同じく吹き飛ばされた家族が映る。


(痛い痛い痛い!)


思考が追いつかない

動かない身体

多分、心臓ごと損傷しているんだろう

頭が死を感じている


(ああ、人生2度目の死か。さすがに早すぎるし、理不尽な死だな。だが、もうどうしようもないか…)


そんな薄れゆく意識の中で、思い出された言葉があった


『所有物 左腕 に スキル テセウスの船 レベル1 を 使いますか?』


(!!)


さすがに怖い。

自分の身体が、他のナニカに置き換わってしまう。


…だが、もう死ぬんだ。

いいじゃないか、最後くらい。

そんな、悪魔の提案に乗ってみても…


「スキル、テセウスの船」


俺の身体がひかり、次の瞬間には、傷ひとつない自分がいた。


「つ…父さん!母さん!ユウナ!」


家族に駆け寄るも、すでに息は無かった。


「スキル!テセウスの船!」


『対象 が 所有物 ではありません。』


「うぁ、そんな、そんな!」


俺はこの日、多くのものを失った。

家族、平穏、幸せ

自分の身体


新たな肉体は今まで以上に違和感がある。

今までより力があり、早く走れ、強靭だった。

そして、心臓には魔力が宿っていた。


今の俺にはどうでもいいことだ。


1人になった我が家で、俺はただ呆然としていた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ