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転生特典はテセウスの船⁉︎  作者: キャシー
1/7

1稿目

テセウスの船。

それは、古くなった船の部品を交換していき、最終的に全ての部品が入れ替わっても、その船はテセウスの船なのかという、パラドックスである。


まさに、今の自分もそうだ。


目が覚めたら、声も見た目もまったくの別人で、しかも世界自体がまったく知らないものに置き換わっている。


ファンタジーでよくある、異世界転生なのだろう。

いざ自分の身におこると、これほど違和感があるのかと思う。


自分のものだと思えるのは、意識と元の世界での記憶だけ。


元の世界、日本で過ごしていた時間は長かった。

大人になり、就職し、結婚し子供ができ、そして子供が成人して、自分は会社を退職する60歳だった。

これから、新しい趣味でも見つけて、妻と2人、穏やかな老後を過ごそうかと考えていた矢先に、交通事故に巻き込まれ、1人他界してしまった。


けして十分生きたとは思えないが、自分は満足した幸せな人生だったと思う。


…しかし、死を悟り薄らいだ意識が再び覚醒した。

そして、気づいたら見知らぬ異世界で、10歳の少年に転生していたのだ。


年老いた身体の部品を、新しいものに交換されたような…

それはまるで、テセウスの船のように。

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